人間の「一夫一妻制」はもう限界なのだろうか?─自然界から見てみると、それも進化なのかもしれない
自然の摂理へ近づいている可能性
2025年5月に英国で1000人を対象に実施された調査では、31%がモノガミーはもはや「現実的な規範ではない」と回答した。18〜24歳の回答者の場合は、42%に上っている。調査会社「YouGov」が2023年に実施したより規模の大きい調査では、「人間は生まれつき一夫一婦制か否か」という設問に対し、イエス・ノーの回答の割合はほぼ同じだった(「わからない」と回答した人も3分の1だった)。 こうした状況は、保守派にとっては言うまでもなく悩ましいものだろう。善良なキリスト教の価値観と伝統的な家族の形が崩壊しつつある証しである。ただ、モノガミーに対するこうした現実はたしかに気がかりではあるが、社会による自然の摂理に対する反抗の表れというよりも、むしろ自然の摂理へと近づいていっている可能性がある。 2025年末、英ケンブリッジ大学は、モノガミーについて人間とほかの哺乳類とを比較した研究結果を発表した。「一夫一婦制を守っている哺乳類ランキング」とも言えるこの研究では、35の種を対象に「片親だけが同じ」きょうだい、ならびに「両親が同じ」きょうだいの比率をもとに順位付けした。人間は余裕でトップ10入りを果たしたものの、1位ではなかった。 それどころか、順位ではアフリカのサバンナで暮らすリカオン、南米のクチヒゲタマリン、ヨーロッパビーバーに負け、「モノガミー率」ではシロテテナガザルとミーアキャットをわずかに上回る程度だった。 35種中で最下位となったのはスコティッシュ・ソアイヒツジだが、これは雌のヒツジが複数の雄のヒツジと交尾するという生態があるからだ。1位に輝いたのはカリフォルニア・シロアシマウス。つがいになると、死ぬまで添い遂げる動物である。
人類のモノガミーの歴史は浅く、少数派
この結果から私たちは何を学べるのだろうか。幸せで長続きする結婚の秘訣をビーバーに尋ねるべきか? 伝統主義者は、カリフォルニア・シロアシマウスをモノガミーのマスコットにすべきか(実際、マスコットにふさわしいかわいらしさだ)? 婚姻関係から解き放たれようとするのは、人間という種の根源的な性質に反した行為なのだろうか? ケンブリッジ大学の研究によれば、モノガミーは「人間という種にとって支配的な交配パターン」だという。しかし、研究で得られたこの知見は当然ながら限定的で、そのまま当てはめることはできない。これついては、論文の著者で、ケンブリッジ大学で進化人類学を研究するマーク・ダイブルも認めている。 この研究で測定されたのは、生殖におけるモノガミー、つまり、一つの個体が複数のパートナーとの間に子供をもうけるか否かだ。これは、「ほとんどの哺乳類において交尾と生殖が密接に結びついている」ことが理由にある。ところが、人間はずっと前から、そうした制約に縛られることなく存在してきた。避妊という技術が誕生して以降はなおのことそうだ。 他の動物と違い、人間は性的関係または恋愛関係を持つ際、複雑な文化的規範の影響を必ず受けてきた。そもそも結婚自体、30万年という長い人類の歴史のなかでは比較的新しい慣習で、およそ4300年前に始まったと考えられている。女性を男性に縛りつけ(女性は長く男性の所有物だった)、父子関係を確実なものとして男系の血筋を守る役目を果たしてきたのが結婚だ。 8世紀になると、キリスト教が結婚という制度に関与し始めた。その後は、国家が結婚にさらなる責任を課し、個人間の結びつきを規制して財産や遺産を管理するようになった。 生殖のためであれ何であれ、モノガミーがこうした「パートナー関係」を巡る紆余曲折のなかで担保されたことは一度もなかった。また、男女に対するモノガミーへの期待が常に平等だったわけでもない。歴史を振り返ってみると、不貞行為を働いた人が受ける社会的・個人的な制約や報いは、男性より女性のほうが深刻だったことは言うまでもない。 それに、パートナー関係の形成と生殖について西洋的な見方だけに注目していると、人間社会に存在する膨大な多様性を切り捨ててしまうことになる。2013年の研究では、モノガミーを厳守する社会はわずか17%と報告されており、世界のなかでは少数派なのだ。 ケンブリッジ大学の研究でダイブルが指摘しているように、私たち人間は「結婚と離婚を次々と繰り返すシリアル・モノガミー」から「長期的に安定した一夫多妻制」まで、さまざまな形のパートナー関係を編み出し、そのいずれの場合でも、責任を持って子供を育てる環境を整えてきた。
Elle Hunt