第1479回放送用語委員会では、『NHKことばのハンドブック 第2版』(以下、『NHKことばのハンドブック』)改訂に向けて、以下に示す4つの議題を提案し、「用語の決定」を行った1)。
- 議題1
- 電話番号・郵便番号の数字「0」の読み方
- 議題2
-
漢字表記の変更
「高嶺の花・高根の花」 - 議題3
- 外来語の語形
「サステ(イ)ナブル」「サステ(イ)ナビリティー」 - 議題4
- 語形の変更「する+まい」「来る+まい」
本稿の議題1は藤井、議題2は中島、議題3と4は塩田が、それぞれ執筆する。
議題1
電話番号・郵便番号の数字「0」の読み方(決定)
『NHKことばのハンドブック』の改訂に伴い、数字の読み方の見直しを行っている(第5章「数字の発音」)。
今回は、電話番号・郵便番号の「0」の読み方について、用語の決定を行った。
電話番号・郵便番号の「0」の読み方
①ゼロ ②レー
(これまで、原則は「レー」)
(1)提案理由
放送では、数字の「0」は、基本的に「レー」と読んでいる。そのため、電話番号においても「0120」は「レーイチニーレー」、「090」は「レーキューレー」、郵便番号の「105」は「イチレーゴ」などと読んでいる。
しかし、この電話番号・郵便番号に関しては、「ゼロ」と読んではいけないか、という放送現場からの声が根強くある。
そこで、前回、第1478回放送用語委員会(2025年6月13日)において、「0は基本的に「レー」だが、電話番号では「ゼロ」と読む慣用が強いため、「ゼロ」でもよい」という、「ゼロ」という読み方も許容する形の、新しい『NHKことばのハンドブック』の記述案を提示した。しかし、その際、出席した委員から、調査の結果を見ると「ゼロ」の読みが圧倒的多数を占めているので、もっと「ゼロ」を優先させるべきではないか、といった指摘が相次いだ。また、この記述では、アナウンサーはどちらにすべきか悩み、放送において「レー」と「ゼロ」が混在してしまうのではないか、といった意見も出た(議論の詳細は〈山下洋子・藤井まどか(2025)「語の読み方(語形)について 電話番号の読み方について〔用語の決定・意見交換〕」『放送研究と調査』75-9〉参照)。
そこで改めて検討し、今回、より視聴者の感覚に近づけるためにも、電話番号・郵便番号の「0」の読み方は、①ゼロ②レーと優先順位を付け、「ゼロ」を第1推奨形とする用語の決定を提案するに至った。
(2)『NHKことばのハンドブック』改訂
今回の決定に伴い、『NHKことばのハンドブック』については、以下のとおり、改訂の素案を示した。
上が現行の記述の抜粋、下が改訂案である。
〔レイサン・ノ・サンゴーレイイチ(局)・ノ・レイレイハチサン(番)〕
〔サンヨンロク・ノ・レイレイイチロク〕
電話番号では「ゼロ」と読む慣用が強いため、
①ゼロ ②レー とする。
〔ゼロ(レー)サン・(ノ・)ゴーヨンゼロゼロ(レーレー)・(ノ・)××××〕
郵便番号でも「ゼロ」と読む慣用が強いため、
①ゼロ ②レー とする。
〔イチゼロ(レー)ゴ・ノ・ロクニーイチロク〕
主な変更点は、電話番号、郵便番号ともに、これまで放送では積極的に使ってこなかった「ゼロ」という読み方を、第1推奨形として明記した点である。
(3)調査結果
電話番号、郵便番号について、「0」の読み方をそれぞれ調査した3)。
(3)-1 電話番号
電話番号については、2025年3月に調査を行った。
調査期間:2025年3月7日~16日
調査対象:全国の満20歳以上の男女4,000人
抽出方法:層化副次(三段)無作為抽出法
調査方法:調査員による個別面接聴取法
有効回答数(率):1,186人(29.7%)
- Q.
