"バトロワ"をやりますスピンオフ TOUGH2外伝 DARK BOND PREMIUM ADVENTURE

  • 1ポチェモブ26/04/03(金) 20:31:00
  • 2二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 20:32:29

    ま…まだ神ストーリーが見れるのか…

  • 3二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 20:42:07

    待ってたよ…

  • 4ポチェモブ26/04/03(金) 20:42:15

    ところでスターバックさん、サブストーリーはどんな物が残ってるの?


    俺は最終章のユースケと内海の再会を補完する「掴んだチャンス」だ


    そして俺は本編終了後のラブストーリー?と凶悪犯高野とのバトルになる「漢純情恋歌」だ


    完全なギャグノリ「クソアマの瞳に恋してる」


    モナのストーリーでも示唆された…この「帰るべき場所」が神楽耶とサクヤを登場させるよ。

  • 5二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 20:42:41

    あざーす

  • 6ポチェモブ26/04/03(金) 20:47:20

    1 内海

    2 柳(高野)

    3 シンクレア(クローマー)

    4 サクヤ


    どれから始めるかかぁ、それを決めるのはダイスの御業だ

    dice1d4=4 (4)

  • 7ポチェモブ26/04/03(金) 20:50:06

    ちなみに内海以外のストーリーは全て本編解決後の話らしいよ


    ↓ここら辺にストーリーで使う機会のなかったげきえろ画像


  • 8二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 20:53:50

    ギアス好きだから楽しみっす

  • 9ポチェモブ26/04/03(金) 20:55:33

    これはユースケが故郷へと帰る数日前の出来事…


    「ユースケ! すぐに新藤組の事務所に戻ってきてくれ! 大変なことになった!」


    新藤力丸からのただならぬ様子の電話を受け、樋口ユースケは息を切らして邪羽帝町にある新藤組事務所の扉を勢いよく開け放った。


    「どうした力丸! 敵の襲撃か!?」


    ユースケが身構えて飛び込むと、そこには屈強な極道たちが立ち並ぶ……のではなく、重苦しい沈黙が落ちた応接室の光景があった。


    ソファには力丸と谷垣源次郎、そして羽沼マコトが険しい顔で座り、その後ろで皇神楽耶が不安げに身を縮めている。



    そして、彼らの対面に座っていたのは――一人の見知らぬ女性だった。


    スッと伸びた背筋、気品のある身のこなし。どこか神楽耶と似た面影を持つが、神楽耶よりもずっと凛とした、揺るぎない芯の強さを感じさせる美しい女性だ。


    >>8

    (この話はあんまり原作関係ないから申し訳ないな…)

  • 10ポチェモブ26/04/03(金) 20:58:08

    「……あなたが、樋口ユースケさんですね」

    女性はユースケを一瞥すると、静かに立ち上がり、丁寧な所作でお辞儀をした。


    「私は、皇サクヤと申します」


    「皇……? 神楽耶と同じ苗字じゃねえか」


    ユースケが戸惑いながら力丸たちに視線を向けると、谷垣が重々しい口調で口を開いた。


    「……ユースケ。神楽耶はな、日本でも指折りの名家である『皇家』の、末端の血筋を引くお嬢様だったんだ」


    「名家の……お嬢様!?」


    驚くユースケに、力丸が静かに過去を語り始める。


    かつて、先代の組長――力丸の父親が仕切っていた時代。激しい抗争に巻き込まれ、命を落とすことになった神楽耶の父親から「娘を頼む」と託されたのが、新藤組だった。それ以来、力丸や谷垣たちは、極道の世界の片隅で、神楽耶を本当の妹や家族のように大切に育ててきたのだ。

  • 11ポチェモブ26/04/03(金) 21:00:15

    「……先代組長、並びに新藤組の皆様が、身寄りを持たぬ神楽耶をこれまで保護し、大切に育ててくださったことには、皇家として心よりの感謝を申し上げます」


    サクヤは深く頭を下げた。しかし、顔を上げた彼女の瞳には、一切の妥協を許さない鋭い光が宿っていた。


    「ですが、神楽耶をもう、私たちの家(皇家)へと戻していただきたいのです」



    サブストーリー5「帰るべき場所」

  • 12ポチェモブ26/04/03(金) 21:03:11

    「サクヤさん、俺たちは神楽耶を……!」


    力丸が身を乗り出そうとするが、サクヤはそれを柔らかな、しかし有無を言わさぬ声で制した。


    「分かっております。貴方たちが、この子に深い愛情を注いでくださったことは。……ですが、考えてもみてください」


    サクヤは悲しげに目を伏せ、冷酷な現実を突きつけた。


    「今のこの時代……『極道と深い関わりがある』という事実だけで、この子の人生そのものが破綻する、消えない『汚点』となりかねないのです」


    「……ッ」


    サクヤのその言葉に、力丸も、谷垣も、反論の言葉を失い、ギリッと奥歯を噛み締めて黙り込んでしまった。

    彼らは裏社会に生きる人間だ。自分たちと一緒にいれば、神楽耶が真っ当な日の当たる世界を歩めなくなることなど、痛いほど理解していたからだ。

  • 13ポチェモブ26/04/03(金) 21:07:14

    「……ふざけるなッ!!」


    沈黙を破ったのは、マコトだった。


    「このマコト様をこき使うのは許せんが…こいつらは悪い奴らなんかじゃない! 神楽耶のために命だって懸けられる、本物の家族なんだぞ!」


    「そうだぜ! 肩書きがなんだってんだ、神楽耶はここでずっと笑って生きてきたんだ!」


    ユースケもマコトに加勢し、サクヤへと熱く詰め寄る。

    だが、サクヤは揺るがなかった。


    「……情だけでは、社会の冷たい風からこの子を守ることはできません。皇家としての責任において、私がこの子を保護することを……ここに命じます」


    毅然とした、絶対的な意志を感じさせる声。それは、ユースケたちの青臭い正義感を冷たく切り捨てる、大人の世界の決定だった。

  • 14二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:07:23

    極道と関わると?ククク…

  • 15二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:08:55

    サクヤーカ
    正論パンチやめてくれる

  • 16ポチェモブ26/04/03(金) 21:10:33

    「さあ、神楽耶。私と共に、本当の家へ帰りましょう」


    サクヤが静かに手を差し伸べる。


    だが。


    「……嫌ですッ!!」


    神楽耶はサクヤの手を激しく振り払った。その目には、大粒の涙が浮かんでいる。


    「私の……私の帰るべき場所は、ここしかありません! 新藤さんや、谷垣さんたちがいるこの場所が……私の本当のお家ですわッ!!」


    「……!」


    サクヤが目を見開く中、神楽耶は涙を散らしながら、応接室を飛び出し、そのまま邪羽帝町の雑踏の中へと走り去ってしまった。

  • 17二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:13:19

    …哀

  • 18ポチェモブ26/04/03(金) 21:16:24

    事務所から飛び出した神楽耶を追うも見失った一行、力丸は手分けして町中を探す事を谷垣達に命じる


    「……手分けして探すぞ! マコトと谷垣は駅前と繁華街を、俺は港の方を当たる!」


    「わかった!」


    「おう!」


    力丸、谷垣、マコトの三人は血相を変えて邪羽帝町の捜索へと散っていった。


    一方、ユースケは力丸からの「サクヤから目を離すな、動向を探ってくれ」という頼みを受け、サクヤと共に神楽耶の行方を追うことになった。


    「パヴェル。皇家のSPを総動員して、この街のあらゆる場所を捜索することを……命じます。必ず、神楽耶を無事に見つけ出しなさい」


    サクヤは傍らに控えていた初老の執事、パヴェルに向けて毅然とした……絶対的な重みのある声で指示を下した。


    「御意に、サクヤお嬢様」


    パヴェルは恭しく一礼すると、素早く部下たちへの指示を飛ばし始める。

  • 19ポチェモブ26/04/03(金) 21:19:47

    その様子を横で見ながら、ユースケは頭を掻き、サクヤへ真っ直ぐな疑問をぶつけた。


    「……なぁ、サクヤさん。なんで『今更』なんだ? 何年も力丸たちが育ててきたのに、どうして急に神楽耶を連れ戻そうなんて言い出したんだよ」


    ユースケの問いに、サクヤは少しだけ足を止め、その凛とした瞳に微かな痛みの色を滲ませた。


    「……現在、皇家(本家)では、次期当主の座を巡って血を洗うような激しい『跡目争い』が起きています」


    「跡目争い……」


    「ええ。神楽耶は末端とはいえ、皇の血を引く者。……このまま放っておけば、いずれ本家の権力闘争に巻き込まれ、命を狙われる危険があります。だからこそ……彼女がその渦に巻き込まれる前に、私の権限の及ぶ場所で安全に保護しようと考えたのです」


