寝ても覚めても株価が気になる 慢性的不安の解消法は?
個人投資家の健康&メンタルケア入門(1)
悩み① 日々の株価が気になって仕方ない
常に「損をするのでは」と不安です。寝ても覚めても株価が気になり、夜中にもたびたび目が覚めます。最近は投資判断も鈍ってきている気もします。先日、大損した時にはショックから立ち直れず、証券口座を見るのも嫌になり、おまけに会社を1週間休んでしまいました。
回答者
投資には3つの悪条件があると考えます。まず「不安と自責にさいなまれやすい」こと。投資には「損をするのではないか」という不安は付き物でしょう。実際に損をした時には「正しい判断ができなかった」という自責の念も生じがちです。
2つ目は「独りで判断も反省もしなければならない」こと。私は自衛隊に属していました。戦場でも不安は付き物ですが、指揮官には相談するスタッフが必ずいます。不安や判断ミスを独りで抱えこまない仕組みが作られています。
3つ目は「情報に24時間さらされる」こと。のめり込むと膨大な情報と1日中格闘することになり、どうしても睡眠不足になります。
これら悪条件に耐えながら投資を続けると「疲労」がたまります。私は疲労によって心身に生じる悪影響を、蓄積レベルに応じて3段階に分けて説明しています(図1)。
1段階の疲労は気晴らしをするといった対処ですぐ回復します。しかし2段階に進むと、同じ事象に起因する不安でも1段階の2倍程度(2倍モード)に感じます。
表面上は仕事もこなせますが、同時に「死にたい」といった気持ちが湧いてくる人もいます。大げさだと思うかもしれませんが、人は簡単にそのような状況に陥るのです。3段階に進むと不安感や自責の念、仕事の負担感なども3倍(3倍モード)になり、心身に様々な「症状」が現れます(図2)。
問題は2段階以降になると、人は正常な判断ができなくなることです。お金は「自信」に直結します。損をすると、削られた自信を取り戻そうと前のめりになる人は多いのです。絶対に今ここから離れては駄目だと投資にしがみつき、鈍った判断力で悪手を重ねていきます。
判断力を失い、投資にしがみついているような人には、私だったら「取りあえず1週間、投資から離れること。そしてたっぷり睡眠を取りましょう」と助言します。
戦場でも3倍モードに至った隊員は安全な所に移し、3日間ただ眠らせます。過剰な不安が収まり、3倍から2倍に、そして1倍モードに戻れば正常な判断ができるようになります。正常な判断ができなくなったら、一旦、戦場を離れる以外に対処方法はありません。
ショックを受けて落ち込む自分を認める
投資は1倍モードで取り組んでください。のめり込んでしまいがちな人は、予防策として時間枠を決めることをお勧めします。
自分の体力は自分では把握しにくいもの。代わりに「投資に使う時間は1日○時間まで」と決め、時間になったらスパッと離れる。投資から意識をそらす自分なりの気分転換法も編み出しましょう。動画鑑賞でもゲーム(課金モノは避ける)でも散歩でもいい。投資に使う時間をコントロールすれば1段階での投資を継続できます。
人が3倍モードに至る理由には、疲労の蓄積の他に「予期せぬショック」があります。これは私の専門分野の一つで「惨事反応」と呼びます。惨事反応とは身近な人を突然失った時の状態をイメージしてください。
投資での予期せぬ大損も「惨事」です。大きなショックを受けるでしょう。そのような時は、ひとまず損切りなど必要な対処を終えたら、1週間程度はじっとしていることをお勧めします。仕事に身が入らない、投資情報に触れたくなくない。それで大正解、非常に正しい対処法です。人間は大きなショックを受けたら受け身を取るものです。「自分は株式投資に人生を懸けていたからショックを受けているんだな。今はショックを受けて受け身を取ってるんだな」と受け入れてください。
また、2倍モードの時には他人のアドバイスは受けない方がよいでしょう。戦略ミスを指摘されたら、自責感が刺激されたり不安をあおられたりするだけです。今回の投資行動を振り返るのは、十分な睡眠によって判断力を回復した1倍モードになってからです。
(ライター 柳本操)
[日経マネー2023年8月号の記事を再構成]
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