-
電話番号の読み方について伺います。
「090」「045」「054」などの、電話番号の頭につく0について、「ゼロ」「レイ」どちらで読みますか。
- 1.「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)
- 86%
- 2.「レイ」と読む(「ゼロ」とは読まない)
- 3
- 3.両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い
- 9
- 4.両方読むが、どちらかというと「レイ」と読むことのほうが多い
- 1
- 5.どちらでもない
- 0
- (わからない)
- 0
「「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)」の86%と、「両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い」の9%を合わせると、95%が「ゼロ」と読むと回答している(図1)。
年代別の結果は、図2のとおりである。
「「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)」と、「両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い」を合わせると、すべての年代で9割以上が「ゼロ」と読むと回答している。
(3)-2 郵便番号
郵便番号については、2025年8月に調査を行った。
調査対象:全国の満20歳以上の男女4,000人
抽出方法:層化副次(三段)無作為抽出法
調査方法:調査員による個別面接聴取法
有効回答数(率):1,185人(29.6%)
- Q.
-
郵便番号の読み方について伺います。
カッコの中の言い方についておたずねします。この中から1つだけお答えください。
【「〒150-8001」の「0」】
- 1.「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)
- 77%
- 2.「レイ」と読む(「ゼロ」とは読まない)
- 4
- 3.両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い
- 14
- 4.両方読むが、どちらかというと「レイ」と読むことのほうが多い
- 3
- 5.どちらでもない
- 3
- (わからない)
- 0
「「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)」の77%と、「両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い」の14%を合わせると、91%が「ゼロ」と読むと回答している(図3)。
年代別の結果は、図4のとおりである。
「「ゼロ」と読む(「レイ」とは読まない)」と答えた人と、「両方読むが、どちらかというと「ゼロ」と読むことのほうが多い」と答えた人を合わせると、20~60代では9割以上が「ゼロ」と読むと回答している。また、70代では88%、80代で84%が「ゼロ」と読むと回答し、電話番号と比較すると、「レー」と読む人が若干多いものの、すべての年代で「ゼロ」と読むと回答した人が多数を占めている。
(4)放送での「0」の読み方
なぜ放送で、数字の「0」を「レー」と読むことを原則にしているのか。そこには、次のような理由がある。
一般的に、数字の「0」には、「レー」と「ゼロ」という2つの読み方がある。山下・藤井(2025)に詳しく示したとおり、両者は、その起源が異なる。「レー」は、中国から伝わってきた漢字「零」の音読みである。一方、「ゼロ」は、英語「zero」(あるいはフランス語「zéro」)に由来する外来語である。
時折、正しい日本語が「レー」だから「レー」と読むべきだ、といった意見を聞くこともあるが、外来語も日本語であり、両者とも日本語として広く用いられている。
ただ、「1(イチ)」「2(ニ)」「3(サン)」…が、中国から伝わった漢字(「一」「二」「三」)の音読みであるため、「0」も「零」の音読みにそろえたほうがよい、「0」だけ「ゼロ」という外来語になるのは統一がとれていない、という考え方から、放送では「0」も漢語としての「レー」で読むことを原則としてきている。
②固有の読みが決まっている場合
(例 ゼロ歳児、死亡者ゼロの日、ゼロシーリングなど)
となっている。このルールは、1970年の第714回放送用語委員会(1970年5月28日、『文研月報』20-8)での決定4)を根拠としている(1970年の放送用語委員会における議論の詳細は、山下・藤井(2025)参照)。
これまでNHKで半世紀以上、使用されている「0」の読み方の基本ルールであり、今回の決定は、このルール自体を変更するものではない。電話番号・郵便番号については、調査結果にも見られるとおり「ゼロ」読みの強い慣用があるため、上記ルールの「②固有の読みが決まっている場合」に準じるものと解釈して、今回の決定に至っている。
(5)NTT「104」電話番号案内サービスでの「0」の扱い
