自民党部会で異例の怒号、稲田朋美氏はなぜキレた? 検察に不信と苛立ち「間違い認めず検証もせず」
●地元・福井でも起きた冤罪事件
──自民党内でも法務省案に批判的な声が多いのに、なぜ方向性は変わらないのでしょうか。 稲田議員:議連の案がほぼまとまった頃に、法制審の議論が始まりました。当時の司法制度調査会長だった古川先生(*)は「法制審の案が出るまでは議連案は扱わない」と明言していました。 古川さんは、私が尊敬する政治家の一人です。絶対に誰かにおもねることはありませんし、議論が二分するテーマでもしっかりと自分の意見を言う方です。 ただ、この問題については、私たちの思いをまだまだ理解していただけていないと感じています。法務大臣経験者として、法務省の案を尊重しようとしているのかもしれませんが、内容をしっかり見てほしい。 (*)古川先生・・・自民党の古川禎久・衆院議員。宮崎3区。元法務大臣。 ──そこまで熱くなる理由は? 稲田議員:2024年に福井事件で再審開始決定が出た頃から検察の対応が心底おかしいと思うようになりました。再審開始の決定書やその後の前川さんの無罪判決を読んで、あまりにもひどいと。 無罪判決を出した裁判官は前川さんに謝罪しています。それなのに、検察は証拠を隠し続け、40年近く前川さんを殺人犯として扱い、その人生を壊したのに謝罪すらしない。 これは、思想の右や左の問題ではありません。人として、組織としてどうなのかという問題です。
●法務省・検察が「本質をぼかしている」
──非公開の会議では、どのような議論がおこなわれているのでしょうか。 稲田議員:会議には自民党議員だけでなく、法務省の刑事局長や審議官も出席しています。私は、法務省が議連案を潰す目的で法務省案を出してきたと見ています。 「確定判決の法的安定性」を理由にしていますが、それは判決が適正である場合の話です。実際には不当な有罪判決があります。しかも、福井事件では検察側が証拠を隠して有罪に導いた強い疑いがある上、第1次再審開始決定に抗告をして冤罪の救済を13年も遅らせたのです。 果たしてこれが「公益の代表者」としてのふるまいでしょうか。「検察には公益の代表者として抗告する必要がある」と言われると、強い違和感があるんですよね。 それに、法務省刑事局の反論の仕方が非常に不誠実です。 たとえば、「誤った再審開始決定が抗告によって是正される」と説明しますが、福井事件の第1次再審請求において、裁判所が再審開始決定したことへの検察の抗告は正しかったのか。 無罪の証拠を隠して不服申し立てをし、再審開始決定を取り消させたことが正しいはずはありません。むしろ、検察官による抗告が正義に反するのです。 ただ、抗告禁止の必要性は一見してわかりにくい。私自身も実際の勉強をしてようやく理解できました。 その過程で、法務省がなぜ冤罪の救済が遅れたのかという立法事実の本質をぼかし、一般論として「法的安定性」や「公益の代表者」を持ち出して説明していることに強い怒りを感じています。 配付される資料の作り方にも問題があると感じています。 法務省案は、一般の議員であれば騙せる内容だと思います。私も1年前なら騙されていたかもしれません。