    冷たく見えた彼女の行動の裏にあったのは、同じ血を分けた少女を本気で案じる、深く優しい愛情だった。


    (……なんだよ。結局、サクヤさんも神楽耶のことを一番に想って動いてただけじゃねえか)

  • 20二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:19:52

    な、なんや…明らかに怪しそうな元外交官が登場していくギュンギュン

  • 21二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:21:29

    すれ違いと申します

  • 22ポチェモブ26/04/03(金) 21:23:24

    極道のそばに置いておく危険と、本家の権力闘争の危険。どちらからも守るための苦渋の決断だったと知り、ユースケはそれ以上サクヤを責めることができず、口を噤んだ。


    「……執事のパヴェルが、裏社会に潜んでいた神楽耶の情報を懸命に探し出し、私に教えてくれたのです。急がなければと、すぐに私がこちらへ向かいました」


    だが。


    サクヤのその何気ない一言を聞いた瞬間、ユースケの背筋にゾクリと悪寒が走った。


    (……待てよ? 本家が跡目争いで揉めてる真っ最中に、なんでただの執事が『わざわざ末端の血筋の居場所を炙り出して』、この人に教えたんだ……?)


    点と点が繋がり、ユースケの中に強烈な『違和感』と『最悪の予感』が浮かび上がる。


    「……サクヤさん! SPの報告を待ってる暇はねえ、俺についてこい!」


    「え? ユースケさん、一体どこへ……ッ!」


    ユースケはサクヤの手を引き、足早にある場所へと向かって走り出した。

  • 23ポチェモブ26/04/03(金) 21:27:48

    邪羽帝町の外れにある、静かな丘の上の墓地。


    「……うぅっ……ひぐっ……」


    冷たい風が吹く中、新しい墓石――亡きボビーの墓の前にうずくまり、神楽耶は膝を抱えて子供のように泣きじゃくっていた。


    涙で視界が滲む中、神楽耶の脳裏に、昔の温かい記憶が走馬灯のように巡る。


    まだ幼かった頃。たった一人で新藤組に預けられた神楽耶は、顔の怖い極道たちに囲まれ、毎日部屋の隅でガタガタと怯えて泣いていた。


    だが、そんな彼女を笑わせようと、巨体の谷垣と、金髪カツラをかぶったボビーが顔を白塗りにして『道化役(ピエロ)』を買って出たのだ。


    『ほらほら神楽耶! 谷垣特製の、腹踊りだぜぇ〜!』


    『想像してみろ! このピエロがジャグリングに成功する姿を…ってどわぁっ!』


    不器用で、ちっとも面白くない二人の芸。


    でも、その必死で優しい姿に、怯えていた幼い神楽耶は思わず吹き出し……やがて、皆が本当の家族のように、一つの食卓を囲んで笑い合うようになったのだ。

  • 24ポチェモブ26/04/03(金) 21:32:48

    「……私は……お嬢様なんかじゃ、ありませんわ……っ」


    神楽耶が墓石の前で、こらえきれずに慟哭した。


    「……やっぱり、ここにいたか」

    不意に、背後から優しく、懐かしい声が降ってきた。


    「……!」

    神楽耶が振り返ると、そこには息を切らし、安堵の笑みを浮かべた力丸と谷垣が立っていた。


    探すあてなどなくても、家族である彼らには、神楽耶がどこで一人で泣いているか、痛いほど分かっていたのだ。


    「新藤さん……っ! 谷垣さぁんッ!!」


    神楽耶は弾かれたように立ち上がり、二人の大きな胸の中へと飛び込んだ。


    「嫌ですわ……私、行きたくありませんッ! お二人や、マコトさんと離れたくない! ユースケさんやボビーさんが命懸けで守ってくれた、私の大好きなこの街から……絶対に離れたくありませんわッ!!」


    子供のように声を上げて泣きじゃくる神楽耶の背中を、谷垣の分厚い手が優しく撫でる。


    力丸もまた、悲痛に顔を歪めながら、小さく震える彼女の肩を力強く抱きしめ返した。

  • 25ポチェモブ26/04/03(金) 21:37:30

    「……神楽耶。俺たちだって……お前を手放したくなんかねえよ」


    力丸が血の滲むような声で絞り出した、その時だった。


    「――おやおや。感動的な家族の再会ですね」


    カツン、と。

    墓地の入り口から、冷たい足音を響かせて『彼』が現れた。


    「……お前は、サクヤのところの執事……」


    谷垣が警戒して神楽耶を背中で庇う。


    老執事パヴェルは、先程までの恭しい態度を完全に消し去り、その手に冷たく光る『タクティカルナイフ』をチャキリと構えた。


    「ですが、本家の次期当主様より『血の掃除』を仰せつかった私としては、少々目障りな茶番です」


    パヴェルは口元を歪め、爬虫類のような不気味な笑みを浮かべた。


    「さあ、極道の皆様。……その本家の邪魔となるお嬢さんを、大人しく私に渡していただきましょうか」

  • 26ポチェモブ26/04/03(金) 21:42:37

    ザッ、ザッ、ザッ……!


    静寂に包まれた夜の墓地に、無数の足音が響き渡る。

    力丸と谷垣が瞬時に戦闘態勢をとると、暗がりから次々と黒服の男たちが姿を現した。パヴェルの息がかかった、皇家の暗殺部隊(SP)たちだ。完全に三人を取り囲む陣形が敷かれる。


    「……あの方の目論見通り、サクヤという甘い考えを持つ女は、実に利用しやすかった」


    パヴェルはタクティカルナイフを弄びながら、主であるサクヤを心底見下したように嘲笑した。


    「『神楽耶様のため』と少し耳打ちしてやれば、ホイホイとこんなドブネズミの這い回るような街まで足を運ぶ。……己の手を汚す覚悟もない偽善者など、次期当主様の操り人形に相応しい」

  • 27二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 21:49:05

    >>26

    やっばり蛆虫やんけ!

  • 28ポチェモブ26/04/03(金) 21:49:12

    「……ッ!!」


    その言葉を聞いた瞬間、神楽耶の中で、恐怖よりも遥かに大きな『怒り』が爆発した。


    「……私のために一歩も引かず、極道である新藤さんたちと真っ向から戦ってくださった気高き方を……馬鹿になさらないでッ!!」


    神楽耶は力丸の背中から一歩前に進み出ると、涙を拭い、凜とした……まさに名家の令嬢としての圧倒的な気迫でパヴェルを一喝した。


    「おぉ……。流石、腐っても皇の血を引いておられる。素晴らしい威厳だ」


    パヴェルは目を細め、冷酷に右手を振り下ろした。


    「だが、それも今日までです。……やれ。新藤組ごと、その小娘を始末しろ」


    SPたちが一斉に懐から武器を抜き、三人に襲い掛かろうとした、まさにその刹那!


    「ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ、ジジイッ!!」

    https://bbs.animanch.com/arc/img/6435567/1


    墓地の入り口から、樋口ユースケがサクヤの手を引いて猛烈なスピードで乱入してきた。


    「神楽耶! 無事ですか!」


    息を切らすサクヤの姿に、神楽耶の顔がパッと明るくなる。

  • 29ポチェモブ26/04/03(金) 21:53:08

    さらに、彼らの背後から。


    「私の可愛い妹分に、指一本触れさせるかッ!!」


    ダダダダダダダダッ!!!


