生きるのがしんどいと感じている小中高生のうち、こうした気持ちの相談先として「生成AI」を選ぶ児童生徒が半数に上ったことが、NPO法人の実態調査で分かった。厚生労働省によると、令和7年の確定値で小中高生の自殺者数が538人となるなど過去最多を更新。法人の代表は「生成AIはあくまで補助的な存在で、具体的な支援につなげる必要性がある」と危機感も示す。
調査はNPO法人自殺対策支援センターライフリンク(東京)が実施。同法人が運営する、生きるのがしんどいと感じている人のためのオンライン空間で2月3日からの2週間、利用者約2200人を対象にした。
その結果、「死にたい」「消えたい」といった気持ちの相談先として生成AIと回答した小中高生が50%となった。友達(19%)、各種相談窓口(18%)と続き、家族や先生など「身近な大人」と回答したのは14%にとどまった。
生成AIを相談先として選ぶ児童生徒の割合は昨年8月の前回調査よりも、増加傾向がみられ、同法人の担当者は「相談相手としてより浸透しつつある」と話す。
生成AIに相談する主な理由として「意見を否定されない」「気を使わなくていい」「秘密が守られること」-などを挙げた。人でないため相談することで虚無感やむなしさを感じる声も一部見られたものの、「気を使わなくていい」など肯定的な意見も見られたという。
こうした状況について同法人は、生成AIを活用した、相談窓口の「入口」の拡充を目指す必要があるとしながらも、「AIへの相談はまだ多くの課題やリスクがある。あくまで補助的な存在でもあり、具体的な支援策につなげることが重要だ」とした。
生成AIへの相談をめぐっては、トラブルもたびたび発生。昨年11月には、米国で生成AI「チャットGPT」が自殺の指南役になったとして、大学院生など4人の遺族らが開発元のオープンAIらを相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたことが明らかになった。
奈良大社会学部の太田仁教授(対人心理学)は生成AIへの相談について、「自分の思考を整理し、感情を落ち着かせる上で有効だが危険性も伴う」と指摘。肯定的な返事をしてくれるが、危機介入の専門家ではないとして「過度な利用は、AIにしか相談できないという依存も引き起こす可能性がある」と話す。AIに相談する小中高生が増加していることにも言及し、「教員などの周りの大人はAI以外の相談窓口の周知に努める必要がある」と強調した。
話しやすさ。24時間対応…生成AI 自治体での活用も進む
人間相手の相談で生じる気遣いが不要であったり、時間や場所を問わず、即座に対応が可能であったりといったメリットを活用し、全国の自治体で相談窓口にAIを活用する動きが広まりつつある。
愛知県豊田市では昨年8月から3カ月間、心の相談に対応するAIの窓口を試験的に導入。学校や仕事などを理由に平日の日中に相談が難しい人を想定し、24時間相談ができるようにした。
導入された窓口では、チャット形式でAIが利用者の話を傾聴し、気持ちの整理を支援。有人相談を希望する場合には、市の相談窓口などが案内されるような仕組みだ。同市保健支援課の担当者は「普段対応ができない夜間にも多くの利用が見られた」として、今後の導入も検討しているという。
また奈良市でも相談対応の多い「子育て」に限定し、AIを活用した相談サービスの実証実験を3月末まで行った。
通信アプリ「LINE(ライン)」の公式アカウントのトーク内で、生成AIの「AI(あい)ちゃん」が返答。緊急の際には担当部局につなげるほか、やり取りの中で「虐待」や「自殺」といった深刻な言葉が出た際には、有人対応に切り替わる仕組みを採用した。
同市では子育てに関する相談件数が増加傾向にあり、相談窓口の拡充が課題となっていた。担当者は「予想以上に利用が多く、チャットを通じて解決したケースもある。相談員の人材不足の解決にもつながっている」と話した。(堀口明里)