「はぁ...全ッ然だめ...!!」
今日も私はレッスン室で溜息をつく
昨日の試験もギリギリ3位に滑り込み、最後に1位を取れたのはどれくらい前だったろうか。
だから次こそ1位を取るためにもっと練習して、練習して、練習してるってのに...!!
「前より酷くなってる...」
唯一の武器だったダンスのキレがどんどん悪くなっている。
原因はわかっている、パフォーマンスに迷いがあるからだ。
どう踊りたいのか自分自身が思い描けていないのだからキレが出るはずもない、だけど...
「これ以上どうすればいいのよ...!!」
どれだけレッスンしても、どれだけ試験を受けてもまるで上達している実感が出ない。
中等部の頃は違った、努力すればするほどアイドルとしての実力が付いてくる実感があった。
これから先も実力を付けていって、いつかはトップアイドルになれると希望を持っていた。
だけど、高等部になってからアイドルとしての技量は上がるどころか現状維持すらままならなくなっている。
このまま停滞し続けて、初星学園を卒業することになったら、その先は...
...
「やめやめ!こんなこと考えても仕方ない!」
このままレッスンを続けても身にならない、気分転換をしよう。
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「よーし!いっちょ走りますか!」
レッスン室の片付けを終え、お気に入りのランニングコースに来た。
ネガティブな感情に押しつぶされそうになった時は思っきり走るのに限る。
不安で埋め尽くされた頭の中を塗り変えてくれる上に体力もついて一石二鳥だ。
ウォーミングアップも済み、走り始めようと思った矢先...
「ん...?あれは...」
「はあっはあっ」
「1番会いたくない時だってのに...」
「あっ〇〇さん、お、お疲れ様です...!!」
「うん、お疲れ」
彼女の名前は葛城リーリヤ。ただのクラスメイト、それだけだ。会ったら挨拶する程度の仲でしかない。
「今からランニングですか?が、頑張ってください...!!」
「ありがと、凄い汗かいてるけどどれくらい走ったの?」
「えーっと、20キロぐらい...?」
「20キロ!?走りすぎでしょ!?」
「考え事しながら走ってたらつい...
それに、私は他の人よりスタートが遅いからその分多く走らないといけませんから」
「そっか...」
...私は正直、この子を妬ましく思っている。
高等部からの入学なのにすぐにプロデューサーがついて、メキメキと頭角を現し、今ではNIR優勝の注目株。
初の最終試験で足踏みしている私とはえらい違いだ。
勿論、NIR優勝は運で得られるようなものじゃないし、前にライブを見た時に葛城さんがどれだけ努力しているのかは伝わって来た。
だけど、私だって...
「NIRで優勝したのに、まだ遅れてると思ってるんだ」
「えっ」
...しまった、つい意地の悪い質問をしてしまった。
「...ごめん忘れて、私そろそろ走りにいくね」
これ以上話したら駄目だ、葛城さんに嫌な思いをさせてしまう。
「...はい、思ってます。」
「...えっ?」
葛城さんが私の目を真っ直ぐ見つめて言葉を紡ぐ。
「NIRで優勝出来たのはファンの皆さんの応援とセンパイのお陰で私自身はまだまだ未熟ですから」
「...」
目を見ればわかる、決して謙遜しているわけでも卑屈になっている訳でもない。
自分の現状を正しく認識し、次を見据えているんだ。
...私とは大違いだ
「そう、葛城さんは凄いね」
「そんなこと、、〇〇さんだって凄いですよ」
「私の?何処が、、」
凄いところなんてあるはずもない
私はクラスメイトの躍進を妬んで、嫌味を言ってしまうような女なのだから。
「ダンスの表現、毎回変えてますよね?
私はいつもワンパターンなので憧れます...!!」
...!?
「えっ!?い、いつ見てたの?」
「見れる時はいつも見てますよ、昨日のライブも見てました...!!」
「...気付かなかった」
3位のライブなんて数分足らずだし、見てる人だって疎らなのに。
...上手く踊ることに固執して、ライブを見てくれてる人たちのことなんて気にしてなかった。
「私ももっと上手くなりたいんですけど中々上達しなくって...」
「...驚いた、葛城さんも躓くことってあるんだね」
「躓いてばっかりですよ、だから沢山練習しないと」
...葛城さんもそうなんだ、そりゃそうだよね。
1度も躓かずに羽ばたけるアイドルなんて居るわけがない。
...
よしっ!
「葛城さんはもう帰るの?」
「はい、本当は少しダンスのレッスンをしたいんですけどセンパイにバレたら怒られちゃうので...
ただでさえ予定よりも走り込んじゃったから...」
「そっか。あのさ、もし葛城さんが良かったら私のダンスレッスン付き合ってくれない?勿論見てくれるだけで大丈夫だから。」
「えっ?大丈夫ですけど、これから走るんじゃ...?」
「気が変わっちゃった、今はダンスを頑張らないと」
思い返すと、最近は悩んだらすぐに走ることに逃げていた、誰かにダンスを見てもらうことにも。
ここからだ、ここから這い上がってみせる。
だって私は葛城さんのクラスメイトで...
ライバルになるんだから!