研究不正ロンダリング——「不正研究者データベース」論争が照らし出すアカデミアの闇
朝目覚めたら、科学界で重要な論争が始まっていた。
きっかけはScienceだ。
2026年4月9日、世界最高峰の科学誌Scienceに一本の社説が掲載された。
著者はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の元幹部マイケル・ラウアーと弁護士のマーク・バーンズ。その主張は明快だった——研究不正(捏造・改ざん・盗用)やハラスメントを行った研究者が、調査の途中で退職し、新たな雇用先でまた不正を繰り返す構造的問題がある。これを断ち切るために、医師向けの「National Practitioner Data Bank(NPDB)」に倣い、研究者版の全国データベースを創設すべきだ、というのだ。
研究不正を無効化する「ロンダリング」を許すな、逃げ得を許すなというわけだ。
データベースには、データ捏造・改ざん・ハラスメント等で不正が認定された研究者の記録を登録し、研究機関が採用前に照会できるようにするという構想だ。
同日、Natureもこの提案を報じた。
しかし、Natureの取材に応じた研究者たちの意見は真っ二つに割れた。
この論争は、遠いアメリカの話ではない。日本の研究現場にも、まさにこの問題の典型例が存在する。有料部分で詳しく論じたい。
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このマガジンでは、“めずらし医“である病理医の中でもレア中のレアなフリーランスの病理医からみた病理診断、医学界の話、研究者になることに挫折し学士編入学を経て医師になった者から見たキャリアの話、そして「科学ジャーナリスト賞」受賞者の視点から見た科学技術政策の話の3つの内容を中心に綴っていきます。創刊以来毎日更新を続けています。
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