次期学習指導要領の小学校の算数と中学校・高校の数学について議論している中教審教育課程部会のワーキンググループ(WG)は4月17日、第9回会合を開き、WGとしての取りまとめ骨子案を検討した。数学と社会・職業との関わりや数学で学ぶことを概観する「数学ガイダンス(仮称)」について、高校の数学Ⅰだけでなく中学校の数学でも設定する。現在は数学A・B・Cとなっている高校の数学の選択科目は、統計などを学習する1つの新科目に統合する。第6回会合で取り上げられた教科名を数学に統一することも話し合われた。

「数学ガイダンス」で見取り図を示す

 算数・数学を巡っては、国際的な学力調査で日本の子どもの数学的リテラシーは世界トップクラスを維持していながら、数学を使う職業に就きたいと考える中学生の割合が低かったり、学校段階・学年が進むにつれて算数・数学を楽しいと捉えている生徒が減っていったりすることが課題となっていた。

 また、算数・数学は学習内容の系統性・連続性が強く、個々の単元の学習内容の習得・定着が不十分であると、その後の学習にも支障が生じ、進学・進級に伴って学習困難な事項が雪だるま式に増加していく傾向にある。

 こうした問題意識から、骨子案では中学校と高校の必履修科目である数学Ⅰで、数学全体の見取り図を示すような「数学ガイダンス」を新たに設定。発達段階を踏まえた学年区分は引き続き示しつつも、学年を超えた指導時期の前倒し・後ろ倒しを認めることで、定着に課題のある単元の学び直しや興味・関心を喚起する探究的な学習活動を実施しやすくするとした。

 さらに、小学校の算数では割合・比・分数などの課題が見られる内容の確実な習得・定着を図るため、学習内容やその排列を改善する。中学校や高校の数学では、論理的、批判的に考え、判断できる力(クリティカル・シンキング)の重要性が高まっていることから、数学的推論や論証(証明)などに関係する学習を充実。小学校の算数でも、中高の数学の論証の指導につながる論理的に説明する活動に力を入れる。

 高校の数学では、AI技術や数理科学、データサイエンスの理論的・技術的基盤となる行列、微分・積分、確率、統計を重視。選択科目の数学A・B・Cを1つの科目に統合し、▽場合の数と確率▽統計▽行列▽数列▽幾何ベクトル▽平面上の曲線と複素数平面――に学習内容を整理する。

 このうち▽場合の数と確率▽統計▽行列▽数列――については、数学Ⅰ以外を履修せずに高校を卒業する生徒にとっても社会に出て必要となる要素であることから、社会の中にある数学的場面を基にこれらの基礎的素養を学ぶ「社会を読み解く数学」を数学Ⅰに設定する。新しい選択科目を履修する場合は、数学Ⅰの「社会を読み解く数学」の分を減単できるようにする。

 中学校の「数学ガイダンス」について、宮﨑史和委員(高知県教育委員会西部教育事務所長)は「今回、中学校でもガイダンスを丁寧に行ったらいいのではないかという提案をいただいて、私も本当にそうだと思う。学校段階間の円滑な接続を図っていく面でも、校種が変わったときにガイダンスをするのはとても大切なことだと思う。見通しを持てることが自ら学びを進める第一歩になる」と評価した。

 清水宏幸委員(山梨大学大学院総合研究部教育学域教授)は「中学校ではまだ(『数学ガイダンス』の)イメージが示されていない。中学1年生では小中の接続や社会とのつながりに関する内容を概観する時間を設けるということだと思うが、2年生や3年生でもあっていいのではないか。必ず学年の最初に教科開きをするので、そこで前の学年や上の学年とどんなつながりがあるか理解できているとよい」と提案した。

小中高の一貫性の先にある教科名の統一問題

 次期学習指導要領の算数・数学では、小中高の教科としての一貫性と内容の系統性を確保した指導を充実させるため、目標の資質・能力の柱ごとの規定や見方・考え方の文言を統一。小学校の算数から高校の数学Ⅰまでの学習内容を▽数と式▽図形▽変化と関係▽データと確からしさ▽論証▽社会を読み解く数学――の6つの分野に体系化する。

 その上で、各分野をさらに2つ程度の区分に分類し、区分・校種ごとに高次の資質・能力と学習内容を整理。骨子案では、この分野と区分に基づく高次の資質・能力の見直し案が示された。

 こうした方針を踏まえ、WGの今後の検討事項の一つとして、教科名の統一も挙げられた。

 2月に開かれた第6回会合でもこの教科名の統一が論点として示されており(参照記事:小学校の「算数」を「数学」に? 新たな論点に委員からは慎重論)、その際は慎重論も多かった。

 この日の会合では、中島啓委員(東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構教授、国際数学連合総裁)が「以前(第6回WG)では、算数という名称は伝統もあるので、あまり変えない方がいいのではないかという意見を言ったが、その後にいろいろ考え、他の人の意見も聞いて、やはり教科としての一貫性を持つのは非常に大事なことだと思っている。一貫性・連続性をつくる観点をはっきりさせるために、教科の名前を統一することもあり得るのではないかと、考えが変わってきた」と述べるなど、委員の認識にも変化がみられた。

 一方で、清野辰彦委員(東京学芸大学教育学部教授)は「教科名を数学に統一することは考えられるが、名称を変更したときに懸念していることは、小学校の先生方の受け止め方だ。名称変更によって難しさを感じたり、距離感を覚えたりして、今回の改訂で大切にしている学ぶ楽しさや意義を感じさせる授業の実現に負の影響が出ないか心配だ」と話し、学校現場への丁寧な説明が必要だと強調した。