目に映るアレもコレも、誰かが思いつき、誰かが作っている
園児たちが乗っている「あの」カート、旅館の部屋食で出てくる「あの」固形燃料、お菓子に入っている「たべられません」の袋……。
絶対に見たことがある「アレ」たちは、誰かが思いついて、誰かが作ったもの。その誕生のドラマに迫った『絶対に見たことがあるアレの正体、聞いてみた』(大和書房)から、「まえがき」を公開します。
昔、「世界は誰かの仕事でできている」という缶コーヒーのCMがあった。
俳優の山田孝之さんが、警察官や現場監督、農家、ラーメン屋など、さまざまな職業の人に扮して、働く人たちを応援するというものだった。誰かの仕事が他の誰かの仕事につながって、世界ができていくことを伝えていた。
あるとき、道を歩いているときにそのフレーズをふと思い出して、頭がクラクラしたことがある。
世界は誰かの仕事でできている。ということは、いま僕の視界に入っているすべてのもの、道ばたにある標識も、空に張り巡らされた電線も、歩道に敷き詰められたタイルも、誰かの仕事でできている……ということだ。
「えっ」と思った。標識や電線やタイルの裏側で、これを考えたり作ったり設置したりした誰かがいるんだ。
考えてみれば当たり前のことだ。でもそのとき僕は、なにげなく目にしていた景色に、急にたくさんの人たちの姿が見えたような気がした。そんな仕事の成果を踏んで歩いていいんですか……という気持ちにすらなった。頭がクラクラした。
『プロジェクトX』などのテレビドキュメンタリーでは、「巨大建造物が完成するまでの一大プロジェクト!」であるとか、「社内のはみ出し者たちで作ったチームが世界と戦う!」であるとか、壮大でドラマチックな物語が取り上げられることが多い。
それはそれで見始めるとグッと引き込まれ、気がつけばエンディングの「ヘッドライト・テールライト」が流れていたりする。でも世の中には、もっと身近なものを、身近な人たちが作るプロジェクトが、たくさんあるはずなのだ。だって、視界に入るアレもコレも、誰かの仕事なのだから。
この本は、生活の身近にある「アレ」の正体を聞いてきたものだ。
「アレ」というのは、ファミレスで店員さんを呼ぶボタン、お菓子の袋に入っている「たべられません」の袋、保育園児がたくさん運ばれているカートなどなど。言われてみれば「あ~アレ!」と頭に浮かぶものばかり。
でも、そんな「アレ」のことを、僕らはどれくらい知っているだろう。どんなきっかけでアレを思いついたのか、完成するまでどんな苦労があったのか、どんな理由で名前がついたのか、アレを作る前は何を作っていた会社なのか……。
こうして考えてみると、知らないことばっかりである。身近すぎて空気のような存在になっているから、なおさらアレについて深く考える機会もないんじゃないだろうか。だからといって、ネットで検索したりAIに聞いたりして、「ふ~ん」とわかったつもりになるのも、なんか違う気がする。
というわけで、「アレ」を作った会社を訪れて直接話を聞き、ウェブメディア『デイリーポータルZ』に記事を書いてきた。それをまとめたのが本書である。新幹線で取材先まで出かけたものもあるし、コロナ禍でオンライン取材をしたものもある。そしてなんと、この本のカバーができるまでを聞いたものもある。
話を聞いて思うのは、どの「アレ」にも誰かに話したくなるような発見やドラマがあるということ。今だから笑える失敗談、起死回生のアイデア、信じられないようなミラクル、アレに関わる人ならではの職業病……。毎回、取材では「へ~!」と言いっぱなしで、写真を見返しても「へ~!」という顔ばかりしている。「へ~!」1回につき罰金5000円だったら、預貯金がなくなっているだろう。そんなルールがなくてよかった。
世界は誰かの仕事でできている。いまあなたの目に映るアレも、コレも、誰かが思いつき、誰かが作っている。
アレの正体を聞くことで、「誰かの仕事」が「あの会社のあの人の仕事」になったらうれしいです。
園児たちが乗っている「あの」カート、
旅館の部屋食で出てくる「あの」固形燃料、
スーパーで「ポポ~ポポポポ」と聞こえてくるアレ、
お菓子に入っている「たべられません」の袋……
作ってる会社に聞きに行ったら、スゴかった!!!!
ライター・井上マサキが、様々な「アレ」を生み出した企業・工場に潜入取材。
「デイリーポータルZ」の人気連載を書籍化、
子どもから大人まで楽しめる新感覚お仕事ルポ!
▼著者本人による解説
▼大和書房のHP
▼Amazon
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