    羽沼マコトが構えたライフルを夜空に向けて乱射し、強烈なマズルフラッシュと爆音でSPたちを大混乱に陥れた。


    「ヒィッ!? なんだあの女は!?」


    「今だ、谷垣!!」


    「おうッ! 新藤組を舐めるなよ!!」


    錯乱したSPたちの隙を見逃す極道ではない。力丸の鋭い拳が黒服の顎を砕き、谷垣の巨体から繰り出される猛烈なタックルが、次々と暗殺部隊を墓石の彼方へと吹き飛ばしていく。


    「……チィッ! ええい、ならば私自らッ!」


    戦況が不利になったと悟ったパヴェルが、血走った目で神楽耶へと一直線に突進した。


    鋭いナイフが、無防備な神楽耶の胸元へと突き出される。

  • 30ポチェモブ26/04/03(金) 21:58:38

    「……させませんッ!!」


    神楽耶の前に身を挺して飛び出したのは――サクヤだった。


    彼女は一切の躊躇なく、パヴェルの振り下ろした凶刃を『素手』でガッチリと掴み止めたのだ。


    「な、サクヤお嬢様……!?」


    パヴェルが驚愕に目を見開く。サクヤの白魚のような手から、鮮血がポタポタと墓地の土へと滴り落ちる。


    「私の……大切な家族を、これ以上傷つけることは許しません!!」


    サクヤの気高き覚悟が、暗殺者の動きを完全に縫い留めた。


    「……よくやった、サクヤさんッ!!」


    その背後から、怒れるユースケが限界まで引き絞った拳と共に跳躍する。


    「てめぇの歪んだ忠誠心ごと、ブチ砕けろォォォッ!!」


    ユースケの渾身の一撃が、パヴェルの顔面を完璧に打ち抜いた。


    「ゴベァッ!?」

    パヴェルの身体は宙を舞い、そのまま白目を剥いて完全に失神、地面に叩きつけられた。

  • 31ポチェモブ26/04/03(金) 22:01:44

    翌日。邪羽帝町、新藤組事務所。


    「……この度は、私の家の恥晒しが、皆様に多大なるご迷惑をおかけしました」


    手に痛々しい包帯を巻いたサクヤが、応接室で力丸たちに向かって深く、深く頭を下げていた。

    パヴェルと実行犯のSPたちは、コーンブルメたちの手によって速やかに逮捕・連行された。


    「頭を上げてくれ、サクヤさん。あんたが身を挺して神楽耶を守ってくれたこと、俺たち新藤組は一生忘れねえ」


    力丸が真摯な声で応える。

    サクヤは顔を上げ、少し寂しそうに微笑んだ。


    「……今回の件で、本家の跡目争いが私の想像以上に激化し、腐敗していることが分かりました。……神楽耶を本家に戻せば、彼女はもっと危険な目に遭うでしょう」


    サクヤは、隣に座る神楽耶を優しく見つめた。


    「彼女は、私が守るよりも……皆様の側にいる方が、ずっと安全で、幸せなのだと理解しました。神楽耶のことは、これからも新藤組の皆様にお任せいたします」

  • 32ポチェモブ26/04/03(金) 22:07:05

    そして、サクヤはゆっくりと立ち上がり、別れを告げようとした。


    「皆様の間には、血よりもずっと濃く、温かい絆が存在していました。……どうか、お元気で」


    踵を返そうとしたサクヤ。だが、その無事な方の左手を、神楽耶が両手でギュッと握りしめた。


    「……サクヤ様」


    神楽耶は、満面の、咲き誇る花のような笑みを浮かべた。


    「わたくしを命懸けで助けてくださった貴女との間にも……もう、深い『絆』がありますわ」


    その言葉に、サクヤの凜とした瞳から、ホロリと一筋の涙がこぼれ落ちた。


    「……へっ」

    それを見ていたユースケが、腕を組んで不器用に笑う。


    「血が繋がってるかとか、どんな身分かとか、そんな小難しいことは関係ねえんだよ。……お互いに本気で想い合って、命を懸けられるなら、それはもう立派な『本物の絆』だろ」


    ユースケの温かい言葉に、サクヤは涙を拭い、これまでにないほど晴れやかで、美しい笑顔を咲かせた。


    「……ええ。本当に、その通りですね」


    しんみりとした感動的な空気が応接室を包み込む。

  • 33二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:08:20

    語録ばっかり見かけてたから忘れてたけど原作パヴェルって普通に悪人だったっスねそういや……

  • 34二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:09:58

    見事やな…

  • 35ポチェモブ26/04/03(金) 22:12:11

    ……だが。


    「キキキ! 私の援護射撃がなければ、お前達はみんなハチの巣だった事を忘れるな!」


    バンッ! と応接室の扉を蹴り開け、マコトがいつものように大騒ぎしながら入ってきた。


    「私が助けてやったんだから、最高級の褒美を与えろ! 今夜はA5ランクのステーキだッ!!」


    「ばっ、お前空気読めよマコト!」


    「ハハハッ! いいじゃねえか、今日はめでたいんだ! 新藤組の奢りだぞ力丸!」


    途端に、応接室はいつもの騒がしくも温かい、極道たちの笑い声に包まれた。


    ユースケも、力丸も、谷垣も、マコトも、そしてサクヤも、皆が声を出して笑い合っている。

    その優しく眩しい光景を見つめながら、神楽耶は胸の奥が温かいもので満たされていくのを感じていた。


    (……ええ。やっぱり、ここが……)


    神楽耶は、誰にも聞こえない声で、そっと心の中で呟いた。


    (ここが、私の『帰るべき場所』ですわ)


    サブストーリー5『帰るべき場所』 END

  • 36二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:12:39

    見事やな…ニコッ

  • 37二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:13:43

    サブストーリーもいい展開やのぉ

  • 38ポチェモブ26/04/03(金) 22:16:56

    ちなみに良い話風に終わるのはこれが一番最後に出力した話だから大団円風にしたらしいよ


    サブストーリー特有のとりあえず事件を起こす敵役に抜擢された…パヴェルと申します。

  • 39ポチェモブ26/04/03(金) 22:21:11

    1 内海

    2 柳(高野)

    3 シンクレア(クローマー)


    (よく考えたら柳→シンクレアはちょっと繋がってるから先にシンクレアが来たら修正しないとな…)


    dice1d3=2 (2)

  • 40二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:22:16

    高野!

  • 41ポチェモブ26/04/03(金) 22:23:41

    ちなみに柳編は自分でも書いてたけど本筋に入るまでめちゃくちゃ長かったらしいよ

    アーソンが柳もネカピンと同じようなものって口にしてユースケと殴り合いになるシーンを見せたかったよねパパ

  • 42ポチェモブ26/04/03(金) 22:28:18

    邪羽帝町を巻き込んだ巨大な闘いの熱狂から、しばらくの時が過ぎた頃。


    樋口ユースケは、激闘を共にした捜査官・コーンブルメから「とある事件の捜査に協力してほしい」という唐突な呼び出しを受けていた。


    待ち合わせ場所となった、少し落ち着いた雰囲気の純喫茶。


    「……あのな、課長さん。俺はただの喧嘩好きなパンピー(一般人)だぜ? 警察の仕事なんて管轄外にも程が――」


    カランコロン、とベルを鳴らして店に入り、不満げにぼやきながらコーンブルメの席へと向かったユースケの足が、ピタリと止まった。


    コーンブルメの対面に座っていた、一人の女性。


    スッと背筋を伸ばした理知的な佇まい。艶やかな髪に、知性を感じさせる美しい眼鏡。どこか母性を思わせるような、柔らかくも芯のある眼差し。


    「はじめまして。あなたが樋口ユースケさんですね」


    女性がスッと立ち上がり、丁寧にお辞儀をした。

  • 43ポチェモブ26/04/03(金) 22:31:05

    「対ホロウ6課・副課長の、月城柳と申します。本日は急なお呼び立てにも関わらず、ご足労いただきありがとうございます」


    (……女神だ、女神に会ったんだ……ッ!!)


    ドクンッ、と。


    ユースケの分厚い胸の奥で、剛骨術の鍛錬でも鳴ったことのないけたたましい警鐘(ラブ・コール)が鳴り響いた。文字通りの、完全なる一目惚れである。


    サブストーリー7「漢純情恋歌」

  • 44二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:32:43

    一目惚れを超えた一目惚れ

  • 45ポチェモブ26/04/03(金) 22:35:17

    「お、おう! 樋口ユースケだ! 困ったことがあれば何でも言ってくれよな!」


    数分前までの「一般人だから断る」という態度は宇宙の彼方へ吹き飛び、ユースケは顔を真っ赤にして前のめりに答えた。


    ちなみに今日のユースケは、コーンブルメから事前に「女性の同僚も同席する」と聞いていたため、いつものボロボロの道着ではなく、カジノ潜入時に着た黒いスーツ姿という、気合いの入りすぎたバッチリ(?)な格好で決めていた。


    「……その、随分と気合いの入ったお召し物ですね」


    柳はユースケの強烈なファッションに少し困惑したように微笑みつつ、スッと席を勧めた。コーンブルメはやれやれと呆れたようにため息をついている。


    「早速ですが…今日は、あなたのお力をお借りしたくご相談に参りました」


    柳が真剣な表情に戻り、テーブルに数枚の資料を広げた。

  • 46ポチェモブ26/04/03(金) 22:39:37

    「邪羽帝町から少し離れた、『墓京(ぼけーっ)町』という街で起きている連続殺人事件です。……被害者は年齢も性別もバラバラで、ターゲットの法則性が全く掴めていません」


    柳の落ち着いた丁寧な説明に、ユースケも(内心デレデレになりながらも)真面目に耳を傾ける。


    「ただ、数日前のコーンブルメさんの粘り強い調査により、一つの共通点が浮かび上がりました。……被害者たちは皆、殺 害される直前に墓京町にある『OSOME』というクラブに出入りしていたのです」


    「OSOME……」


    「はい。そこは表向きはただのクラブですが、裏では売春や違法な薬の密売が行われている危険な場所です。警察が正面から踏み込めば、尻尾を巻いて逃げられるでしょう」


    柳は眼鏡の位置をクイッと直し、ユースケを真っ直ぐに見つめた。


    「そこで、あなたにお願いがあります。……私と二人で、恋人同士を装って『OSOME』へ潜入していただけないでしょうか? あなたのような腕の立つ方が同行してくだされば、怪しまれることなく、安全に内部の調査ができるはずです」

  • 47二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:40:15

    このイラストは……?

