萬燈先生に触れられると、自分が溶けていくような錯覚に陥る。
「見えるところには痕をつけないように気をつけてよ?」
……この言葉は、少し、嘘だ。
人目に触れる場所さえ死守できれば、服の下などどう無惨に汚されようとも構わない。むしろ、他人には決して見えない場所を、この人の執着で徹底的に食い荒らされたいのだ。
そんな浅ましい本心が、俺の内側でどろりと溶け出していることに、先生は気づいているのだろうか。それとも、気づいた上でこの前戯を長引かせているのか。
先生が低く喉を鳴らして笑い、鎖骨に熱い舌を這わせる。
じゅ、と、耳朶を打つ淫らな音が、薄氷のような俺の理性を一枚ずつ剥いでいく。
いっそ、このまま快楽の底まで堕ちきってしまえばいい。そうすれば、「もっと俺を壊して」と無様に強請ることだってできるのに。
……どうして俺は、最初から淫らになることができないのだろう。
この男に貫かれるその瞬間を、俺はこんなにも待ちわびているというのに。
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