「女子枠問題」について、文科省大学入試室と意見交換を行いました
以下の3団体合同で、文部科学省大学入試室と意見交換を行いました。
公平な入試を求める学生の会 SFFA-Japan/公平な入試を求める東京大学学生の会 UT-SFFA/公平な入試を求める東京科学大学学生の会 IST-SFFA
2026年4月2日
2026年4月2日、私たち公平な入試を求める学生の会 (SFFA-Japan)のメンバー7名は、文部科学省を訪問し、理工系大学における「女子枠」入試の廃止を求める申し入れを行うとともに、大学入試室の担当者と約1時間にわたって意見交換を行いました。
村上衆議院議員(維新)とご縁があり、担当課とお繋ぎいただいたことから、こうした機会が実現しました。深く感謝申し上げます。
文部科学省 出席者:
文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学入試室長
文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学入試室 企画官
文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学入試室 室長補佐
他2名
本記事では、当日確認できた文科省の見解を論点ごとに整理し、今後の政策提言活動に向けた課題を共有します。以下、文科省側の発言、見解として記載しているものは、室長の方の発言になります(なお、当意見交換メモの公開については文科省から許可を頂いております。ありがとうございます)。また、冒頭に当団体が「女子枠の廃止」を求めさせていただいた部分(差別性の指摘や、違憲性の指摘)や枝葉の部分は省略し、新情報を中心に記述します。(必要があれば公開するかも)
1. 「理工系女子」例示の趣旨は「福祉・救済」ではなく「多様性」
文科省の説明によれば、大学入学者選抜実施要項において「理工系分野における女子」という例示を「家庭環境、居住地域、国籍、性別等に関して多様な背景等を持った者」を対象とした入試の例として示している趣旨は、純粋に大学の「多様性の実現」にあるとのことでした。
意見交換の中で、室長からは「女性が理系に進学しにくい状況にある」などといった福祉的・救済的な意図は、文科省として持ち合わせていないこと。また、女子枠実施の背景としてそのような説明をしている大学の見解は、文科省の意図とは一致しないこと。が明らかになりました。また、女性だけに特有の困難があると一義的に考えているわけではない、とも確認されました。
各大学が独自にそのような説明を行うこと自体は起こりうるとしつつも、文科省の立場としては、「理工系分野における女子」を例示しているのは、「女性差別の是正措置」や「女性が理系に進学しにくい状況の是正」ではなく「純粋に多様性を実現するため」として位置づけているそうです。
女子枠実施大学の言い分と文科省側の意図に大きな乖離があることが明らかになりつつも、「純粋に多様性を実現」ということは、「該当属性の困難が一切無くなったとしても、"多様性"のために数合わせを永遠に続ける」ことに繋がりかねない点(永続性については後述)も指摘しました。
2. 「多様性」は女子だけではないはずなのに
文科省は、地方出身者・経済的困難を抱える学生・男性が少数派の分野の志願者などを対象とする入試も、「十分にあり得る」と認めました。
しかし現実はどうでしょうか。私たちは次の点を指摘しました。
国立大学において「多様性確保」を名目とした特別入試は、女子枠が支配的である。
「貧困枠」「地方枠」「男子枠(看護・薬学等)」はほぼ存在しない。特に国立大学では顕著。(地域労働力確保としての地域枠は一部であるが、多様性確保・アファーマティブアクションとしての地方枠はほぼ無い。)
多くの大学教員から、「女子枠は文科省から公的資金を得るための手段」との声が上がっている
これに対し、文科省側は「女子枠の実施にのみ大きな経済的インセンティブが与えられている、あるいは少なくともそのように大学側に受け止められている状況についての課題意識は理解できる」と応じました。そのうえで、大学入試室では交付金の配分などは所管していないとして、交付金等を所管する別部署に、この問題意識を伝えたいとの回答がありました。
「多様性」を掲げながら、なぜ女子枠の実施にインセンティブが集中するのか。なぜ多様性の優先度が「単に女性であること」>>>>「地方、貧困、親非大卒、障碍者、男性少数分野(看護・薬など)における男性」になってしまっているのか。この矛盾への回答は、まだ得られていません。(大学入試室の所管外なので、今後は交付金を所管する部署にも政策提言を行いたいと思います)
3. 説明責任は大学にある
女子のみを対象とする施策の合理性について、文科省は「最終的には各大学がその制度の合理性を説明する責任を負う」「(文科省として各大学に女子枠の設置を"指示"した事実は存在しないという理解で良いか、という質問に対して)大学入学者選抜実施要項を踏まえて具体的な入試設計を行うのは各大学」と明言しました。大学ごとに説明責任を果たすべきだ、というわけです。
私達が大学教職員の方々へのヒアリングの結果として出てきている意見と随分と差があるようです…
4. 「一時的措置」のはずが30年継続:検証なき女子枠
意見交換の中で室長は、女子枠について「一時的な措置」として理解している、と述べました。
しかし私たちは、名古屋工業大学のように30年間継続しても効果が十分に現れていない事例があることを指摘しました。文科省側はこれに対し、「数値的な検証が行われることが望ましい」との考えを示しました。
一時的措置が検証もないまま長期化する。この問題は、女子枠に限らず日本の政策立案における構造的な課題でもあります。出口戦略と評価指標の設計を、誰が・いつ・どのように行うのか。文科省に対して、今後も具体的な回答を求めていきます。
5. パブコメが動かした:「女子学生枠の確保」文言の削除
内閣府の男女共同参画基本計画案考え方(素案)に含まれていた「女子学生枠の確保」という表現が、私たちの学生団体からのパブリックコメント(違憲性や差別性の指摘)を経て削除されたことを確認しました。
文科省の説明では、「パブリックコメントを踏まえ、より丁寧な表現に修正した」とのことでした。
この経緯は、市民・学生による政策への意見が、実際に文書を変えうることを示した事例です。正しいことを当たり前に指摘することには意味があると、改めて確認できました。
6. 性的マイノリティを排除して「多様性」?
最後に、私たちは見過ごされがちな問題を提起しました。
一部大学の女子枠では、対象を「(戸籍上)女性である者」に限定しています。しかし日本では、18歳未満の性別変更手続が認められていません。推薦入試の出願時期にまだ18歳に達していない高校生が存在するなかで、この要件は事実上の排除につながりかねません。また、女子枠制度を利用するためには実質的なカミングアウトを強いられる可能性もあります。
令和5年度大学入学者選抜実施要項を策定した有識者委員会でも類似の懸念が委員から示されていた旨を伝えたところ、文科省側は「この問題意識は共有できる。各大学が適切に対応する必要がある」と応じました。
「多様性の実現」のための制度が、性的マイノリティ、貧困、地方、親非大卒、ヤングケアラー…別のマイノリティを排除する。女子枠には、インターセクショナリティ(交差性)の概念が欠けていることも指摘しました。
おわりに
今回の意見交換を通じて、文科省の立場の輪郭がより明確になりました。制度の趣旨は「多様性」であり、合理性の説明責任は大学にある。交付金の偏在への課題意識も「伝えたい」と言う。しかし、具体的な是正措置や検証の仕組みは、いまだ見えていません。
私たちは引き続き、公平な入試の実現に向けて活動を続けます。
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