自衛隊の影響力が自民党のために行使された

 ところで自衛隊法施行令の規定は、一般職の国家公務員に適用される「人事院規則」を下敷きにして作成されている。

 そのため両者の法的な立て付けは基本的に共通している。

 人事院規則の運用方針が大いに参考となるはずだ。令和4年2月18日に最終改正された「人事院規則14-7(政治的行為)の運用方針について」には、国家公務員の政治的行為の制限の目的が明確に記されている。

 同方針によれば、「国の行政は法規の元において民主的かつ能率的に運営されることが要請される」としたうえで、「その運営に携わる一般職に属する国家公務員は国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持することが必要である」と述べている。

 国の行政は、法規の下において民主的且つ能率的に運営されることが要請される。従つて、その運営にたずさわる一般職に属する国家公務員は、国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持することが必要であると共に、それらの職員の地位は、たとえば、政府が更迭するごとに、職員の異動が行われたりすることがないように政治勢力の影響又は干渉から保護されて、政治の動向のいかんにかかわらず常に安定したものでなければならない。又、この規則による政治的行為の禁止又は制限は、同時に、他の職員の側からするこれに対応する政治的行為をも合せて禁止することによつて、職員がこれらの政治的行為の禁止に違反しないようにすることが容易に達せられるようなものでなければならない。この規則は、このような考慮に基き、右の要請に応ずる目的をもつて制定されたものである。従つて、この規則が学問の自由及び思想の自由を尊重するように解釈され運用されなければならないことは当然である。
(人事院「人事院規則14―7(政治的行為)の運用方針について」より引用)

 また、職員の地位が政治勢力の影響や干渉から保護され、政治の動向に関わらず安定したものでなければならないとも記されているのである。

 自衛隊員は一般の国家公務員とは異なる特別職国家公務員であるが、前述のように実力を有する組織の構成員である以上、これらの原則を前提としながら、一般の国家公務員よりさらに慎重でなければならない立場にあると考えられるだろう。

 運用方針の理念を尊重し、自らの行動が国民全体の奉仕者としての立場を損なっていないかを常に自問自答することが求められるはずだ。

 さらに重要なのは、同運用方針における「影響力の利用」に関する解釈である。運用方針では、「職員が国家公務員としての地位においてであると、私人としての地位においてであるとを問わず、政治的目的のために自己の影響力を利用する行為を政治的行為としてこれを禁止する趣旨である」と明記されている。

 加えて、「利益の提供」という禁止事項には、有形の利益だけでなく「無形の利益」も含まれるとされている。

 つまり、勤務時間外であるか否か、私人としての参加であるか否かは免罪符にはならないのではないか。

 というのも、 「自衛隊員である」という事実が社会に与える無形の影響力、あるいはその属性が政党の権威付けに利用されるという無形の利益の提供こそが問われているのである。

 仮に自衛官の制服を着ていなかった場合においてさえ、参加者に広く自衛隊員というその身分が認知され、業務か否かにかかわらず国歌斉唱のリードという特別な役割を付与された時点で、すでに自衛隊という実力組織の影響力が特定の政党のために行使されているとも見なせそうだ。

 こうした細かい条文や運用方針を並べて読んでいくと、政府や擁護論者が主張する「法的に問題ない」という見解が、いかに浅薄なものであるかが浮き彫りになるはずだ。