  • 48ポチェモブ26/04/03(金) 22:42:10

    「こ……恋人同士の、潜入捜査……ッ!?」


    ユースケの脳内で、ファンファーレが鳴り響いた。

    この理知的で美しい眼鏡美人(しかもお母さん的な包容力まである)と、腕を組んでクラブに潜入。しかも頼られている。


    (……見せてやるしかねえ! あの街で鍛え上げた、俺の最高にカッコいい男の背中をよォッ!!)


    「任せてくれ、柳さん! どんな危険な場所だろうが、俺がアンタのことを絶対に守り抜いてみせるぜ!」


    ユースケがドンッと胸を叩いて宣言すると、柳はふわりと柔らかな笑みを浮かべた。


    「頼もしいですね。……ふふ、よろしくお願いします、ユースケさん」

  • 49二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:44:35

    ジャワティー以上に酷い地名で笑ってしまう

  • 50ポチェモブ26/04/03(金) 22:45:16

    その頃。


    墓京町の外れにある、薄暗く散らかった安アパートの一室。


    「バンッ。……あははっ、ボクの勝ちだ」


    割れた鏡の前に立ち、一人でおどけるように拳銃を構えている小柄な男がいた。


    歳の割に子供じみた、甲高く不気味な声。連続殺人犯、高野マサルだ。


    「この世界には、悪い奴らがいっぱいいる。……でも大丈夫。正義のヒーローは、ボク一人だけで十分だからね」


    マサルは鏡に映る自身の歪んだ笑顔を見つめ、銃口をゆっくりと自身のこめかみから、鏡の向こうの『見えない誰か』へと向け直した。



    「さあ……新たな悪を、ボクが裁いてやる」


    薄暗い部屋に、チャカッ、と冷たい撃鉄の音が不気味に響き渡った。

  • 51二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:45:41

    “ユースケ”に“春が来た”!?

  • 52ポチェモブ26/04/03(金) 22:49:26

    重低音のEDMが内臓を揺らし、極彩色のレーザーが飛び交う墓京町の地下クラブ『OSOME』。


    紫色のスモークが立ち込めるフロアに、黒いスーツに身を包んだユースケと、ドレッシーな装いに身を包んだ月城柳の姿があった。


    「おっと、危ねえよハニー。俺から離れるなよ?」


    ユースケは、ここぞとばかりに柳の肩を抱き寄せ、無駄にキメ顔を作って『恋人』の演技(という名の役得)を大いに満喫していた。鼻の下は完全に伸びきっている。


    『……ユースケくん。君、完全にただのエロオヤジになってるぞ。もう少し自然にやってくれないと』


    耳に仕込んだ超小型インカムから、バックアップのコーンブルメによる冷ややかなツッコミが飛ぶ。


    (うるせえ! これが俺なりの完璧なエスコートなんだよ!)


    内心で言い返しながらも、隣を歩く柳から漂う上品な香りに、ユースケの心臓はさっきから早鐘を打っていた。

  • 53ポチェモブ26/04/03(金) 22:52:00

    「ふふっ。ユースケさん、エスコートありがとうございます。……でも、周囲への警戒はお忘れなく」


    柳はユースケの前のめりな演技に困惑しつつも、柔和な笑みを崩さず、その理知的な瞳でクラブの隅々まで鋭く観察していた。


    二人は恋人同士を装いながら、VIPルーム周辺やフロアの暗がりを回った。


    確かに、あちこちで非合法な薬の取引や、売春の交渉が行われている生々しい光景が目に入る。だが、連続殺人の容疑者らしき不審な人物の姿は、どこにも見当たらなかった。


    「……ダメですね」


    フロアを一通り歩き終え、柳が小さくため息をつき、肩を落とす。


    「被害者たちがこのクラブに出入りしていたのは事実ですが……連続殺人犯と直接的な繋がりがあるわけではなく、ただの偶然だったのかもしれません。空振りのようですね」

  • 54二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 22:52:50

    >>50

    おーっジャッジシリーズとかに出てきそうな野蛮人適正高いですね……ガチでね

  • 55ポチェモブ26/04/03(金) 22:55:48

    「……柳さん」


    落ち込む彼女の姿を見て、ユースケは優しく彼女の手を引き、フロアの隅にある静かなバーカウンターへとエスコートした。


    「マスター! このとびきり綺麗なレディに、一番美味い酒を作ってやってくれ!」


    ユースケはバーテンダーに気前よく万札を置くと、柳の隣に座り、照れくさそうに頭を掻いた。


    「ま、警察の仕事ってのは足で稼ぐのが基本なんだろ? たまには空振りだってあるさ。……それに、俺はアンタみたいなすげえ美人と一緒に酒が飲めるだけで、今日ここに来た甲斐があったってもんだぜ」


    不器用極まりない、しかし一切の嘘がない真っ直ぐな口説き文句。


    柳は出されたカクテルグラスを見つめ、クスリと柔らかく微笑んだ。


    「……ありがとうございます、ユースケさん。あなたは本当に、裏表のない優しい方ですね」

  • 56ポチェモブ26/04/03(金) 23:00:04

    柳はグラスに口をつけると、静かに、ぽつりぽつりと自身の過去を語り始めた。


    「私は……人とは違う、特殊な血を引いているんです。……かつて、忌み嫌われていた『鬼』の血を」


    「鬼……」


    「はい。私は自分の責任とこの血を呪ったこともありました。でも……今の職場の仲間たち、雅課長や蒼角たちは、そんな私を『家族』として当たり前のように受け入れてくれたんです」


    柳の瞳に、深い慈愛の光が宿る。


    「だから私は、警察として……対ホロウ6課の副課長として戦っています。私に居場所をくれた大切な仲間たちのために。そして……この鬼の血という特殊な力で、無辜の人々を悲劇から守るために」


    静かに、けれど絶対に揺るがない彼女の生き様。


    ただの「綺麗なお姉さん」だと思っていた。だが、その胸の内に秘められた、他者のために自己犠牲すら厭わない気高く美しい魂に触れ……ユースケは完全に、心の底から彼女に惚れ込んでしまった。


