身体の関係を持ち始めた頃、腕で顔を覆い、情欲に濡れたその瞳を頑なに隠していた青年。
萬燈夜帳という存在に、己の醜態――否、純粋な反応をさらけ出すことを、九条比鷺は何よりも恥じ、峻拒(しゅんきょ)していたのだ。
だが、今はどうだ。
比鷺の双眸(そうぼう)は、深淵から射し込む光を求めるように夜帳だけを追っている。
その熱い視線に宿るものは、自身を支配する男を崇める、狂おしいまでの悦楽だ。
「良い顔をするようになったな」
夜帳は、陶酔に揺れる比鷺の瞼に、獲物の鮮度を確かめるような手つきで指を這わせた。
かつては頑なに閉じられていたこの体が、今は無防備に開かれ、支配されることを本望だと招き入れている。
夜帳の体躯が、比鷺の輪郭をすべて覆い隠すように圧し掛かった。
口内を蹂躙されることを熱望していたように、貪欲に口吻を求める比鷺に、夜帳は飽きることなく、己の執着を注ぎ込んだ。
comment
0ログインするとコメントが投稿できるようになります