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ラズパイ4(8GB)で高齢者支援装置を作る

コンピューターを遠隔操作して、遠方の高齢者を支援する装置を作りました。モニターは高齢者宅のテレビを利用しています。日本語入力可能なので、テレビ電話の他にも、メールを書いたり、生協の買い物をしたり、様々なサポートが可能です。


はじめに

子供と離れて暮らす認知症の方の家に、見守り用カメラがありました。ご本人が気にされていて、ヘルパーだった私は、
「そのうち、壁にモニタがあって、ご家族の顔が映るようになりますよ」
とお話ししました。
あれから数年。介護の展示会で探しても、その様な製品はありません。ビデオ通話する為には、双方が機器の操作が可能なことが前提になります。高齢者がIT機器の操作が出来ない場合、ビデオ通話は難しいです。ニーズは凄くあると思うのに、何故でしょうか?安価に手軽にビデオ通話する為には、公共のインフラであるインターネットを使う必要がありますが。インターネットには沢山の悪い人もいるので、製品化のリスクが高く、採算が合わないのでは、と考えています。
コンピュータを遠隔操作する技術は、凄く便利で、エンジニアはリモート勤務などの仕事で使いこなしています。そういう人達でも、たまに悪い人の罠にかかって、サイバー犯罪に遭うことがありますが、凄く便利ですから、禁止されることはありません。
コンピュータを遠隔操作する技術は、IT機器の操作が難しい高齢者の、在宅介護でも有用だと思います。実は身の回りには、遠隔操作に便利な機器が溢れていると言ってもいいくらい、普及しています。自己責任でそういう機器を使ってみよう、という記事になります。 初めての方でも作れるように書いていきますので、初心者の方でも安心して、「高齢者支援装置」の製作に取り組んでいただけます。
しかしながら、コンピュータの遠隔操作に、絶対安全はありません。十分に注意して、自己責任でご利用下さい。

高齢者支援装置システム構成図

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コンピューターとしてRaspberry Pi 4を使用して、ラズベリーパイコネクトで遠隔操作しています。
HDMIケーブルでテレビと接続
webカメラをコンピューターのUSBコネクタに接続
SIMフリールーターとコンピューターは有線LAN接続
ルーターにはpovoのSIMカードを挿入して、使った分だけ通信料金を払っています。

この装置で出来ること

  • テレビをテレビ電話として使う(Google Meet)

  • 遠隔操作でメール文面を一緒に作る(日本語入力対応)

  • ウェブ検索のサポート

  • オンライン手続き(役所、銀行など)のサポート

安全設計の考え方

遠方の独居高齢者の自宅に置く装置なので、安全設計が最優先です。

ルーターをどうするか

高齢者宅のルーターは、この装置専用のものを用意します。既存の家のWi-Fiに混ぜないのは、万が一この装置経由で問題が起きても、家の他のネットワーク機器に影響しないようにするためです。

費用面から、SIMフリールーターを選んでいます。工事不要でSIMカードを挿せば使えるため、設置も簡単です。
私は、PIXELAのSIMフリールーター"PIX-RT100"を有線LANケーブルでコンピューター(Raspberry Pi 5)と接続しています。SIMカードはpovoを利用して、使った分だけ通信料金を払うようにしています。

最初、povoでインターネット接続できなくて焦りました。povoのサポートに問い合わせして、APN設定方法を教えて貰い、インターネット接続できました。

インターネット接続できたのは良いのですが、新たな問題が。iPhoneで「安全性の低いセキュリティ」と警告が出てしまいます。PIXELAサポートセンターに問い合わせして、翌日には回答をいただくことが出来ました。 ”製品のWEB設定ツール(http://192.168.1.1)へログインし、 [設定]-[Wi-Fi]-[Wi-Fi設定]で、「認証」を「WPA2-PSK」に変更” とのこと。やってみたら、上手く行きました。 因みに、この辺りの暗号化はWi-Fiだから必要なので、有線LAN関係ありません。高度なセキュリティを求められる環境では、Wi-Fiを禁止し、有線LANのみ許可する事が多いそうです。 PIXELAのSIMフリールーターは、有線LANで使う想定で買っています。

ルーターが古くなり、メーカーがファームウェア更新を終了したら、即、買い替えを検討しましょう。

ケースをどうするか

高齢者の家は、IT機器にとって、油断すると過酷になりがちです。ホコリ、湿気、小さな虫などなど。電子機器は通電すれば火災のリスクはゼロではありません。私は、現役のエンジニア時代に、焼け焦げた電子基板を何度か見てきました。なので、基本的に電気製品を信用していません。 基板が焼け焦げた時、その基板が燃えやすい素材の箱に入っていたら、どうなっていたでしょうか?😱🔥

