第93回自民党大会で行われた国歌斉唱。陸上自衛隊中央音楽隊の鶫真衣3等陸曹が務めた=2026年4月12日、東京都内(代表撮影、写真:共同通信社)

実力組織が特定の政治勢力と結びつくことの危うさ

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 先日実施された自民党の党大会において、自衛隊員が国歌斉唱をリードしたことが物議を醸している。防衛大臣や政府関係者らは当初「法的に適切だが、政治的に問題」といった趣旨の発言を繰り広げていたが、徐々にトーンを落としている。

 当初、政府はこの行為を容認しつつも、国民やメディアからの批判が高まるにつれて、その見解を曖昧なものへと変化させていった。

 防衛大臣や政府関係者が当初用いた「法的に適切だが、政治的に問題がある」といった表現は、そもそも詭弁に等しい。

 しかし、「法的に適切」「政治的に問題」という評価を下すとき、その主語が誰であるかが問われなければならないのではないか。

 許可した防衛省や自衛隊の問題なのか、それとも政治的偏向の懸念を生じさせた自衛隊員自身が問題の主体であるのか、それとも現役の自衛隊員を党大会という政治的な場に招き入れた自民党という政党が問題の主体であるのか、明確ではない。

 この点を明確にしないまま/しないからこそ、政府は批判をかわすために、この表現を用いたようにさえ思えてくる。

 だとしたら、それはなぜか。

 本件周辺にはいったいどのような問題があるのだろうか。本稿ではこの問題を取り上げてみたい。

 ここで、改めて自衛隊員の政治的行為を規制する法的な枠組みについて、具体的な条文を踏まえて確認しておく必要があるだろう。

 自衛隊法第六十一条第1項は、「政治的行為の制限」について次のように定めている。

(政治的行為の制限)
第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
 2 隊員は、公選による公職の候補者となることができない。
 3 隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。(「自衛隊法」より引用)

 この条文は、自衛隊員が特定の政党や政治的目的のために活動することを禁じている。

 一般の国家公務員に対しても国家公務員法で政治的行為の制限が設けられているが、自衛隊における制限の意義がさらに重いことは言うまでもない。当然、より厳しく慎重な規律に服し、自重も求められよう。

 自衛隊は、国家の防衛を任務とし、重火器などの強大な実力を保有する実力組織である。

 実力組織が特定の政治勢力と結びつき、その影響下において党派的な行動をとることは、民主主義の根幹である文民統制を根底から揺るがす危険性を秘めていることは言うまでもない。実力組織が政治的中立性を失えば、国家体制そのものを脅かす事態に発展しかねないというのが歴史的な教訓だ。

 したがって、自衛隊員に求められる政治的中立性は、一般の公務員以上に厳格かつ慎重に運用・解釈されなければならない性質のものであることは改めて確認しておきたい。