7人に1人、日本に約1700万人いるとされる「境界知能」の人たち。
言語化が苦手、仕事の段取りを覚えられない、行動がワンテンポ遅い、対人関係の距離感が極端、金銭管理ができない、ダマされやすい……困っているのに気づかれなかった人々の実態とは?
発売即重版が決まった話題書『境界知能の人たち』では、当事者を見てきた第一人者の医師が、全体像をわかりやすく解説する。
(本記事は、古荘純一『境界知能の人たち』の一部を抜粋・編集しています)
強者が弱者を助けない社会
例外はありますが、境界知能の人たちは、知的機能でマイノリティであるだけでなく、情報や経済面においても弱者であると言えます。日本社会では困っていても目立ちづらく反論できない人を「自己責任」として切り捨てる傾向が強いように思います。
いじめの被害にあった子どもが、ネット上では強者のつもりになって自分と意見が異なる人を見下して、「知能が低い」とか「境界知能」という単語を出して中傷するなど、差別的に使用されることもあります。
政策としての理解増進
機能障害をもとにして、知的障害者の診断範囲を広げるような動きが進んでいますが、診断モデルを止めることになり現実的には難しいと考えざるを得ません。
また、教育関係者においても、障害のある人の「囲い込み」を進めるだけでは本来の問題解決にならないという考えもあります。
「支援を受ける、受けられない」の2択ではなく、支援を受けられない人の中に「理解と配慮」が必要な人もいるという3択の考え方を社会で浸透させていくのが現実的だと考えています。境界知能の人全員を支援対象にするのは、予算の問題だけでなく、国民の理解が得られにくいでしょう。
境界知能の人は、マイノリティではありますが、誤解と偏見が根強いため、「境界知能理解増進策」といった条例などを検討するのもよいかもしれません。