    「……アンタは、強くて……本当に綺麗な人だ」

  • 57ポチェモブ26/04/03(金) 23:06:10

    ユースケが真剣な眼差しでそう告げた、次の瞬間だった。


    「……おい。見ねえ顔だな、てめぇら」


    突如、二人の背後から、黒服を着た屈強なクラブのボディガードたちが数人がかりで取り囲んできた。

    「よそ者が勝手に嗅ぎ回ってんじゃねえぞ。どこのモンだ?」


    黒服たちが懐から特殊警棒やナイフをチャキリと抜く。


    「……チッ。どうやら、おしゃべりの時間は終わりみたいだな」


    ユースケは柳を背中で庇うように立ち上がり、ネクタイを乱暴に緩めた。


    「ユースケさん、私もやります」


    「へっ、怪我すんなよハニー!」


    ユースケが剛腕を振るい、大柄な黒服を次々とバーカウンター越しに殴り飛ばす。

    その後方から迫る敵には、柳がヒールを鳴らしながら、無駄のない洗練された薙刀捌きで的確に峰打ちを決め、床へと沈めていく。


    「……すごい。背中を完全に預けられるなんて」


    「へへっ、アンタの動きも最高だぜ!」

  • 58ポチェモブ26/04/03(金) 23:08:13

    荒くれ者のユースケのパワーと、柳の理知的で正確な技。即席のコンビとは思えない抜群のコンビネーションで、二人はまたたく間に十数人の黒服を制圧していった。


    だが、乱闘騒ぎによってクラブ内は完全にパニック状態に陥っていた。

    悲鳴を上げて逃げ惑う客たち。怒号とEDMが入り混じる混沌の中。


    「……あれは?」


    柳の視界の端に、奇妙な光景が映った。


    パニックに陥る人々の中で、たった一人……薄気味悪い笑みを浮かべた『小柄な男』が、騒ぎなど全く気にも留めない様子で、悠然と裏口のドアへと歩いていくのが見えたのだ。


    「……あの男、様子がおかしい……! まさか!」

    柳の警察としての直感が、激しく警鐘を鳴らす。


    「ユースケさん! 私は彼を追います!」


    「え!? おい、ちょっと待て柳さん!」


    ユースケが最後の一人を殴り倒して振り返った時、すでに柳の姿はなかった。

  • 59二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:08:26

    おーっ二人ともやるやん 見事やな……ニコッ

  • 60二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:12:14

    有能を超えた有能

  • 61ポチェモブ26/04/03(金) 23:12:37

    クラブの裏手、薄暗く冷たい路地裏。


    裏口から飛び出した柳は、ヒールの音を忍ばせながら、小柄な男の後ろ姿を追って暗がりへと足を踏み入れた。


    「……待ちなさい! 警察です、少しお話を――」


    柳が声をかけた、その瞬間。

    男の後ろ姿がフッと路地の闇に溶けるように消えた。


    「なッ……!?」


    柳が立ち止まった直後。背後のゴミ箱の陰から、音もなく『銃口』が柳の脇腹にピタリと突きつけられた。

    完全に待ち伏せされていたのだ。


    「……動かないでね、警察のお姉さん」


    歳の割に子供じみた、甲高く不気味な声。

    高野マサルが、暗闇の中で三日月のように口を歪めて笑っていた。


    「ボクの『正義の処刑』を邪魔する悪い鬼は……ボクが退治してあげるからさ」


    「くっ……!」


    銃口を押し当てられ、柳は身動きが取れなくなってしまう。

    パニックの喧騒から切り離された路地裏で、美しき副課長は、最悪の連続殺人鬼の手に落ちてしまったのだった。

  • 62二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:13:47

    怖いです

  • 63二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:14:25

    高野くん…聞いています
    最近バトロワスレでやたら人気だと

  • 64ポチェモブ26/04/03(金) 23:15:19

    カツン、カツン……。


    墓京町の外れにある、打ち捨てられた廃ビルの最上階。


    冷たいコンクリートの部屋の中央で、月城柳は後ろ手に太いロープで椅子に拘束されていた。


    「……あははっ。捕まえちゃった。対ホロウ6課の優秀な副課長サン」


    暗がりの中から、不気味に笑いながら歩み出てきたのは、連続殺人犯・高野マサルだった。彼は手にした拳銃をくるくると弄びながら、柳の顔を覗き込む。


    「ボクのこと、追ってたでしょ? 正義のヒーローであるボクを嗅ぎ回るなんて、本当に鬱陶しい悪党だよね。だから罠にかけてやったんだ」


    「……ヒーロー、ですか。あのクラブに出入りしていた人々を、身勝手な理由で殺 害しておいて?」


    柳が鋭い視線で射抜くと、マサルは子供のように頬を膨らませた。


    「当然でしょ! あいつらは犯罪に手を染めた汚い連中だ! だからボクが裁きを与えてやっただけ! この街の悪を倒す、ボクこそが真のヒーローなんだからさ!」


    マサルは狂気に満ちた目で拳銃の銃口を柳の額に突きつけた。

  • 65ポチェモブ26/04/03(金) 23:18:58

    「それにさぁ……ボク、知ってるんだよね。お姉さん、『鬼』の血を引いてるんでしょ? ……化け物が、偉そうに正義の味方面をするなよ。吐き気がするね」


    その心無い嘲笑に、柳が僅かに目を伏せた――その時だった。


    ガアァァァァンッ!!


    廃ビルの錆びた鉄扉が、爆発したかのように蹴り破られた。


    「……てめぇ。その汚ねえ口を閉じろ」


    舞い散るホコリの中から姿を現したのは、コーンブルメのバックアップを受けて高野の居場所を突き止めた、樋口ユースケだった。スーツはホコリに塗れているが、その瞳はかつてないほどの怒りに燃えている。


    >>63

    (現代日本が舞台だとこれ以上ないくらい魅力的なヴィランだよねパパ)

  • 66ポチェモブ26/04/03(金) 23:22:00

    「ユースケさん……!」


    「お前はヒーローなんかじゃねぇ、ただのクソガキだ。……力があってもな、その使い方を正しく使えなきゃ、そいつこそが本物の『化け物』なんだよッ!!」


    ユースケの痛烈な喝破に、マサルの歪んだプライドが激しく傷つけられた。


    「……うるさい、うるさいっ! ボクの邪魔をする奴は、みんな殺してやるッ!!」


    パーンッ! パンッ!!


    激昂したマサルが銃を乱射する。ユースケは強靭な身体能力でコンクリートの柱の陰へと間一髪で飛び込み、凶弾を躱した。


    「チッ……すばしっこいネズミめ。なら、これでどうだ!」


    マサルは部屋のブレーカーを撃ち抜き、廃ビルを完全な暗闇に沈めた。そして、暗所に逃げ込むと、懐から取り出した『暗視ゴーグル』をカチャリと装着する。


    「あははっ! これでボクからは丸見えだ! 暗闇の中で一方的にハチの巣にしてやるよ!」

  • 67二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:25:21

    >お前はヒーローなんかじゃねぇ、ただのクソガキだ。……力があってもな、その使い方を正しく使えなきゃ、そいつこそが本物の『化け物』なんだよッ!!


    本編の後日談なのもあって余計に実感がこもってますね、ガチでね

  • 68ポチェモブ26/04/03(金) 23:25:28

    マサルが安全な部屋の隅から、ユースケの潜む柱へと狙いを定めた、まさにその瞬間だった。


    (……遅いですね)


    マサルの背後で、拘束されていたはずの柳がスッと立ち上がった。ユースケがマサルの気を引いている数秒の間に、彼は暗闇を縫って柳の背後に回り込み、その強靭な指の力でロープを完全に引き千切っていたのだ。


    「……な、んで……!?」


    驚愕して振り返るマサル。

    柳は静かに深呼吸をすると、その身に宿る強大な『雷の力』を解放した。


    「――少し、眩しいですよ」


    ピカァァァァァァァァッ!!!

    柳の全身から放たれた極大の雷光が、密室の廃ビルを真昼のように照らし出す。


    ただでさえ眩い閃光。それを暗視ゴーグル越しにゼロ距離で浴びたマサルの網膜は、完全に焼き切れる寸前のダメージを受けた。


    「ぎぃやぁぁぁぁぁぁッ!?? 目がッ、ボクの目がぁぁっ!!」


    マサルはゴーグルをもぎ取り、銃を乱射しながら床をのたうち回る

  • 69ポチェモブ26/04/03(金) 23:28:02

    「……これで終いだ、クソガキ!!」


    閃光の中、ユースケが一直線に踏み込んだ。


    「『剛骨指斬』ッ!!」


    ゴキィィィンッ!!

    ユースケの指先が、銃を握るマサルの右肩の関節を正確に打ち抜き、完全にへし折った。


    「あぐァァァッ!?」


    銃がカランと音を立てて床に落ちる。

    そして最後は、柳が手にした薙刀を、マサルの喉元わずか数ミリのところでピタリと寸止めした。


    「……そこまでです」


    その静かで圧倒的な殺気を前にして、マサルは白目を剥き、恐怖とショックで泡を吹いて完全に失神した。

  • 70二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:30:13

    見事やな……

  • 71二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:30:58

    ウムっ やはり高野は無様に瞬殺されるのが似合うっ

  • 72ポチェモブ26/04/03(金) 23:31:56

    数十分後。


    パトカーのサイレンが鳴り響く廃ビルの下。手錠をかけられたマサルが連行されていくのを見届けた後、柳は改めてユースケに向き直り、深く頭を下げた。


    「ユースケさん、コーンブルメさん。今回は本当に助かりました。私一人では、危ないところでした」


    「い、いや! 俺は当然のことをしたまでだぜ! 柳さんに怪我がなくて本当によかった……」


    ユースケが顔を真っ赤にして照れ隠しに頭を掻く。

    すると、柳もまた、ふわりと頬を朱に染め、少し上目遣いでユースケを見つめた。


    「……あの、ユースケさん。先程は……私のことを『ヒーローだ』と言って庇ってくださって……本当に、嬉しかったです」


    (……キ、キタァァァァァッ!! これはいける!! 完全に脈アリだ!!!)


