京都・男児行方不明 子どもの遺体発見で関連捜査 「消える子ども」は年1000人超 「社会の死角」から守るには
京都府南丹市の山中で子どもとみられる遺体が見つかった。南丹市では、3週間前から11歳の男児が行方不明になっている。事件か事故か――。現時点で断定できないが、「消える子ども」が年間1千人にのぼると聞けば、人ごとではない。子どもを守るにはどうすべきか。専門家は親子や環境を巻き込んだ「リスクマネジメント」を提唱する。 【写真】南丹市の山を捜索する府警の捜査員 * * * ■子どもの遺体発見、身元確認急ぐ 行方不明となっているのは、南丹市立園部小学校の安達結希(ゆき)さん(11)。3月23日午前8時ごろ、父親に同校の敷地内まで車で送り届けられた後、行方が分からなくなった。 京都府警は3月25日、安達さんの顔写真などをホームページで公開。情報提供を呼びかけ、大規模な捜索活動を展開した。計360件の情報が寄せられ、失踪6日後には同校の北西約3キロの山中でかばんが見つかった。だが、防犯カメラ映像など行方につながる有力なものはなく、捜索は難航していた。 子どもの遺体が見つかったのは4月13日。同校から南に約2キロの林道周辺で、京都府警は身元の確認を急いでいる。 実は、子どもの行方不明者は少なくない。警察庁の「行方不明者届受理等の状況」によると、2024年の1年間で、「行方不明者届」が出された人のうち9歳以下は1035人。過去5年間でも、1千~1100人台で推移している。原因・動機は「家庭関係」(35.7%)が最多で、犯罪被害にあったわけではない。大半の子どもは短期間で所在確認されている。ただし、家出した後に事件に巻き込まれるケースもあり、過小評価できない。
■13歳未満の誘拐被害は2年間で倍増 SNSの影響も 一方、事件に占める子ども割合はどれぐらいか。警察白書によると、「略取誘拐・人身売買」の認知件数は24年で588件。うち、13歳未満の子どもが被害者なのは217件(36.9%)にものぼる。件数も22年の120件から2年間でほぼ倍増だ。背景にはSNSを使った「誘い出し」の手口の広がりがあるとみられる。 子どもを狙った犯罪やトラブルは後を絶たない。事件が起きるたびに注意喚起がなされるが、それだけでは十分とは言えない。子どもを守るために何が必要か。 「犯罪の『原因』ではなく『機会』の観点から見ていくことが不可欠です」 そう語るのは、立正大学の小宮信夫教授(犯罪学)だ。 従来の犯罪研究は、加害者の性格や生い立ち、貧困といった「原因」に焦点を当てる「犯罪原因論」が主流だった。だが、裁判でも「なぜ犯行に及んだか」が解明されることはほとんどなく、動機の解明は犯罪防止に必ずしも直結しなかった。こうした限界から、欧米では1980年代以降、「犯罪機会論」へと舵(かじ)が切られた。 「どんなに原因を追っても予防にはつながりません。それより、犯罪が起きやすい環境を取り除くほうが有効だと考えられるようになったのです」(小宮教授) では、「犯罪が起きやすい環境」とは具体的にどこを指すのか。小宮教授は「入りやすく、見えにくい」場所だと言う。 「専門的には『領域性』と『監視性』と言い、犯罪の99%はこの二つのキーワードで説明できます」 例えば、子どもが路上で誘拐される事件の場合、小宮教授が調べたところ、100%ガードレールのない道路で起きていた。 「犯人は、言葉巧みに子どもを誘い出します。子どもの誘拐事件の8割が、だまされて連れ去られたケースです。だますには時間が必要ですし、子ども自身が自発的に車に乗る必要があります」(小宮教授) ■誘拐の8割は「連れ去り」 狙われる3大スポット ガードレールがない道路は、車を横付けしやすく、犯人にとって領域性が低い「入りやすい」環境になる。 2018年5月に新潟市で下校中の小学2年生の女児が男に車で連れ去られ、殺害される事件が起きた(最高裁で無期懲役が確定)。現場はガードレールがなく、しかも周囲から見通しの悪い、「領域性」と「監視性」がともに低い「入りやすく、見えにくい」場所だった。 小宮教授によれば、子どもを狙う犯罪者が現れる「三大スポット」があるという。(1)学校周辺(2)公園(3)団地――この3カ所だ。 「3カ所に共通するのは、いずれも『子どもが多く集まる場所』ということです。魚のいないところで釣りをしないのと同じで、犯罪者も効率よく標的を探せるところに現れます」 一般的に「人通りが少ない場所が危険」と考えがちだが、実際には子どもが多く集まる学校周辺や団地など、人の動きがある場所で犯罪は発生しやすい。犯罪者はその中で、子どもが一人になる瞬間を狙う。 1988年から翌89年にかけ首都圏で4人の幼い女の子を誘拐殺害した宮崎勤元死刑囚(2008年に死刑執行)も、団地や公園など子どもが集まる場所で犯行に及んだ。