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日本はなぜ外国人の土地購入をここまで放置してるのか?
前回の記事で、カンボジアの犯罪組織「プリンス・グループ」が東京の高級マンションをマネロンに使ってた話を書いたら、こんな質問をもらいました。
「そもそもさ、日本ってなんで外国人が簡単に土地買えるの?みんな疑問に思ってるのに、なんで政府は放置してるの?」
これ、めちゃくちゃ良い質問で、調べたらその答えが想像よりずっと深くて、国際ルールとか戦後史とか、色んな要素が絡んでる話だったので、今回もQ&A方式で整理してみました。

Q1. 日本って外国人が自由に土地買えるの?本当に?

本当。しかも世界的に見てもかなり自由なレベル。
現行法では、外国人が日本で土地を買うのに特別な許可はいらない。日本人と同じ手続きで買える。ビザの有無も関係ない。税金の扱いも日本人と同じ。
一部の国では「外国人は土地を借りることしかできない」ってルールがある。でも日本は違う。買えるし、所有できるし、売れる。
ニュースでたまに見る「中国人が北海道の山を買った」「対馬が韓国資本に買われてる」みたいな話は、全部合法。違法じゃないから止められない。

Q2. え、なんでそんなに自由なの?規制する法律ないの?

これが面白いところで、実は法律はあるんだ。しかもかなり古くから。
「外国人土地法」っていう法律が1925年(大正14年)に作られてる。この法律には「国防上必要な地区では、政令で外国人の土地取得を禁止したり制限したりできる」って書いてある。
戦前は実際に動いてて、1926年には具体的な施行令が作られた。伊豆七島、小笠原諸島、対馬、沖縄、横須賀、舞鶴、呉、佐世保みたいな軍事的に重要な場所では、外国人が土地を買うのに陸軍大臣や海軍大臣の許可が必要だったんだ。

Q3. じゃあなんで今は機能してないの?

1945年の敗戦がきっかけ。
戦争に負けた日本は、戦時中の色んな規制を廃止した。その中に外国人土地法の施行令も含まれてた。法律の本体は残ったけど、動かすための施行令がなくなった。
それ以降、80年間ずっと、新しい施行令が一度も作られてない。条文はあるけど中身が空っぽ。法律の抜け殻だけが残ってる状態。
2010年に当時の菅直人首相が国会で「規制には政令が必要だけど、現在は存在せず、事実上この法律も有名無実になっている」って正式に答弁してる。総理大臣が「機能してません」って認めるレベル。

Q4. なんで80年間も放置してたの?作ればいいじゃん

ここが一番深い話。答えは「作りたくても作れない国際的な縛りがあった」なんだ。
1994年に日本は「GATS(ガッツ)」っていう国際協定に加盟した。これは「サービス貿易に関する一般協定」っていうWTO(世界貿易機関)のルールの一つ。
この協定には「加盟国は外国企業や外国人を、自国民と差別してはいけない」っていう大原則がある。これを「内国民待遇」って言う。
そしてこの協定に加盟するとき、日本は「土地取引は例外にしてください」って手を挙げなかった。つまり日本は1994年の時点で、土地取引について外国人を差別しないと国際的に約束してしまったんだ。
だから今から「外国人だけ土地買えなくします」って法律を作ろうとすると、この国際協定に違反することになる。WTOで訴えられたら負ける可能性が高い。
法務省も公式見解として「WTO協定を踏まえれば、外国人であることを理由に土地取得を一律に制限することは難しい」って言い続けてきた。役所が怠慢だったわけじゃなくて、国際ルールで手足を縛られてたんだ。

Q5. でも他の国はちゃんと規制してるんでしょ?なんで日本だけダメなの?

規制してる国もあるけど、実はそういう国はGATS加盟時に「土地は例外にします」って留保を付けてる。あるいはもっと前から規制してて、それを続けてる。
例えば北マリアナ諸島は、憲法レベルで「現地出身者以外は土地を持てない」って決めてる。タイやフィリピンも外国人の土地所有は原則禁止。
でも日本は1994年の段階で「うちは自由にしますよ」って宣言しちゃったから、後から戻すのが難しい。タイミングの問題なんだよね。バブル崩壊直後の時期で、外資歓迎ムードが強かった時代背景もある。
あと先進国(アメリカ、ヨーロッパ)は外国人の土地取得に直接制限をかけてない国が多い。その代わり、安全保障上の問題がある取引は個別に止められる仕組みを持ってる。日本にはその個別に止める仕組みも弱かった。

Q6. てか、むしろ日本政府は「外国人に不動産買ってほしい」って言ってた時期があるって本当?