    ユースケの脳内で歓喜のファンファーレが爆音で鳴り響く。


    「や、柳さん……! 実は俺、初めて会った時からアンタのことが――」

  • 73ポチェモブ26/04/03(金) 23:33:38

    「――ああ、いけない! 雅課長から入電です!」


    ユースケが告白の言葉を紡ごうとした瞬間、柳のスマートフォンがけたたましく鳴った。


    「はい、柳です。……ええ、墓京町の件は終わりました。……はい? 次の特異ホロウ事件が海外で? 分かりました、急ぎ空港へ向かいます」


    柳は電話を切るや否や、先程までの可憐な乙女の顔から、バリバリの『副課長』の顔へと一瞬で切り替わった。


    「ユースケさん、申し訳ありません! 緊急の任務が入ってしまったので、私はこれで失礼します! 本日は本当にありがとうございました!」


    「えっ!? あ、ちょ、柳さ――」


    柳は美しい髪をなびかせ、颯爽と迎えの車に乗り込み、嵐のように走り去ってしまった。

  • 74二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:36:38

    うーん 課長は書類仕事全くしないしマサマサはサボりまくるせいで激務を超えた激務だから仕方ない本当に仕方ない

  • 75ポチェモブ26/04/03(金) 23:36:53

    「……」


    排気ガスだけが残された路地裏。

    告白を華麗にスルーされたユースケは、真っ白に燃え尽き、へなへなと地面に崩れ落ちた。


    「やれやれ。剛骨術の使い手も、綺麗な副課長に……身も心もすっかり『骨抜き』にされちゃったみたいだね」


    松葉杖をついたコーンブルメが、哀れな男を見下ろしながら呆れたようにクスリと笑った。


    「う、うるせぇ……! 俺の純情を笑うんじゃねぇーーッ!!!」


    ユースケの涙声が、夜の墓京町に虚しく響き渡った。

  • 76ポチェモブ26/04/03(金) 23:40:26

    一方、海外へと向かう夜間飛行の機内。

    ファーストクラスの窓際の席に座る柳は、眼下に広がる街の灯りを見つめながら、そっと口元を綻ばせていた。


    (樋口ユースケさん……ですか)


    脳裏に蘇る、あの不器用で真っ直ぐな、黒いスーツの男の顔。


    「……ふふっ。本当に、変わった方。」


    柳は満更でもなさそうに優しく微笑むと、彼に守られた温かい記憶を胸に抱きながら、静かに目を閉じたのだった。


    サブストーリー6 「漢純情恋歌」END

  • 77二次元好きの匿名さん26/04/03(金) 23:44:33

    いい話ヤンケ素敵ヤンケ

  • 78ポチェモブ26/04/03(金) 23:45:37

    本編に物語としてのヒロインは神楽耶がいたけど、恋愛的な要素を持つヒロインがユースケになかったな…と思って今回のサブストを作った…それが僕です。

    ちなみに高野は全部人力だった場合柳→サクヤと続けて登場するサブストのボス枠の予定だったらしいよ

    そして今日はここまで…明日シンクレアと内海をやればちょうどスレも使い切れる…と思う。

  • 79二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 01:31:25

    オツカレーッ
    えっ パヴェルが高野に出番を取られてた可能性もあったんですか

  • 80二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 02:43:42

    内海のサブストが楽しみを超えた楽しみ

  • 81二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 11:28:53

    このレスは削除されています

  • 82二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 17:22:38

    保守ついでに使う予定の内海の画像を貼っておくのんゴロンヤメロオオオ

  • 83ポチェモブ26/04/04(土) 22:32:58

    そろそろ始めるのんゴロンヤメロオオオ
    内海のサブストはちょっと間違えて消した部分があるからそれの修正しつつシンクレア編を進めてやるよゴアッ

  • 84ポチェモブ26/04/04(土) 22:37:51

    邪羽帝町での死闘から数ヶ月。


    樋口ユースケが父親から受け継ぎ、再出発を果たした『ヒグチ流剛骨術』の道場は、静かな午後の空気に包まれていた。


    「……たのもー、ですか?」


    道場の引き戸が恐る恐る開き、金髪で気弱そうな青年が顔を出した。


    「ん…?見学か? 遠慮せず入ってこいよ。」


    床掃除をしていたユースケが気さくに声をかけると、青年はおどおどとしながら道場に上がり、深々と頭を下げた。


    「あ、あの。僕、シンクレアと申します。以前、邪羽帝町でドンキホーテさんという方がお世話になったと聞いて……」


    「あ、あのドンキホーテの知り合いか…あの節は世話になったな。で、今日はどうしたんだ? えらく深刻そうなツラしてんじゃねえか」


    ユースケが麦茶を差し出すと、シンクレアは両手で湯呑みを受け取り、ガタガタと小刻みに震えながら視線を落とした。

  • 85ポチェモブ26/04/04(土) 22:41:34

    「……実は、ユースケさんなら僕の深い悩みを聞いてくれると、彼女に勧められて来たんです。僕……ある人に出会ってから、人生がめちゃくちゃになってしまって。家族のこともあって……どうしていいか、分からないんです」


    義体への嫌悪。そして、狂信的な少女によってもたらされた凄惨なトラウマ。

    シンクレアがその重く暗い過去を打ち明けようと、決死の覚悟で口を開きかけた、その時だった。


    「――見ぃつけたっ、私のシンクレアぁっ!!」


    バンッ!!

    道場の戸が勢いよく開き、不気味なほど甘ったるい声を上げて、一人の少女が飛び込んできた。


    異端審問官のような服に身を包み、狂気に満ちた恍惚の笑みを浮かべる少女――クローマーだ。

  • 86ポチェモブ26/04/04(土) 22:44:46

    「ヒィッ!?」


    シンクレアの顔から一瞬にして血の気が引き、湯呑みが床に転がり落ちる。


    「ああ、こんなところに隠れていたのね! さあ、私と一緒に来なさい。義体なんていう汚らわしいものに塗れた世界から、あなたを救い出してあげるわ!」


    クローマーは両手を広げ、シンクレアへと熱烈に(そして物理的にも)猛アプローチを仕掛ける。


    「や、やめてくださいッ! 来ないで……僕に近づかないでくれッ!!」


    シンクレアは涙目になりながら、道場の隅へと全力で後ずさりし、必死にクローマーを拒絶した。過去のトラウマがフラッシュバックし、全身が恐怖で硬直しているのだ。

  • 87二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 22:46:25

    かわいそ…

  • 88二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 22:47:53

    おお…うん…

  • 89ポチェモブ26/04/04(土) 22:49:05

    だが。

    その光景を横で見ていたユースケの瞳には……全く、別のフィルターがかかっていた。


    (……なるほどな。そういうことかよ)


    ユースケは腕を組み、ウンウンと深く頷いた。


    ユースケの目には、トラウマに怯える青年と狂気の人殺し少女の構図が、『自分にベタ惚れしている女の子に対して、素直になれずに強がっているシャイな思春期ボーイ』にしか見えていなかったのだ。


    「青春だねぇ」


    ユースケはニヤニヤと笑いながら、恐怖で震えるシンクレアの肩をガシッと力強く抱き寄せた。


    「ユ、ユースケさん……? た、助け……」


    「おいおいシンクレア! お前、男だろ! こんなに熱烈にアタックしてくれてる可愛い子を、無下に突き放すなんてモテねえ男のやることだぜ!」


    「……え?」


    シンクレアは耳を疑い、完全に唖然とした。




    サブストーリー7『クソアマの瞳に恋してる』

  • 90ポチェモブ26/04/04(土) 22:55:19

    「若いうちは恥ずかしくて素直になれねえ気持ちも分かる! だがな、女心ってのは繊細なんだ。俺みたいに、手遅れになってから泣きを見ても遅いんだぞ……ッ!」


    ユースケの脳裏に、夜の空へ颯爽と消えていった月城柳の美しい横顔がフラッシュバックする。


    (俺の恋が実らなかった分……この若い二人の青い春は、俺が絶対に実らせてやるッ!)


