昨日、何気なく『王妃の帰還』の新装版を手に取りました。


王妃の帰還 新装版 (実業之日本社文庫)
柚木 麻子
実業之日本社
2026-02-06


この作者の作品は『BUTTER』しか読んだことがなく、他の本はどんな感じなのかなと思って読み始めると、めちゃくちゃ面白くて一気読みしてしまいました。

舞台は、カトリック系のエスカレーター式の私立女子中学。

クラスの地味だけど平穏なグループに属する主人公の範子は、一軍のトップオブトップの滝沢さんがいじめの主犯としてクラス会で糾弾され、一軍から陥落するのを見てひそかに同情。しかし、なんと滝沢さんが範子の地味グループに加わることになり、範子の日常は揺らいでいき…!というあらすじです。

このあらすじだけだと、クラスの女子グループどうしの「人間関係の難しさ・苦しさ」をメインにしたドロドロストーリー、もしくはドタバタ毒舌コメディに思えてしまうかもしれませんが、そうではありません。

この作品には笑い・気まずさ・怒り・悲しさ・たのしさ、あらゆる読み味がギュッと凝縮されています。

冒頭、主人公の範子が心の中でひそかに「王妃」と呼ぶ滝沢さんがほんとうに性格が悪く、一人で読んでいる途中、普通に「フフっ」と笑ってしまいました。

滝沢さんが無理やり範子たちのグループのお出かけに割り込んできて、範子たち3人が仕方なく迎えいれ、その道中3人がいつものようにつげ義春ネタで笑いあってると、滝沢さんが、

「こんなオタクグループ、ほんとうは嫌なんだから!」
(柚木麻子『王妃の帰還』2015、実業之日本社、p60)

とぶちまけるシーンが良かったです。範子たちが、「自分たちはずっとそうやって思われてたのかな…」と思う気まずさがめちゃくちゃ好きでした。

こういうコメディともとれるような切ないシーンや女子のあるあるもありつつ、しっかりとした修羅場や人間関係の難しさに自分も一緒に悩んでしまう場面もあり、かなり上質なエンタメです。

私が何よりすごいなと思ったのが、一度他人を傷つけた人たちにリベンジをしてスカっとするような話ではないのに、物語にはたしかな爽やかさがあるということです。

『王妃の帰還』は人に対して間違った態度をとった人たちは報復を受けるのではなく、色んな人とかかわることで成長していきます。『花より男子』の道明寺も『ヒロアカ』の爆轟もまだ許していない私ですが、「人が変わるのを待つ・許容する」ということに素直に「いいな」と思えました。


あと、私は昔から「自分に近い人物や状況をずばり描いたフィクション」が読めないのですが(恥ずかしいやら、自分とは違うところが逆に目につくやらで「う~」と悶えてしまう)、28歳になったので中学生女子の切々とした日々を描いた小説を楽しめるようになりました。時間がかかった方かもしれません。

王妃の帰還 新装版 (実業之日本社文庫)
柚木 麻子
実業之日本社
2026-02-06





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