新型コロナ「セミ」型に流行の兆し 3回目の大変異、日本で感染確認
新型コロナウイルスの変異型「BA.3.2(通称=セミ)」が世界で流行する兆しをみせている。2024年11月に南アフリカで初めて報告された当初は感染者数は増えなかった。26年に入り、日本など世界23カ国で事例が確認されている。
いったん潜伏した後、感染が拡大する様はセミの生態と似ており、通称はセミと名付けられた。セミは土の中で幼虫として数年間生息し、地上に現れる。
23カ国で検出
セミは南アフリカで24年に初めて検出された。25年4月に欧州で散発的に感染者が発生したものの感染地域は広がらなかった。ところが、25年9月ごろから感染が増え始めた。米国では25年末から26年年始にかけ採取された患者の検体から見つかった。米疾病対策センター(CDC)によると、26年2月11日時点で少なくとも世界の23カ国で検出されている。
日本では1月19日〜1月25日に都内の医療機関で採取された検体から感染を確認した。新型コロナは季節性インフルエンザなどと同じ「5類感染症」に分類されており、ウイルスの型を調べる大規模な調査はしていない。そのためセミの正確な感染者数は不明だ。
日本での確認後もセミは数多い変異型の一つだと見なされてきたが、ここにきて大変異を遂げた特徴などが注目を集め始めた。CDCの報告によると、セミは直近に流行した「JN.1」型の仲間と比べてゲノムを構成する塩基が70〜75個程度変化しているという。
世界保健機関(WHO)はセミを監視対象の病原体に指定した。一方でWHOは他の新型コロナウイルスと比べて、現時点で重症化のしやすさや入院の必要性、死亡者数の増加を示すデータはないとしている。
ワクチン利きにくい可能性
ただ専門家は今後、セミの感染者が増えると予測する。新型コロナは通常、夏と冬の2回流行しやすいためだ。またウイルス学が専門の東京大学の佐藤佳教授は「ワクチンを注射してできるウイルスを防ぐ抗体が効きづらい可能性が高い」と話す。
セミが20〜21年ごろのコロナ禍のピークのようにパンデミック(世界的な大流行)を引き起こし、人々の行動に制限がかかる事態になる恐れは少ない。ただ糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つ人や高齢者は特に感染に注意する必要がありそうだ。
中国の武漢が発生源とされる新型コロナウイルスは変異を繰り返し、感染者を増やしてきた。ウイルスが変異するのは、宿主の人が新たな免疫を獲得するためだ。ウイルスは変異して人の免疫機構をすり抜け、増殖しようとする。
ウイルス学が専門の東京大学の佐藤佳教授は、セミの前に流行したJN.1型について「進化的な袋小路に陥ったのではないか」と分析する。JN.1が生き残るのが難しくなったところに、潜伏して大きな変異を蓄積したセミが広がるようになった可能性がある。
潜伏して進化
佐藤教授はセミについて「誰の目にも触れずに進化して出てくることは誰も想像していなかった」と話す。いったん潜伏したウイルスが流行する事例は珍しい。
オミクロンが新型コロナの初期に流行したデルタにとって代わったように、変異したウイルスは、既存型をすべて置き換える感染力を持つことが多い。ただ、セミについては、「(今のところ)世界中で既存の変異を一気に置き換えるほどの感染力はもっていない」と佐藤教授は指摘する。
セミが今後さらに変異を重ね、感染力が高まったり重症化しやすくなったりするかどうかは予測できない。手洗いやうがいなど地道な感染症対策を続ける必要がありそうだ。
(藤井寛子、川原聡史)