    完全に明後日の方向へと燃え上がったユースケの謎の使命感。


    すると、その状況を瞬時に理解したクローマーが、口元を三日月のように歪めてニィッと笑った。


    「そうよ、道場主さんの言う通りだわ! シンクレアは本当に照れ屋さんなんだからぁ」


    クローマーはユースケの勘違いを最大限に利用し、猫撫で声でユースケに取り入った。


    「私、シンクレアと二人きりで『デート』に行ってみたいの。でも、彼ったら全然素直になってくれなくて……」


    「ク、クローマー……!? 何を言って……ッ」

  • 91ポチェモブ26/04/04(土) 22:58:36

    「任せとけッ!!」


    ユースケはドンッと自分の胸を叩き、親指を立てて満面の笑みを浮かべた。


    「俺が二人の恋のキューピッドになってやる! 最高のデートプランを俺がプロデュースしてやるから、安心して行ってこい!!」


    「やったぁ! ありがとう、お兄さん!」


    「い、いやだぁぁぁッ! ユースケさん、話を聞いて! 彼女は、彼女は僕の家族をッ……!!」


    シンクレアの必死の叫びも、恋の応援団長と化したユースケの耳には、「照れ隠しの悲鳴」にしか聞こえていない。


    完全に青ざめ、絶望のどん底に叩き落とされるシンクレア。

    史上最悪の勘違いから始まる、地獄のデート作戦が今、幕を開けようとしていた。

  • 92ポチェモブ26/04/04(土) 23:02:32

    後日。よく晴れた休日の、墓京町・駅前広場。


    「あーあ……空って、青いんだなぁ……」


    シンクレアは、雲一つない真っ青な空を見上げ、完全に虚無の表情で現実逃避をしていた。



    その後ろには、腕を組み、仁王立ちで目を光らせる樋口ユースケの姿がある。


    「おいシンクレア! デートの待ち合わせでそんな死んだツラすんじゃねえ!」


    ユースケがシンクレアの背中をバンッと景気よく叩く。


    「お前が『照れて逃げ出さないように』、今日は俺が丸一日、後ろからきっちり監視(サポート)してやるからな! 男を見せろよ!」


    (……ユースケさん。僕が逃げ出したいのは照れ隠しじゃなくて、純度100%の『生命の危機』を感じているからなんですけど……っ!)


    シンクレアの悲痛な心の叫びは、ユースケの分厚い胸板には1ミリも届いていなかった。

  • 93ポチェモブ26/04/04(土) 23:05:49

    「あーっ! シンクレアぁっ! お待たせぇっ!」


    不意に、広場の向こうから弾むような声が響いた。

    振り返ると、そこにはフリルがあしらわれた白いワンピースに身を包み、可憐な麦わら帽子を被ったクローマが、小走りで手を振りながら駆け寄ってくる姿があった。


    異端審問官の禍々しい姿はどこへやら、見事なまでに『純真無垢な恋する乙女』の仮面を被っている。


    「おおっ! すげえ可愛い服でおめかししてんじゃねえか!」


    ユースケが目を丸くし、シンクレアの脇腹を小突いた。


    「見ろよシンクレア! お前のためにあんなに健気にオシャレして……本当にいい子じゃねえか! 幸せ者め!」


    「あ……あはは、そう、ですね……」


    シンクレアは引きつった愛想笑いを浮かべながら、内心で激しく毒づいていた。


    (……ユースケさんの前でだけ、純情な女の子の演技をしやがって、このクソアマ……ッ!)

  • 94ポチェモブ26/04/04(土) 23:09:29

    「ユースケお兄さんも、今日は見守っててくれてありがとう! 私、すっごく嬉しい!」


    クローマーがユースケに向かって天使のような笑みを向ける。


    ユースケは「おう! 気にするな!」とサムズアップで応えた。


    こうして、ユースケの厳重な監視のもと、地獄のデートが幕を開けた。


    まずは定番のウィンドウショッピングから。

    繁華街の通りを、二人は(クローマーに腕を絡め取られる形で)歩き始めた。


    「ねえシンクレア! このお洋服、私に似合うかしら?」

    「ええ……とても、似合うと思いますよ……」


    ショーウィンドウを眺めながらキャッキャと喜ぶクローマーと、それに付き合うシンクレア。


    少し離れた後ろから、新聞紙に穴を開けて覗き見ているユースケは、ウンウンと満足げに頷いていた。


    「なんだ、普通にデートできてんじゃねえか。お似合いのカップルだぜ」

  • 95ポチェモブ26/04/04(土) 23:13:00

    「……ふふっ。ねぇシンクレア」


    クローマはシンクレアの腕にすり寄りながら、その口元を耳元へ寄せ……背筋が凍るような、狂気に満ちたニタニタ笑いを浮かべて囁いた。


    「あなたがこうして、私の隣で大人しく歩いているなんて……ああ、最高にゾクゾクするわ。このまま、あなたをどこまでも引きずり回してあげたい……っ」


    「ヒィッ……!」


    シンクレアは全身に鳥肌を立てながら、気が気ではない様子で冷や汗をダラダラと流し続けていた。


    歩き疲れた(精神的に)二人が次に向かったのは、若者に人気のオシャレなオープンカフェだった。


    二人は向かい合ってテラス席に座り、すぐ斜め後ろの席には、メニュー表で顔を隠したユースケが陣取っている。

  • 96二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 23:17:32

    ユースケ 見事やな…

  • 97ポチェモブ26/04/04(土) 23:17:59

    「わぁっ! きたきたぁっ!」


    運ばれてきたのは、巨大で色鮮やかなフルーツパフェ。

    クローマーは目を輝かせると、パフェの頂点に乗っていた真っ赤な『さくらんぼ』をスプーンですくい上げた。


    「ねえ、シンクレア。これ、一緒に食べましょ?」


    クローマーはスプーンをシンクレアの口元へと差し出し、甘ったるい声で囁いた。


    「さあ……あ~んっ、して?」


    「……ッ!!」


    シンクレアの全身の毛穴がブワッと開き、限界突破の鳥肌が立った。


    家族を奪った狂信 者からの、逃げ場のない『あ~ん』。生理的嫌悪と恐怖が限界に達し、シンクレアはガタガタと震えながら顔を背けようとした。

  • 98ポチェモブ26/04/04(土) 23:21:58

    「ご、ごめんなさい、僕、そういうのはちょっと……ッ!」


    必死に拒否しようとするシンクレア。


    だが、その後方から。

    メニュー表の隙間から、ユースケの『鬼の形相』が覗き、激しい小声の檄が飛んできた。


    『……おいシンクレア! 何逃げてんだ! 男なんだから、腹括ってそのさくらんぼを食えッ!! ここで断ったら男が廃るぞ!!』


    ユースケの、完全に善意(100%の勘違い)から来る恐ろしいプレッシャー。


    前門の虎(クローマー)


    後門の狼(ユースケ)


    完全に逃げ道を塞がれたシンクレアは……ついに、心が折れた。

  • 99ポチェモブ26/04/04(土) 23:25:52

    「……あ、あ、あ〜ん……」


    シンクレアは、今にも泣き出しそうな顔で、頬を引きつらせて絶望的な『作り笑顔』を浮かべた。


    そして、クローマの差し出したスプーンの上のさくらんぼを、震える口でパクリと咥え込んだ。


    「……どう? 美味しい?」


    クローマーが、獲物をいたぶる蛇のように目を細める。


    「……ええ。……とっても、おいしい、です」


    シンクレアの目から、ツツーッと一筋の熱い涙(心境的には完全に血の涙)がこぼれ落ちた。感情の一切こもっていない、完全なる棒読み。


    「アハッ……アハハハハハハハッ!!!」


    その最高に絶望したシンクレアの顔を見た瞬間、クローマはついに堪えきれなくなり、カフェのテラス席で腹を抱え、狂気じみた高笑いを響かせ始めた。

  • 100ポチェモブ26/04/04(土) 23:28:21

    「あははっ! 最高、最高よシンクレア!! あなたのその顔、本当に……あははははっ!!」


    「……」


    涙を流して笑い狂うクローマと、魂が抜け出て灰のようになったシンクレア。


    そして、背後で「おおっ! 彼女、めっちゃウケてんじゃねえか! 大成功だな!」と一人ガッツポーズを決めるユースケ。


    三者三様の、カオス極まりない地獄のカフェタイムは、こうして更けていくのだった。

  • 101二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 23:29:29

    混沌さがおもしれーよ

  • 102ポチェモブ26/04/04(土) 23:32:15

    地獄のカフェタイムを乗り越えた後も、シンクレアの受難は終わらなかった。


    遊園地のアトラクションでは、隣に座るクローマーからやたらと身体を密着され、耳元で甘い声に乗せた『背筋の凍るような愛の言葉(物理的な執着)』を囁かれ続ける。


    映画館の暗がりでは、妙に艶めかしい手つきで指を絡められながら手を握られたが……シンクレアにとっては、まるで自分の胸の奥にある心臓の鼓動を探り、いつでも急所を貫けるように狙われているような、文字通りの『恐怖体験』でしかなかった。


