ミュージシャンの布袋寅泰さんが4月11日にXで「未だかつて日本の首相がロックンロールと交わったことがあったか?素晴らしいことなんだよ」と投稿し、その後削除したとして波紋を呼んでいる。布袋さんの投稿は、同11日に来日中の英国のロックバンドのディープ・パープルが首相官邸を表敬訪問し、高市早苗首相と面会したことを受けてと思われる。
分かれる賛否。LOVE PSYCHEDELICO NAOKIさんはハッキリ否定
布袋さんの投稿にはXでさまざまな声が寄せられ、否定的な意見としては「ロックは反権力なのに」「ギタリストだと思ってたけど太鼓持ちだったんだな」「忌野清志郎を見習ってほしい」など投稿しており、また当該のポストを説明せずに削除したことについても不評なようだ。
布袋さんの発言を受け、音楽デュオ・LOVE PSYCHEDELICO(ラブサイケデリコ)のギター・ベース担当のNAOKIさんは4月13日、Xで布袋さんの投稿を報じた記事を引用し、「ハッキリ言っておきたい。全く素晴らしいと思わない。芸術に政府のお墨付きなんていらない」と明言した。
また、NAOKIさんは同じく13日に更新した別の投稿で、「ディープパープルをダシにすり寄って来る総理も、政府にすり寄ってくロックミュージシャンも好かん。先輩も重鎮も関係なく好かん」とキッパリ。その後、一般ユーザーからの質問に答える形で、「言葉が足りませんでした。今の日本政府にすり寄っていく日本のロックミュージシャンが好きではない、という意味です。ディープパープルはダシに使われて巻き込まれた被害者だと思ってます」と説明している。
一方、布袋さんの発言に肯定的なコメントは、否定的の意見に対する反論が中心のようだ。「権力に文句言うのがロックンロールだとしたら、政権担う政党が今の野党に変わったらそれも批判しろってこと?w」「あのポスト消したんか。 消さなくてイイのに、変なのがたくさん湧いたからな…」などと擁護していた。
世良公則さん、自民党大会で熱唱。以前より高市首相と交流
おりしも4月12日には、歌手・俳優の世良公則さんが自民党大会で特別ゲストとして出席。自身がボーカルを担当したロックグループ「ツイスト」の「燃えろいい女」の歌詞の一部を高市早苗首相の名前に変えて、「燃えろ、サナエ~♪」と歌い上げた。
世良さんと高市首相は以前から交流があり、高市首相が立候補した2021年と2024年の両自民党総裁選の期間中、それぞれ対談。高市首相が2025年の総裁選で自民党新総裁に選ばれた際には、Xで「日本のリーダーとしての高市早苗氏に期待しかない」と投稿していた。
世良さんはまた、2025年の参議院選挙に立候補し、落選。無所属で出馬したが、「自民党のステルスで票を割る為の刺客だと、SNS上で拡散されていると連絡がありました」「全くそのような考えはありませんし、お誘いも受けておりません」などと否定していた。
朝日新聞によれば、世良さんは落選当時、選挙に再び出るのかを問われて、「他の方を応援するという選択肢もある」と話し明言を避けた。今回の熱唱も、応援の一つととらえた人もいたようで、SNSでは「この非常時に何やってんの?」「こんなことまでやったのか」などと疑問視する声があがっていた。
政治家による芸能人イメージ利用
世良さんが参加した自民党大会の特別ゲスト枠に限らず、政権・政治家と著名人との関わりは、単なる交流の域を超えて、政権・政治家のイメージ戦略やプロモーションに利用されかねないという問題をはらんでいる。
例えば故・安倍晋三首相(当時)は在任中、出演番組のMCだったダウンタウンの松本人志さん、タレントの指原莉乃さん、社会学者の古市憲寿さんらとの会食が報じられたほか、アイドルグループTOKIOとの食事写真を自身のSNSに投稿。
またコロナ禍の外出自粛期間中の2020年4月には、歌手・星野源さんがSNSに投稿した楽曲『うちで踊ろう』に合わせて、自身が犬と戯れてくつろぐ動画をSNSに投稿するなど、著名人とのつながりやイメージを積極的に活用した政権・政治家といえるだろう。
2006年の第一次政権時に、首相官邸を表敬訪問したアイルランドのロックバンド「U2」のボノからサングラスを贈られたことも、今回のディープ・パープルの表敬訪問の類似例として挙げられる。
高市首相もまた、4月13日にタレント・プロデューサーのMEGUMIさんと対談した。テレビ朝日によれば、過去に出版した美容本がベストセラーになったMEGUMIさんに、高市総理は自身に似合う色やスキンケアについて関心を持って質問したという。対談は自民党の広報誌の企画で行われた。
芸能人やスポーツ選手などの人気者と親しくしている政治家の様子は、好感度アップにつながる場合がある。
なぜ政権は著名人との関わりを積極的に発信するのか。その思惑や受ける恩恵に対して、注意深くみる必要があるだろう。