NTTの電話番号案内サービス「104」は「イチレーヨン」というサービス名で呼ばれている。電話すると、担当者が「イチレーヨンの○○です」と電話に出る。試しに、ある施設の代表番号を聞いたところ、実際の電話番号の案内の際には自動音声に切り替わり、「04××-××-××60」は「ゼロヨン…ロクゼロ」と、「ゼロ」という読み方だった。
(6)日本郵便での「0」の扱い
郵便番号の「0」の読み方について、日本郵便の広報宣伝部に問い合わせをしたところ、社内で「レー」と読むか「ゼロ」と読むかについては、特にルールは定めていないとのことだった。
(7)席上での意見
NHK外部の放送用語委員から、以下のような意見があった。
- 電話番号と郵便番号については、調査にあったとおり、「ゼロ」と読むのが圧倒的に多いということなので、それ以上コメントすることはない。この決定で問題ない。
- 前回の放送用語委員会で申し上げたが、資料に基づいて判断するのが何より大事だと思っている。これだけ圧倒的に差がついたら「ゼロ」を強く打ち出してよい。この案でよいだろう。
- 90%以上の方がイエスと言うなら「ゼロ」へ、という動きで当然だと思う。
- 特に電話番号と郵便番号に限れば、90%以上がゼロと言っているのだから、これで問題ない。賛成である。
- 提案に賛成だ。今回の新たな郵便番号の調査で、変更の理由に説得力が出た。今後の課題というか、疑問なのだが、テレビで番組ホームページアドレスやメールアドレスを読み上げるときがあるが、それらのアドレスの中に出てくる0は「ゼロ」なのか「レー」なのか。あれも「ゼロ」のほうがわかりやすいので、今後の課題にしたらどうか。
- 今回の提案に賛成である。一般に、外来語よりも、漢字の音読みの字音語のほうが正式で重厚という意識が持たれがちだが、「ゼロ」については調査結果のとおり、一般の人は「ゼロ」のほうが自然で聞き取りやすいということなので、順当に変更が行われてしかるべきと考える。
- 提案に賛成である。前回の提案よりも「ゼロ」が優先されるので、いい方向だと思う。ついでに申すと、「ゼロ」の問題ではないが、『NHKことばのハンドブック』記述案で、電話番号について、「2」「5」は、〔ニー〕〔ゴー〕と伸ばして発音するが、それも記述したほうがよいのではないか。
また、放送現場の声として、NHKの局内の委員からは、以下のような意見があった。
- 報道局としても、ニュースを伝える際に、視聴者にいかに伝わりやすいかということを考えながら発信しているが、調査の結果、9割以上が「ゼロ」と読むということで圧倒的なので、「ゼロ」で賛成である。
- アナウンサーにも意見を聞いたが、「ゼロ」のほうが圧倒的に違和感がない。多くのアナウンサーが「ゼロ」を第1推奨形にするので問題ない、と話していたので賛成である。
(8)今後の検討課題
今回、電話番号・郵便番号の「0」に関しては、満場一致で「ゼロ」を優先させるという決定に至った。
数字「0」は、「0%」「0度」「0メートル」など助数詞が付くケースや、スポーツ選手の背番号、車のナンバー、インターネットのURLなど、使用が多岐にわたる。今回は、特に「ゼロ」という慣用が強く、放送現場からの要望も多い電話番号・郵便番号だけを取り上げて決定したが、数字「0」の読み方については、今後もさまざまなケースについて慎重に検討していく必要があるだろう。
議題2
漢字表記の変更
「高嶺の花・高根の花」(決定)
「高嶺の花・高根の花」(決定)
高根の花
→高嶺の花・高嶺(たかね)の花・高根の花
(1)提案理由
「たかねのはな」は、「遠くから眺めるだけで、手の届かないもの」という意味のことばである。「高嶺の花」の「嶺」は常用漢字表に載っていない漢字であるため、放送や新聞各社では、同様の意味を持つ「高根」を使い「高根の花」と表記してきた。しかし、地中にあるものを連想させる「根」という漢字を使うことに違和感を持つ人も多く、放送や新聞以外の場で「高根の花」という表記が使われることは少ない。また、新聞社においても「高嶺」に「読みがな」5)を付けた「高嶺の花」を採用する社が増えつつある。
(2)国語辞典での扱い
「たかね(高嶺・高根)」は、「高い峰。高い山の頂」という意味を持つ和語(訓読みのことば)である。
2000年以降に出版された主な国語辞典10冊で「たかね」の見出し表記を調べたところ、「高嶺」「高根」を併記している辞書が多かった6)。
- 【高嶺・高根】
- 6冊
- 【高嶺】(高根)
- 2冊
- 【高根】(高嶺)
- 1冊
- 【高嶺】
- 1冊
このうち、『明鏡国語辞典(第3版)』(2021年)は、「高根」という書き方について「新聞で使う代用表記。「嶺ね」は「みね(御根)」の意で、「根ね」と本来同語源とされるところから「高根」とする」という説明を載せている。
また、小学生を対象とした学習用の国語辞典では、『三省堂 例解小学国語辞典(第8版)』(2024年)が見出しの表記を「高根・高嶺」と併記しているほか、『新レインボー小学国語辞典(改訂第7版)』(2023年)は、見出しの表記は「高根」としたうえで、「「高嶺」とも書く」という説明を載せている。
(3)新聞などでの扱い
日本新聞協会の『新聞用語集2022年版』では、「高根の花」のみを掲載している。しかし、『朝日新聞の用語の手引(改訂新版)』(2019)、『読売新聞用字用語の手引(第7版)』(2024)が、「高嶺」に「読みがな」を付けた「高嶺の花」を掲載するなど、「高嶺」を使う社が増えつつある。
(4)調査結果
- Q.