近年、火災に占める電気火災の割合は増加しており、住宅火災の原因の1位となっているそうです。

コンピューターのRaspberry Pi 4を入れる箱は、プラスチックのものが多いですが、火であぶっても燃えないくらいが安心です。私は、金属ケースを探して購入しました。また、Raspberry Pi 4本体については、Raspberry Piの1次代理店である、スイッチサイエンスから購入しました。金属ケースとRaspberry Piの初めてセットが、他からも安く出ていましたが、サクラチェッカーで確認すると危険だと出てきました。自分の手元ではなく、高齢者の家で使うのですから、信頼できるルートで買う必要があります。

国内の筐体メーカーのタカチ電機にも、Raspberry Pi 用の金属ケースが色々とあります。購入方法が初めてだと分かりづらく、メーカー様に問い合わせして購入しました。個人は、エスエス無線という販売店を通して購入します。

用意するもの

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Step 1:Raspberry Pi OSのインストール

Raspberry Pi用のSDカードを用意する

パソコン、SDカード、SDカードリーダーがあれば、Raspberry Pi用OSのデータを、SDカードに書き込むことが出来ます。

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Raspberry Pi Imagerのダウンロード

Raspberry Pi公式サイト

https://www.raspberrypi.com/software/

「Raspberry Pi Imager」をダウンロードします。 Windows、Mac、Linuxでやり方は違いますが、選択してRaspberry Pi Imagerを起動します。

OSの書き込み設定

  • Raspberry Piデバイス:RASPBERRY PI 4

  • OS:Raspberry Pi OS(64-bit)

  • ストレージ:差し込んだmicroSDカード

続いて、OSの設定をします:

ホスト名:任意(例:kaigo-raspi)
ロケール:Asia/Tokyo、キーボード:ja

ユーザー名:任意(「pi」以外を推奨)
パスワード:強固なパスワード(メモして保管)

Wi-Fi:ルーターのSSIDとパスワードを入力

SSHを有効化する:オン
パスワード認証を使う:オン

Enable Raspberry Pi Connect:オン
「OPEN RASPBERRY PI CONNECT」に入ってサインイン
必要に応じて、Raspberry Pi IDを作成
「Authentication token」に入力される
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設定完了後、書き込み開始します。 完了したらmicroSDをラズパイに挿して電源を入れます。

Step 2:初回起動と基本設定

起動確認

キーボード、マウス、モニタを接続して電源を入れます。初回起動は少し時間がかかります。

起動が完了したら、念の為、再起動します。

システムのアップデート

ターミナルを開いて以下を実行します。

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sudo apt update
sudo apt full-upgrade -y
sudo reboot

これで最新の状態になります。

Step 3:日本語入力の設定

fcitx5 + Mozcの組み合わせが現在のRaspberry Pi OS(Bookworm/Trixie)で最も安定して動作します。MozcはGoogle日本語入力のオープンソース版で、変換精度が高く使いやすいです。

インストール

sudo apt update
sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc fcitx5-config-qt \
  fcitx5-frontend-gtk2 fcitx5-frontend-gtk3 fcitx5-frontend-gtk4 \
  fcitx5-frontend-qt5 -y

入力メソッドの有効化

im-config -n fcitx5

実行後、再起動します。

sudo reboot

日本語キーボードの設定

再起動後、画面右上にキーボードアイコンが表示されます。

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メニューから「設定」→「Fcitxの設定」を開きます。

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左側の入力メソッド一覧に「Mozc」がない場合は:

  1. 右側のリストから「Mozc」を選んで左矢印で左側に移動

  2. 「キーボード – 英語(US)」を外し、「キーボード – 日本語」を追加

  3. 一番上に「キーボード – 日本語」、次に「Mozc」の順に並べる

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日本語入力の切り替え:
日本語キーボードの「半角/全角」キー、またはCtrl + Space

Step 4:VNC(遠隔操作)の設定

VNCはローカルLAN内での接続を基本としますが、後述のTailscale VPN経由でインターネット越しにも使えます。

VNCサーバーの有効化

sudo raspi-config
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「3 Interface Options」 → 「I3 VNC」 → 「Yes」を選択して有効化します。

VNC接続する側の設定(あなたのPCやスマートフォン)

「RealVNC Viewer」アプリをインストールします。接続先には、後述するTailscaleのIPアドレスを入力して、遠隔操作に使用します。

Step 5:ラズベリーパイコネクト

ラズベリーパイコネクトはRaspberry Pi公式のリモートアクセスサービスです。2025年5月にベータ版から正式版(v2.5)になりました。ルーターのポート開放が不要で、ブラウザだけで接続できるのが最大の特長です。

デスクトップ右上に「ラズベリーパイコネクト」のアイコンがあります。

Raspberry Pi IDの作成とサインイン(まだIDを作っていない場合)

  1. https://id.raspberrypi.com でアカウントを新規作成(メールアドレス・パスワード・ニックネームを登録)

