これまで数え切れないほど比鷺の肌にキスマークを付けたことがあったが、人目に付く場所に痕を残したことは一度もない。
「見えるところには痕をつけないように気をつけてよ?」
比鷺が息を乱しながら、わずかに眉を寄せて忠告する。瞳はまだ理性を保とうとしているが、頰はすでに上気し、唇は湿って艶めいている。
萬燈は低く喉を鳴らして笑った。そんなしくじりはしない。痕を見た人間は、きっと比鷺の情事を想像するからだ。
黒い瞳が、獲物を狙うように比鷺の白い体を見下ろす。視線は熱を帯び、まるで指でなぞるように比鷺の鎖骨から腹部へと滑り落ちていく。
「心配するな。俺はちゃんとわきまえてる」
吐息が比鷺の肌に直接かかり、細かな鳥肌を立たせる。萬燈はゆっくりと唇を鎖骨に寄せた。舌先で湿らせ、熱い息を長く吹きかける。じゅっ……と小さな水音が立つたび、比鷺の体が微かに震えるのを、萬燈は逃さず観察していた。
唇が鎖骨の輪郭を丹念にたどる。指の動きも執拗だった。左手の親指と人差し指で比鷺の右の乳首を軽く摘みながら、右手の指先は腹筋の溝をゆっくりと下へなぞっていく。
比鷺の腰が無意識にくねり、太ももが内側にきつく閉じられる。秘部はすでに熱く潤み、硬くなった先端が萬燈の腹に触れていた。
萬燈の視線が、さらに下へ落ちる。へそのすぐ下、人目に絶対に付かない柔らかな下腹部。そこに狙いを定めると、彼の瞳がわずかに細くなった。深い独占欲による暗い光が宿る。
ここだ……。誰も見ない場所に、俺の色を染め込む。
萬燈は熱い息を長く吐きながら、唇をその窪みに押し当てた。まず舌を広く使って、肌を丁寧に舐め上げる。ざらりとした舌の感触が比鷺の敏感な皮膚を刺激するたび、比鷺の腹筋がぴくりと引き攣った。
「ん……っ、先生……」
比鷺の声が震える。萬燈は構わず、両手で比鷺の腰をしっかりと掴んだ。指が白い肌に軽く沈み、親指の腹でへその下の柔らかい肉を優しく押さえつける。逃げられないように固定しながら、肌を強く吸った。
じゅるっ……じゅるる……。
湿った、淫らな音が寝室に響く。萬燈の息遣いはますます荒くなり、鼻息が熱く比鷺の肌をくすぐる。黒い瞳は比鷺の顔を上目遣いに見上げ続けている。比鷺の反応を、一つ残らず味わうように。
白い肌に、赤い花弁のような痕が浮かび上がった。薄紅色の円が、へその下に鮮やかに咲く。萬燈は一度唇を離し、できたばかりの痕を指先で優しく撫でた。まだ熱を帯び、微かに脈打っている感触に、満足げに息を漏らす。
「綺麗だ……比鷺」
痕の周囲を円を描くように撫で、時折爪の先で軽く引っ掻きながら、心理的な刻印を深く刻み込む。比鷺の瞳は潤み、息は荒く、理性の仮面はすでに崩れ落ちていた。萬燈の視線は、所有物を確認するように、その赤い痕に釘付けになる。
これは二人だけの秘密の痕。
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