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北朝鮮IT労働者は「世界中の会社に」 組織の実態をハッカーが調査

真田嶺 御船紗子

 ある日本企業のオンライン面接に、実在する人物の「なりすまし」が現れた。ぎこちない日本語を話し、フルリモートの仕事を望む。不審に思った採用担当者が応募者と同姓同名の「本人」に連絡をとり、なりすましが発覚。専門家によると、北朝鮮IT労働者が使う手法と酷似しているという。

記事後半では、北朝鮮のIT労働者を誤って雇用しないために有効な方策も紹介します。日本のあるIT企業のオンライン面接に現れた、なりすましの人物の実際の動画もあります。

 彼らの使う手口とは、どんなものなのか。5年以上追い続けるホワイトハッカー(善意でハッキング技術を駆使する専門家)の調査からは、彼らが組織化された環境で働いている実態が浮かび上がってきた。

 「北朝鮮のIT労働者は世界中の会社で活動しています」。昨年11月、東京で開かれた情報セキュリティーの国際会議に、日本人ホワイトハッカーのSttyK(スティッキー)氏が登壇した。この時の発表と、朝日新聞が同氏に取材した内容を合わせると以下のようになる。

 同氏は、仲間とネット上の公開情報を使った調査「OSINT(オシント)」で北朝鮮について調べていたところ、エンジニア向けプラットフォーム「GitHub(ギットハブ)」の中で、北朝鮮IT労働者のものとみられるアカウントを多数見つけたという。

 結果を公表すると、匿名の人物から接触があり、北朝鮮IT労働者に関する内部資料とみられる大量のデータ提供を受けた。内容を精査したところ、自分たちがこれまで特定してきた傾向と一致する部分が多く、本物と判断した。

 データには名簿や案件の進捗(しんちょく)管理表、身分偽装用の資料、チャットツール「Slack(スラック)」のやりとりなどが含まれていた。

 それらによると、労働者は約12人ごとに12のグループに分けられ、最上位には「Master Boss」(大ボス)という名前の統括役がいた。各グループの仕事や予算、収益は表計算ソフトで細かく整理されていた。

 資料の一部には労働者たちが携わる作業の一覧もあり、AIのほか、「ボット開発」や「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」などといった分類と、それぞれの想定予算、総支払額を入力する欄が設けられていた。ボットとは、顧客への応答や業務を自動化するシステムのことだ。

「少なくとも1日14時間働くように」

 別の資料には、実際に支払われた額や収益性の高い地域などをまとめたものもあった。

 Slackからは、組織内の空気感が伝わってくる。

 例えば、大ボスが「全員、少なくとも1日14時間働くように」と呼びかけ、その直後に「待機時間も含まれる」と念押ししていた。自己啓発のネットミーム(ネット上で模倣、改変、拡散される画像など)を投稿したり、偽の身分証明書を持っていないか仲間に呼びかけたりするやりとりもあったという。やりとりは全て英語だった。

 同氏は、Slackのチャンネルで日々の作業を報告する多数の画像や録画も確認したといい、提供を受けた資料からは「監視とノルマの下で動く彼らの姿が浮かび上がってくる」と話す。

誤って雇用しないためには?

 他方、誕生日を祝う書き込みや、バレーボール大会の予定を共有する資料もあり、内部には一体感もあったという。

 北朝鮮のIT労働者を誤って雇用しないためには、身分証が本物か確かめることや、社内で人事とセキュリティー部門の連携を高めていくことが有効という。また、相手のメールアドレスのユーザー名(アットマークより左側の部分)をネットで検索することで、別のプラットフォームでは別の人格を使っているケースを見つけることができるという。さらに、北朝鮮ではアメリカ英語ではなくイギリス英語で教育を受けるため、彼らの文章からは「イギリス英語の癖が抜けていない」傾向があるという。

 北朝鮮は国連安全保障理事会決議により制裁下にあり、IT労働者は自国に外貨収入をもたらすために働いているとみられる。同氏はこの問題について「採用現場に彼らが入り込むリスクは高まっている」と指摘。「中小企業であっても、こうした実態を頭の片隅にとどめておいてほしい」と訴えた。

【動画】オンライン面接に現れたなりすましの人物=吉井健文さん提供

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この記事を書いた人
真田嶺
東京社会部|サイバー、ネット、AI
専門・関心分野
SNS、移民、国際情勢、ポッドキャスト
御船紗子
国際報道部
専門・関心分野
国際関係、サイバー
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    阿古智子
    (東京大学大学院教授=現代中国研究)
    2026年4月11日11時0分 投稿
    【視点】

    AIを駆使した「なりすまし」を見分けること、とても重要ですね。ここ5-6年、私が付き合いのある中国のジャーナリストや活動家のほとんどは、自らの安全を守るため、いくつものペンネームやニックネームを使って活動しています。私は彼らと信頼している人からの紹介で交流しているので、ほとんど騙されることはありませんが、実際に会ったことがない人もおり、誰が誰なのかわからなくなることもあります。グループで議論していたときに、身元のわからない人が混じっていたこともあり、急いでそのグループを解消しました。

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