というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「The Economic Value of Eliminating Cancer」で、著者はTomas J. Philipson、Deyu Zhang、Shumaila Abbasi、Noah Fisher(いずれもシカゴ大)。
以下はその要旨の概要。
- 2030年以降の35年間に癌による死亡が無くなった場合の米国にとっての経済価値を推計
- 3070万人の癌による死亡、3億8千万生存年の死亡負担が無くなることの経済価値を、連邦政府が規制の費用便益分析評価で用いている金額換算で評価
- 癌による死亡が無くなった場合、35年間で1970億ドルの経済的便益がもたらされる
- 毎年、米国人一人当たりおよそ16,282ドル、家計では41,684ドルに相当
- 癌による死亡が無くなることを研究開発投資に見立てると、ベンチマークとする費用に基づき、内部収益率は570~1024%になる
- 感度分析として、20年掛けて死亡が8割減少するという期間と成功度を変えた分析を行ったところ、経済価値は7割、即ち1340億ドル、毎年一人当たり11,112ドルとなった。
ungated版としてはA cure for cancer would deliver $185T economic windfall, report says | FOX 26 HoustonやEradicating cancer could boost the US economy by $185T, report finds | Fox NewsのFOXニュース記事で参照されている2月末時点のWPがあるが、この時点の著者はStepehen Moore*1とTomas J. Philipsonとなっている。また、この時点の数字は、総額1860億ドル、毎年一人当たり15000ドル、家計当たり39000ドル、内部収益率は537~965%、感度分析は1300億ドル、毎年一人当たり10500ドルとなっている。なお、そのWPでは年当たりの統計的生命価値として531000ドルを用いているが*2、その値は健康と富:パンデミックのコントロールの分配効果・補足 - himaginary’s diaryで紹介したミネアポリス連銀論文の51.5万ドルに比較的近い。
*1:StepehenはStephenのtypo? cf. Stephen Moore (writer) - Wikipedia。
*2:WPでは算出根拠としてPhilipson et al. (2023)を挙げているが、参考文献に該当の論文はない。おそらくThe aggregate value of cancer screenings in the United States: full potential value and value considering adherenceかと思われる(そこではDurie T, Philipson T. Issue brief: a review of the scientific literature on the value of health. 2021.を参照しつつ531,501ドルという数字を示している)。ちなみに、そちらの論文の感度分析や、今回の論文で参照されているPhilipsonらの2012年の論文An Analysis Of Whether Higher Health Care Spending In The United States Versus Europe Is ‘Worth It’ In The Case Of Cancer | Health Affairs(NLM版=An analysis of whether higher health care spending in the United States versus Europe is 'worth it' in the case of cancer)では15万ドルというより保守的な数字が使われている。