高市首相の「ナフサは足りる」発言は無意味…避けられない「石油ショック」で日本が行き詰まる"最悪のシナリオ"
■最悪のシナリオは「高い石油」ではなく「止まる日本」 最悪のシナリオは、原油が高いことそのものではない。病院で必要な滅菌資材が細る。路線バスの燃料が偏在する。ごみ処理や包装資材が目詰まりする。企業は原料を確保できても、保険や船腹や通航許可が追いつかず、供給が面でつながらない。つまり、日本という国家の平常運転が、外部の許可と偶然の物流に左右される状態である。 戦前、日本は石油の9割以上を輸入に依存し、全面禁輸によって一気に戦略的選択肢を失った。歴史の教訓は、危機になれば戦争になるという短絡ではない。供給ルートを握られた国は、価格より先に選択肢を失うということだ。 「安ければ得」という論理は平時ではかなり正しい。だが、有事にはそれだけでは国家は回らない。いま日本が議論すべきなのは、ナフサが何カ月分あるかという数字の勝ち負けではない。次の船を、次の原料を、次の生活基盤を、どのルートで確実につなぐのか――その設計図こそが、これからの経済安全保障の本丸である。 ---------- 伊藤 隆太(いとう・りゅうた) 防衛大学校 共同研究員/戦略コンサルタント 防衛大学校共同研究員、NovaPillar Advisory LLC戦略コンサルタント、博士(法学)。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同大学大学院法学研究科後期博士課程修了。慶應義塾大学・広島大学助教、日本国際問題研究所研究員等を経て今に至る。Co-Chairs of the IPSA Research Committees (RC12)、APSA Committee of Best International Security Article等を歴任。単著論文はInternational Affairs誌に‘Hybrid Balancing as Classical Realist Statecraft’ (2022)、‘Hubris Balancing’ (2023)、International Relations誌に‘A Neoclassical Realist Model of Overconfidence and the Japan–Soviet Neutrality Pact in 1941’ (2023)、‘Outrage Balancing’ (2026)、単著研究書は『進化政治学と国際政治理論』(芙蓉書房出版、2020)、『進化政治学と戦争』(芙蓉書房出版、2021)、『進化政治学と平和』(芙蓉書房出版、2022)、編著研究書に『インド太平洋をめぐる国際関係』(芙蓉書房出版、2024)等がある。 ----------
防衛大学校 共同研究員/戦略コンサルタント 伊藤 隆太