    そして、墓京町にネオンの明かりが灯り、日が沈み始めた頃。


    げっそりと頬がこけ、完全に生気を失ったシンクレアが、クローマーに腕を引っ張られて辿り着いたのは……。

  • 103ポチェモブ26/04/04(土) 23:37:26

    「……ッ!?」


    ギラギラとしたピンク色のネオンが輝く、いかがわしい『ラブホテル』の入り口前だった。


    「さあ、シンクレア。今日はとっても楽しかったわね……最後の仕上げに、誰にも邪魔されないところで、素敵な『既成事実』を作ってあげるわ」


    クローマは頬を紅潮させ、恍惚とした笑みを浮かべながら、強引にシンクレアをホテルの中へ連れ込もうとする。


    「い、いやだ……ッ! 離してッ!! 誰か、助けてぇっ!!」


    シンクレアはエントランスの柱に必死にしがみつき、半泣きで抵抗した。

  • 104ポチェモブ26/04/04(土) 23:41:28

    すると、そこへ。


    一日中後方で腕を組んで見守っていお節介おじさんこと樋口ユースケが、満を持して飛び出してきた。


    「おいシンクレア! 何をビビってんだ!」


    ユースケはシンクレアの背中をバンバンと力強く叩く。


    「ここまでデートをエスコートしたんだ! 男なら最後はビシッと覚悟を決めろ! 彼女の愛を受け止めてやれッ!!」


    完全に勘違いをこじらせ、クローマーの凶行をアシストし続けるユースケ。


    その言葉が、ついにシンクレアの精神の『限界の糸』をブチィッと切った。


    「……ッ!! いい加減にしてくださいッ!!」


    シンクレアはユースケを睨みつけ、涙と鼻水を流しながら、腹の底から絶叫した。


    「僕は、こんなクソアマ……大嫌いなんだァァァァッ!!!」

  • 105ポチェモブ26/04/04(土) 23:44:17

    夜の歓楽街に響き渡る、渾身の拒絶。


    だが、それでもユースケの『青春ラブコメフィルター』は外れなかった。


    「馬鹿野郎ッ!!」


    ユースケはシンクレアの胸ぐらをガシッと掴み、熱い言葉で説教を始める。


    「自分をここまで狂おしいほど好いてくれてる奴に、本気で向き合わないでどうする! ただ『嫌い』なんて子供みたいな逃げ口上を使うな! 男なら、彼女の『何が嫌いなのか』を、目を見てはっきり言ってみろッ!!」


    熱血教師のようなユースケの真っ直ぐな瞳。

    それを見たシンクレアは、ついにボロボロと涙をこぼしながら、胸に秘めていた惨劇の真実をすべて吐き出した。


    「嫌いなところ!? 全部だよッ!!」


    シンクレアはクローマを指差し、叫んだ。


    「彼女は……僕の家族をッ! 両親を、姉さんを皆殺しにしたんだぞ!! 僕を洗脳しようとして、僕の人生をめちゃくちゃに破壊した、イカれた殺人鬼なんだッ!!」

  • 106ポチェモブ26/04/04(土) 23:46:47

    「……」


    「……え?」


    そのあまりにもヘビーすぎる、血で血を洗うガチのサイコパストラウマを耳にした瞬間。


    ユースケの熱血な表情が、サァァァァァッと音を立てて青ざめていった。


    ユースケは、ギギギ……と錆びた機械のように首を回し、クローマを見た。


    クローマは否定するどころか、三日月のように口を歪め、テヘッと可愛らしく舌を出して笑っている。


    「……あ、あー。なんだ」


    ユースケはシンクレアの胸ぐらからパッと手を離し、冷や汗をダラダラと流しながら数歩後ずさった。


    「そ、それは確かに……『嫌い』とか、そういう次元の問題ではないな、うん」


    完全にドン引きである。恋のいざこざだと思っていたら、とんでもないサイコホラー事件の当事者たちだったのだ。

  • 107二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 23:47:50

    クソボケがーっ

  • 108二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 23:48:53

    おお…うん…

  • 109ポチェモブ26/04/04(土) 23:50:13

    「……チッ。バレては仕方ないわね」


    クローマーはため息をつき、ひらひらと手を振った。


    「今日はユースケお兄さんのおかげで、とっても楽しかったわ。またね、私のシンクレア」


    クローマーは名残惜しそうに微笑むと、夜の雑踏の中へと姿を消していった。


    「……はぁ、はぁ……」


    シンクレアは、ようやく悪夢から解放された安堵で、その場に崩れ落ちるように膝をついた。


    「……す、すまねえ、シンクレア」


    ユースケはバツが悪そうに頭を掻き、気まずさ全開で目を逸らした。


    「俺の早とちりで、お前をここまで追い詰めちまったみたいだな……。ま、まぁ……とにかく、変な女には気をつけろってことで……じゃ、じゃあなッ!」


    ユースケはそそくさと背を向け、逃げるようにその場から全速力で立ち去っていった。


    「……はぁ。なんて、災難な一日だったんだ……」


    シンクレアは深く、深くため息をつき、重い腰を上げて帰路につこうとした。

  • 110ポチェモブ26/04/04(土) 23:53:40

    だが。


    ガシッ…

    突如、背後から冷たい手がシンクレアの肩をガッチリと掴んだ。


    「……え?」


    振り向くと、そこには。


    帰ったはずのクローマが、獲物を逃さない肉食獣のようなニヤリとした笑みを浮かべ、立っていた。


    「アハッ……こんな最高のチャンス、私が逃すわけないでしょ?」


    「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!?」


    クローマは有無を言わさずシンクレアの手を強く引き、そのままラブホテルの煌びやかなエントランスの中へと、彼を強引に引きずり込んでいった。

  • 111ポチェモブ26/04/04(土) 23:55:28

    一方、その頃。

    少し離れたネオン街を足早に歩いていたユースケは、夜空の向こうから、


    『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!! 誰かぁぁぁっ!!!』


    という、世にも恐ろしい絶望の慟哭が聞こえた気がして、ピタリと足を止めた。


    「…………」


    ユースケは数秒間沈黙した後、ポンッと手を打ち、


    「……うん。きっと気のせいだな。最近ちょっと耳鳴りがひどくてよ!」


    と、爽やかにしらばっくれて、足早に家路を急いだのだった。

  • 112二次元好きの匿名さん26/04/04(土) 23:56:39

    ユースケが終始チンカスすぎて笑ってしまう

  • 113ポチェモブ26/04/04(土) 23:59:33

    そして、翌日の昼下がり。


    「樋口ユースケェェェェッ!!! どこですかぁぁぁぁっ!!!」


    ヒグチ流剛骨術の道場に、文字通り『鬼の形相』と化し、全身から殺気を立ち昇らせたシンクレアが、扉を木っ端微塵に破壊して殴り込んできた。


    しかし、そこにユースケの姿はない。


    「……あー、悪いなシンクレア。ユースケなら、今ここにはいねえよ」


    壊れた扉の横で、力丸が申し訳なさそうにほうきを持っていた。


    「……どこへ行ったんですか」


    「『ちょっと命を狙われるかもしれないから、しばらく留守を頼む』って言って……とっくの前に、親父さんとハワイ旅行に行っちまったよ。」


    「…………ッ!!」


    道場に、シンクレアの怒りの咆哮が響き渡る。


    他人の恋路を盛大に勘違いして応援した結果、とんでもない地雷を踏み抜き、絶賛逃亡生活を送ることになったユースケ。

    彼が道場に帰れる日は、果たしていつになるのだろうか――。


    サブストーリー7『クソアマの瞳に恋してる』 END

  • 114二次元好きの匿名さん26/04/05(日) 00:02:48

    あざーす おもしれーよ

  • 115ポチェモブ26/04/05(日) 00:03:18

    最初はドンキホーテみたいなユースケと関わってちょっと成長したり良い方向に進むベタなストーリーだったってネタじゃなかったんですか


    ガチだよ、でも調べたらクローマーのキャラが面白かったから今回の話になったよ

  • 116ポチェモブ26/04/05(日) 00:06:00

    そして今日はここまでにするのんゴロンヤメロオオ

    思ったよりシンクレア編が掛かった&反応不全だからね、タイミング的には丁度良いのさ!



















    ラストの内海サブストーリーはもうちょい反応よこせ

  • 117二次元好きの匿名さん26/04/05(日) 01:29:15

    オツカレーッ 終始チンカス対応すぎて笑ってしまう

オススメ

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