ひきこもり支援条例案を埼玉県議会が可決 背景に「引き出し屋」

川野由起
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 ひきこもりの当事者やその家族、支援団体を支える埼玉県の条例案が可決された。条例案を提出した自民党県議団によると、ひきこもり支援を目的とした条例は全国で初めてという。孤立しやすい当事者や家族が、安心して支援を受けられる環境の整備をめざす。

背景に「引き出し屋」の存在

 「県ひきこもり支援に関する条例」案は25日の県議会で、全会一致で可決された。ひきこもり当事者の意思を尊重しつつ、身近な場所で支援を受けられるようにすることを基本理念にしている。県の責務として、市町村や民間支援団体との連携などを定めた。

 厚生労働省は、ひきこもりを「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義している。

 条例の背景にあるのは、自立支援業者を名乗り、当事者を自宅から暴力的に連れ出す「引き出し屋」の存在だ。条例案をとりまとめた自民党県議団によると、引き出し屋に無理やり連れ出された人を入れる寮が県内にもあったという。

 当事者やその家族が悪質な業者にだまされ、トラブルに発展することを防ぐとともに、行政窓口や民間支援団体とつながりやすくすることをめざす。

 県の推計では、県内の15~39歳の3・3万人、40~64歳の3・7万人がひきこもり状態にあり、各年代の約1・5%を占める。これは、2018年に内閣府が実施した全国調査などをもとに、ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する人なども含めた「広義のひきこもり群」に当てはまる人数を算出したものだ。

 県内にある民間の支援団体は約10団体と少ない。条例をきっかけにして、支援団体の増加や活動の活性化も期待している。

「自治体・企業・地域 一体で取り組みを」民間団体

 民間の支援団体による県内での活動には、多くの相談が寄せられている。「ひきこもりUX会議」が2月に所沢市で開いた会合には、約100人の当事者や家族らが集まった。

 会合では当事者らが「行政の支援は地域単位だが、地域で知られたくないという人が多い」「『どうにかしてあげたい』と周りが心配しがちだが、本人のペースを見守ってほしい」などと悩みを語り合った。

 ひきこもり経験がある入間市の男性は、支援する側の大変さにも思いを巡らせている。「支援団体は金銭的に余裕がなかったり、担当者が当事者や家族から非難されたりすることがある。条例では、支援する側の支援にも力を入れてほしい」と話す。

 自身もひきこもり経験がある同会議の林恭子代表は「ひきこもりには、不登校から障害、生活困窮、介護まで様々な問題が含まれる。相談しても、たらい回しになることが多い。横断的な行政の窓口をつくると同時に、自治体や企業、地域が一体で取り組む必要がある」と訴える。

内閣府が示した広義のひきこもりの例

・ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける

・自室からは出るが、家からは出ない

・自室からほとんど出ない

・ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する

※2018年の調査による。身体的病気や出産・育児、自宅で仕事をする場合などを除く

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この記事を書いた人
川野由起
くらし科学医療部
専門・関心分野
トラウマ、アディクション、社会的養育