本当。これがさらにツライ話。
2013年、国土交通省が「不動産市場における国際展開戦略」っていうのを発表した。要するに「海外の投資家さん、日本の不動産をもっと買ってください!」って政府が旗を振ってた時代があるんだ。
当時は円安で、海外から見ると日本の不動産がお買い得に見えてた。アベノミクスで景気を良くしたい時期で、地方創生、観光立国、インバウンド、全部の政策が「外資よ来い」の方向を向いてた。
結果として、北海道のニセコや倶知安みたいなスキーリゾートに中国・オーストラリア資本が大量に入り、対馬に韓国資本が入り、都心のタワマンに各国の富裕層が入ってきた。
政策として成功した面もあるけど、「歓迎した」側面があるから、後から「やっぱ規制します」って言いにくくなった

Q7. 2022年に新しい法律ができたって聞いたけど、それは効いてないの?

効いてる範囲が狭すぎるんだよ。
2022年に「重要土地等調査法」っていう法律が施行された。自衛隊基地、海上保安庁の施設、原発、空港、国境離島の周辺1kmを「注視区域」に指定して、そこの土地取引を国が調査できるようにした、っていうもの。
司令部機能がある重要な基地の周辺は「特別注視区域」になって、200平方メートル以上の売買には事前届出が必要になった。
でもね、この法律の対象は軍事施設・原発・国境離島だけ。都心の高級マンションは対象外。水源地も対象外。農地も対象外。
プリンス・グループが買った港区のマンションは、この法律では何の網にもかからない。犯罪組織がマネロンで買っても合法。
しかもこの法律、成立するときに野党が強く反発してる。「これは外国人規制を装って、実は原発や基地の反対運動をしてる日本人を監視する法律じゃないか」っていう批判があった。政治的にすごくセンシティブな領域で、踏み込みにくかったんだ。

Q8. じゃあなんでみんなが疑問に思ってるのに今まで動かなかったの?まとめて

理由を5つに整理するとこんな感じ。
理由1:国際ルール(GATS)の縛りがあって、外国人だけを差別する法律を作ると通商問題になる
理由2:経済界が外資歓迎だった。不動産業界、観光業界、建設業界は外国人の購入を止められたら困る
理由3:憲法の財産権との兼ね合いで、国籍を理由に取引を制限することへの法的ハードルが高い
理由4:「見える被害者」が少なかった。水源地や国境離島の買収は抽象的で、都市部の人には自分ごと化しにくかった
理由5:政治的タブー化。「外国人差別だ」と批判されるのを恐れて、与野党ともに踏み込みたがらなかった
要するに「みんな疑問に思ってる」と「政治的に動かせる」の間には、すごく深い溝があったんだ。SNSの不満と、国会で法案を通す労力は別物なんだよね。

Q9. じゃあ今も放置されてるの?

ここからが一番大事な話。実はこの1年で状況が一変してる
2025年7月:個人が大規模な土地を買うときに、国籍の届出が義務化された
2025年12月:法務省が「不動産の登記をするときに国籍を申告させます」って発表。2026年度から運用開始
同じ2025年12月:財務省が「外国人が住むために不動産を買うときも報告を求めます」って発表。これまでは投資目的だけだった
2026年1月23日:政府が首相官邸で関係閣僚会議を開いて、外国人の土地取得ルール厳格化を正式に決定
2026年4月:外国法人が大規模な土地を買うとき、代表者の国籍と、役員や株主の過半数が同一国籍ならその国籍まで届出義務化
2026年夏:さらに踏み込んだ規制の「骨格」をとりまとめる予定
80年間動かなかったルールが、たった1年で一気に動き出した。

Q10. なんで急に動き出したの?

2つの大きなきっかけがある。
きっかけ1:水源地と安全保障の問題が限界に達した
中国資本が北海道の水源地を買ってる、自衛隊基地の隣の土地が外国資本に買われてる、対馬が韓国資本に買われてる。こういう話が10年以上積み重なって、ついに政治が動かざるを得なくなった。
きっかけ2:プリンス・グループ事件
前回の記事で書いたカンボジアの犯罪組織が、東京の高級マンションをマネロンに使ってたっていう事件。これが報じられたのが2025年11月。その直後の12月〜2026年1月で、政府の動きが一気に加速した。
つまり、「国際犯罪組織が日本の不動産を洗濯機にしてる」っていう目に見える形の被害が出て、ようやく政治が重い腰を上げたってことなんだ。
皮肉だよね。水源地の話は10年前から指摘されてたのに動かなかった。犯罪組織のマネロンという形で被害が可視化されて、初めて動いた。

Q11. 新しい制度のポイントは何?

