「デモカレンダー」たった一人の主婦が運営 二つのボタンに託す思い
戦争や改憲に反対するデモが全国で広がる中、「デモカレンダー」(https://democalendar.jp)というウェブサイトの利用者が増えている。
日時や場所、主催者など各地の情報をまとめており、デモに参加したことのなかった38歳の女性が1人で運営している。
女性は、X(旧ツイッター)上で「Lucy」と名乗る福岡市の主婦だ。元々は政治に無関心で、選挙も「行けたら行く、みたいな感じ」だった。だが、ウクライナやガザで戦争が続き、物価も上がる中、少しずつ何かがおかしいと思い始めた。
行動を起こすきっかけは、2月の衆院選で自民党が圧勝し、高市早苗首相が改憲に意欲を見せたことだった。
「いずれ憲法9条が改正され、戦争ができる国にならないか」。スパイ防止法が検討されていると聞き、普通の日常が崩れていくのでは、と怖くなった。
「まだ何かが変わったわけではない」と気を取り直し、Xで政治の情報を集め始めた。
「私に何ができるだろう?」。SNSは「見る専門」だったが、共感する投稿に恐る恐る「いいね」を押したり、投稿をシェアしたりすることから始めた。
バズった、手汗が止まらない
あるXの投稿を見て、2015年に国会前で安保法制反対の大規模デモがあり、当時は全国のデモ日程がわかるサイトがあったと知った。
「ちょっとまとめてみるか」。ウェブサイトのプログラミングは独学で身につけていた。
AIの助けを受けつつ、5~6時間でデモカレンダーを完成。2月21日に公開し、Xに投稿すると広くシェアされ、表示回数は1日で5万を超えた。
「結構バズってしまい、手汗が止まりませんでした」
工夫したのは、デモに行ける人が押す「行きます!」ボタンだ。自分のようにデモに行ったことのない人たちの気持ちを想像して、備えつけた。
「『行ってみたら、ほとんど誰もいないじゃん』は絶対嫌だなと。何人くらい来るのかわからないと、私だったら行けない」
公開後は緊張の連続だった。次々と掲載依頼が届き、「全国でこんなにたくさんデモがあるんだ」と初めて知った。
掲載にあたっては、デモや集会のURLがあることを条件とし、事前に活動内容を確認。暴力的な内容だった場合は、載せないと決めている。
主催者のSNSのフォロワー数の多寡は問題にせず、むしろ少数の集まりこそ応援したいという。
自分も初めてデモに
3月には自らのサイトの情報を頼りに、デモに初めて参加した。「デモカレンダーを見た」という若者と出会って心が震えた。
4月8日の全国一斉デモでは47都道府県、165カ所の情報を載せた。各地から寄せられた参加人数は計5万人に迫った。「初めてのデモ参加に一歩踏み出せました」「同じ県内で立ち上がる人がこんなにいるなら立たねばならぬと勇気を頂きました」という投稿に励まされた。
サイトにはもう一つ、大切なボタンがある。デモに行けない人が連帯の気持ちを示す「応援してます!」ボタンだ。
Xで「子育て中で、デモに行けない」と嘆く投稿が目についた。病気の人、自宅近くのデモがない人もいた。彼らの声を可視化しようと、後から追加した。
「孤独や無力感を感じている人に寄り添えるサイトでありたい。『一人じゃないよ』って」
デモカレンダーによると、19日には、戦争や9条改憲に反対する「国会正門前大行動」など全国41都道府県の143カ所でデモや集会がある(18日午前10時現在)。
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- 【視点】
これは地域や国によらずですが、社会運動は長いこと「現場に行って声を上げなければ参加とはいえない」という文化が根強いとされてきました。実際にはデモには大きな参加の格差があり、特に家事負担の大きい主婦、また体力や金銭面から若者や障害者が狭義の参加からこぼれ落ちてしまう実情は、2000年代以降の研究・実践で数多く指摘されています。Lucyさんのデモカレンダーはいずれも興味深い工夫に満ちていますが、「応援してます!」ボタンは、その意味で「参加」の定義を広げる工夫の一つと考えられます。 もう一つ「多くの人々が参加している」事実そのものがデモ参加のハードルの議論を下げるという研究も多くあります。この点に関して言えば、Lucyさんのように全国のデモを可視化させる試みは、それ自体が連帯の可視化であると同時に「これほど多くの人がやっているなら特別なことではない、自分も行ってみようかな」と感じるきっかけになり、より多くの人々の参加を促すのではないかと思います。 この度の平和・反戦運動において興味深い点は多々ありますが、Lucyさんの試みのように「参加」の定義を広げた点は大きいと思います。実際にデモに参加するだけでなく、思い思いのペンライトやプラカードを準備するというのも、現場に行けなくても応援ボタンやハッシュタグをつけてつぶやくのも「参加」の延長線上にあり、より大きな連帯をつくる営みと言えそうです。
…続きを読む - 【視点】
この記事で初めてデモカレンダーを知り、すぐに紹介されているサイトを閲覧した。 社会に対して、何かおかしいと思いつつも、日常に追われ、「仕方がない」と大きな流れに抗うことをあきらめてしまいがちだ。 デモカレンダーは、こういった多くの「普通の人びと」に、社会に関わるきっかけを与えてくれる。 「行きます!」「応援してます!」という2つのボタンは、まさに「孤独や無力感を感じている人に寄り添えるサイトでありたい。『一人じゃないよ』って」と語る女性の思いを象徴するものだ。 タイトルや記事にある「主婦」という言葉に、なぜか引っかかる気持ちもあるのだが、サイトの存在を教えてくれた記事に感謝し、一人でも多くの人にこのサイトを伝えたいと思う。
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