(社説)東大病院汚職 閉鎖性を解消できるか
東京大学医学部付属病院の元教授が収賄罪で起訴された事件などをめぐり、大学の対応を検証していた第三者委員会が報告書をまとめた。大学が内部通報で事案を把握してから調査結果の公表まで約1年4カ月を要したことに対して「組織全体の自浄作用が著しく不足」と指摘した。
報告書などから、閉鎖的体質や縦割り構造が浮かび上がる。長年の慣習や組織風土は一朝一夕に変えられるものではない。たえず情報を公開し、説明責任を果たしていく必要がある。
舞台となったのは外部資金をもとに共同研究に取り組む「社会連携講座」。元教授らは、相手方の団体の代表(贈賄罪で起訴)から1年半、高級飲食店や性風俗店で定期的に接待を受けていた。
報告書によれば、2024年9月に金銭の支払いなどに関して内部通報があり、領収証や写真、画像が提出されていた。にもかかわらず、翌年5月にテレビ局が報道するまで、藤井輝夫総長ら大学本部が内部調査を進めるための具体的な指示をした形跡はみられず、結果として公表は元教授が逮捕された後の今年1月下旬にずれ込んだ。
大学側は、警察から調査を差し控えるよう要請を受けていたことを理由に挙げたが、委員会は「組織の自浄作用と説明責任の放棄に他ならない」と断じ、社会的信用の毀損(きそん)に対する「危機意識の不足」を指摘した。
大学からの問い合わせに元教授は「性風俗店に行ったのは性感染症の研究目的」と弁明し、本来なら率先して事実解明に当たるべき医学部長も会議の場で「性感染症の調査のためだったと聞いている」「相手方にも問題があった」などと発言。複数の関係者が違和感や不適切さを感じつつも、異議は出なかったといい、対応が遅れた理由に「隣の研究室の事情に干渉しない文化」の存在を挙げた。
ずさんな資金管理や講座設置までの不明瞭な経緯も明らかになっており、改革の一環として大学本部が付属病院の運営に直接関与するというのもやむをえない。ただ、執行部に権限が過度に集中し、研究や人事に直接介入するようになれば、学部の独立性や学問の自由を脅かしかねないことには注意が必要だ。
文部科学省の有識者会議では「国際卓越研究大学」の認定をめぐる審査が続く。藤井総長は認定に強い意欲を見せる。だが巨額の公費が投入される以上、慎重な審査が必須だ。一連の改革や再発防止策の実効性を見極めた上で結論を出すことが求められる。