一番大事なキーワードは「実質支配者(ベネフィシャルオーナー)の把握」。
これまでの問題は何だったかというと、前回の記事のQ12で書いたやつ。「会社名義で買えば個人の名前が出てこない」っていう穴。プリンス・グループも日本法人を3社作って、その法人名義で不動産を買ってた。登記簿には「株式会社〇〇が買いました」としか書いてない。
新しい制度では、その会社を本当に支配してるのは誰なのかまで追いかける。役員や株主の過半数が同じ国籍なら、その国籍も届け出させる。法人の衣を着てても、中身を見せろってこと。
さらに「不動産ベース・レジストリ」っていうデータベースを作って、国籍情報を含む土地所有情報を政府が一元管理する方向。これが2027年度から運用開始予定。
マネロン対策として「多額の現金による不動産取得」への対策強化も明記されてる。現金一括購入が歓迎される時代はそろそろ終わる。

Q12. 外国人全面禁止にはならないの?

ならない。理由はQ4で書いた通り、GATSの縛りがあるから。
あと全面禁止すると、海外からの投資がストップして経済への影響が大きい。外国人労働者や外国企業の日本進出にも悪影響が出る。ニセコや京都のインバウンド経済も崩壊する。
だから政府の方針は「全面禁止」じゃなくて「透明化と実態把握」。誰が何のために買ってるかを全部把握できるようにして、怪しい取引は個別に止められる仕組みを作る、っていう方向。
これは世界の主要国の基本パターンに合わせる動きでもある。アメリカもヨーロッパも全面禁止じゃなくて、安全保障上問題のある取引を個別に止める仕組みを持ってる。日本もようやくそっちに追いついてきた。

Q13. 今後、鑑定士の役割はどう変わるの?

ここ、めちゃくちゃ大事な話。
新制度のキーワードは「実質支配者の把握」と「マネロン対策」。でも、実質支配者を突き止めた後に「その取引は経済的に妥当か」「価格は正常か」を判定できる専門家が必要になる。
それが不動産鑑定士なんだ。
前回の記事でも書いたけど、マネロンの核心は「値段をごまかせる」こと。わざと高く買ったり、損してでも早く売ったり、そういう経済合理性のない取引を見抜けるのは鑑定士しかいない。
新制度で「怪しい取引」を検知する網ができても、その網に引っかかった取引が本当にマネロンなのかを判定するのは、結局**「この価格は正常価格から乖離しているか」**を言える人間の仕事。
だから、これからの鑑定士は「不動産の価値を計算する人」じゃなくて「国際犯罪の最後の砦」になっていく可能性が高い。地味な仕事が、地政学的な役割を持ち始めてる。

Q14. 結局、この話の教訓は何?

3つあると思う。
教訓1:「放置してた」の裏には、たいてい複雑な事情がある。日本が外国人に土地を売り放題だったのは、役所の怠慢じゃなくて、1994年のGATS加盟、2013年の外資歓迎政策、憲法上の財産権、政治的タブー、色んな要素が積み重なった結果だった。シンプルな悪者探しで理解できる話じゃない。
教訓2:政治は「見える被害」がないと動かない。水源地の話は10年以上前から指摘されてた。でも動かなかった。プリンス・グループ事件という目に見える形で犯罪被害が可視化されて、初めて動いた。逆に言うと、可視化されない問題は永遠に放置されるってこと。
教訓3:地味な専門職が、実は国を守ってる。鑑定士って、普段はビルや土地の値段を計算してる地味な仕事。でもマネロン対策という文脈では、国際犯罪組織から国を守る最後の砦になる。静かな専門性は、有事になって初めて価値が分かるってやつ。

まとめ

・日本には1925年から「外国人土地法」があるけど、1945年以降は機能していなかった
・理由の核心は1994年のGATS加盟。国際ルールで外国人差別ができない
・2013年に国交省が外資歓迎戦略を打ち出した時代もあった
・2022年の重要土地等調査法は対象が狭すぎた
・2025〜2026年で一気に動き始めた。きっかけは水源地問題とプリンス・グループ事件
・新制度のキーワードは「実質支配者の把握」と「マネロン対策」
・鑑定士の役割は「不動産の値段を計算する人」から「国際犯罪の最後の砦」へ
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