【ロンドン=黒瀬悦成】北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は5日、NATO加盟国であるトルコの上空に4日飛来したイランの弾道ミサイルをNATO軍部隊が撃墜したことに関し、加盟国への攻撃をNATO全体への攻撃とみなして反撃する北大西洋条約第5条の発動要件には当たらないとの見方を明らかにした。ロイター通信のインタビューに答えた。
トルコ領空にミサイルが飛来したのは米国とイスラエルによるイラン攻撃後初めて。ミサイルは東地中海に展開していたNATO軍部隊が撃墜。残骸はトルコ南部に落下し、けが人などはなかった。
事態を受け、NATOは5日全ての加盟国の弾道ミサイル防衛態勢を強化したと発表した。態勢強化はイランによる周辺諸国へのミサイル攻撃が終了するまで続くとしている。
ルッテ氏はトルコへの攻撃を「明確に非難する」と述べた上で、第5条の発動については「(加盟国の)誰も言及していない」とした。また、「重要なのはNATOが強力で警戒を怠っていないことを敵に見せつけたことだ」と語り、「NATOの領域を隅々まで防衛する」と強調した。
トルコ南部のインジルリク空軍基地には米軍が駐留している。地中海の島国キプロスの英軍基地もイランによる無人機攻撃を受けており、戦火が欧州に拡大する懸念が高まっている。
ルッテ氏は一方、フランスのマクロン大統領が欧州防衛の強化に向けて欧州諸国に拡大抑止(核の傘)を提供すると表明したことについて「真に歓迎する」とした。
同時に、第二次世界大戦後の欧州で自由や民主主義が守られ、「私たちの生き方を究極的に保証したのは米国の核の傘だ」と指摘。フランスによる拡大抑止の提供表明について、米国の拡大抑止への疑念が出ている表れであるとの見方が欧州の専門家らの間で出ていることに関し、「米国はNATOに全面的に関与している」と強調した。