  2. 確認メールのリンクをクリック

  3. ラズパイのアイコンをクリック→「Sign in」でブラウザが開く

  4. 作成したIDでサインインし、このデバイス名を入力して登録

サインイン後、https://connect.raspberrypi.com にブラウザでアクセスすれば、どこからでも遠隔操作できます。

注意: ラズベリーパイコネクトとVNCは同時には使用できません。用途に応じて使い分けてください。

Step 6:Tailscale(VPN)の設定

Tailscaleは、インターネット経由でありながら同じLAN内にいるかのように安全に通信できるVPNサービスです。個人利用は無料で最大100台まで登録できます。ポートの開放やDDNS設定が不要なのが大きなメリットです。

ラズパイへのインストール

curl -fsSL https://tailscale.com/install.sh | sh

インストール後、以下で起動・ネットワーク参加します。

sudo tailscale up

実行するとURLが表示されるので、そのURLをブラウザで開いてTailscaleアカウントでログインします。

Tailscaleアカウントの作成(初回のみ)

https://tailscale.com でアカウントを作成します。GoogleアカウントやGitHubアカウントでのサインインも可能です。

接続する側のPC

それぞれのOSに対応したTailscaleアプリをインストールして、同じアカウントでログインします。

https://tailscale.com/download

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Tailscaleのダッシュボード https://login.tailscale.com/admin/machines でラズパイのIPアドレスを確認し、RealVNC ViewerでそのIPに接続すれば完成です。

Step 7:VNC over Tailscale の動作確認

以下の流れで遠隔操作できることを確認します。

  1. ラズパイの電源を入れる

  2. TailscaleのダッシュボードでラズパイのIPを確認(100.x.x.x の形式)

  3. VNC ViewerでそのIPアドレスに接続(File→New connection→IPアドレス入力→OK)

  4. ラズパイのデスクトップが表示されれば成功

接続できない場合のチェック項目: ラズパイのTailscaleがactiveになっているか(ダッシュボードで確認) https://login.tailscale.com/admin/machines

Step 8:WEBカメラの設定

USBポートにWEBカメラを接続すれば、Google Meetなどを利用できます。 ただ、OSのバージョンによっては、WEBカメラを認識しないことがあります。 ChromiumのFlagの設定を変えると、使えるようになります。 「chrome://flags で 'PipeWire Camera Support' を Disabled にする」 この方法は、ラズパイラボでトラブルについて質問し、@halasunさんに教えていただきました。 この場を借りて、お礼申し上げます。

Step 9:高齢者宅に設定する

写真の様に配置しています。

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Raspberry Piとルーターの電源を、一括でON/OFFする、テーブルタップを用意して、高齢者自身にON/OFFしていただいています。
Raspberry Piやルーターは、放熱のために、風通しの良い配置にしています

電源投入順序でトラブル回避

テレビとRaspberry Piを、HDMIケーブルで接続していますが。最初、音が出ないオーディオトラブルがあり、悩みました。Raspberry Piをリブートすると解決するため、電源投入時の起動順序だと考えて対策しております。 Raspberry Piを起動する前に、テレビの電源を入れて、入力切り替えをRaspberry Piの接続があるHDMI入力に切り替えて準備しておきます。そうすることで、オーディオトラブルなくRaspberry Piを起動することが出来ます。 尚、電源投入順序を間違えても、Raspberry Piを再起動(リブート)すれば良く、その為に壊れることはありません。

有線LAN接続

私は、有線LANでルーターと接続しています。 特別な設定をしなくても、接続するだけでインターネットに繋がります。

遠隔操作2本立ての使い分け

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実際の使い方イメージ

  1. テレビ電話をつなぐ:遠隔操作でGoogle Meetを開き、自分と高齢者の方のテレビをつなぐ

  2. メール作成をサポート:「メールを書きたい」と言われたらYahooメールを開き、日本語入力で文面を代わりに打ち込む

  3. 手続きのサポート:役所のウェブサイトを開き、フォームへの記入を手伝う

  4. 購入サポート:宅配してくれる生協で、必要なものを一緒に探して購入手続き

すべて電話で話しながらリアルタイムで操作できます。

まとめ

今回のポイントをおさらいします。

  • 日本語入力(fcitx5 + Mozc)の導入

  • 装置専用のSIMフリールーターで家のネットワークと分離

  • 金属(アルミ)製ケースで発火リスクを低減

  • 遠隔操作を2系統用意してトラブル時にも対応できる二重構成

  • Google Meetを活用したテレビでテレビ電話

日本語入力が使えるようになったことで、メールのサポートや文章を打つお手伝いが格段に楽になりました。遠方の独居高齢者の方の「できない」を「できる」に変える、そんな装置を目指しています。

本記事の内容を参考にされる場合は、自己責任でお願いいたします。ネットワーク設定やセキュリティについては、ご自身の環境に合わせて慎重にご検討ください。

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