- これから、ある同じ表現について、いくつかの書き表し方をお見せします。どの書き方がよいと思いますか。テレビ画面に字幕スーパーで表示されるものとしてお考えください。ことばの読み方を表す「音声」は、テレビからは流れてこないものとします。お答えになるときには、「その漢字の正しい読み方が、あなたご自身だけでなく、多くの人にきちんとわかるか」といったことや、全体としての見やすさなどもお考えに入れてお答えください。
調査の結果、「高嶺」と漢字で書くことを支持した人が全体の52%で最も多く、次いで、44%の人が「高嶺」のうしろや上に「読みがな」を付けた「高嶺(たかね)・高嶺」を支持した。一方、「高根」がよいと答えた人は3%にとどまった。また、年代による特筆すべき違いは見られなかった(図5)。
(5)席上での意見
NHK外部の放送用語委員から、以下の意見があった。
- 「高根」は、放送や新聞の特殊な表記のように思われている節があり、画面を見るたびに、そういう違和感を人々が持つのはよくない。ただ、「高根」を使うという習慣もそこそこあるようなので、必要に応じて選ぶという余地を残してよいだろう。
- 「根」というと、どうしても足もとを見つめるようなイメージがある。このことばには見上げる感じがほしいので、「嶺」を使うことに賛成する。
- 小学生でも読めるよう「高嶺」にはルビなどを付けたほうがよい。
なお、「高根の花」については、1473回放送用語委員会で意見交換を行っている7)。
議題3
外来語の語形
「サステ(イ)ナブル」
「サステ(イ)ナビリティー」(決定)
〇 サステナビリティー
※固有名詞(イベント名や団体名など)については、上記にかかわらず原表記のとおりとする(他の語と同様)
(1)過去の放送用語委員会での指摘
今後、「サステナブル」という語形が優勢になっていくであろう。
(塩田雄大(2023)「用語の決定および報告」『放送研究と調査』73-12)
原音(英語)に忠実なのは「サステイナブル」であるのに対して、現状として多くなりつつあるのが「サステナブル」である〔中略〕日本語では「コンテイナー」(原音に忠実な形)ではなく一般には「コンテナ」という言い方が広く用いられるなどの例があり、「サステナブル」という語形が流通しているのもおかしなことではないといった意見があった。
同様の現象として、「メインテナンス~メンテナンス」「ステインレス~ステンレス」などがある。
(塩田雄大・中島沙織・藤井まどか(2023)「語形のゆれ・表記・意味の解釈が分かれる語の扱いについて」『放送研究と調査』73-2)
(2)調査結果
(全体・年代別)
(全体・年代別)
(全体・年代別)
(3) 日本語コーパスおよびウェブ上での頻度(ドメイン別)から
| サステナブル | サスティナブル | サステイナブル | |
|---|---|---|---|
| コーパス8) | 7件 | 0件 | 24件 |
|
政府関係 サイト9) |
約 97,500件
(70.2%)
約 61,800件
(61.2%) |
約22,100件
(15.9)
約17,100件
(16.9) |
19,300件
(13.9)
約 22,000件
(21.8) |
| NHKサイト10) |
約 541件
(70.2%)
約 766件
(58.4%) |
約 59件
(7.7)
約 44件
(3.4) |
約171件
(22.2)
約 511件
(38.9) |
| SNS11) |
4,897件
(82.0%)
6,574件
(72.4%) |
888件
(14.9)
2,019件
(22.2) |
190件
(3.2)
485件
(5.3) |
(4)現行の国語辞典の掲載例
▼ここ数年で改訂された国語辞典類では、主見出しとして「サステナブル」「サステナビリティー」を掲げるものが主流である(表2)。
▼一方、「サスティナブル」「サスティナビリティー」を掲載する国語辞典類は、多くない(表2)。
| 辞書 | 主見出し | 語釈中 |
|---|---|---|
| Ⓐ | サステナブル サステナビリティー |
サステイナブル ともいう サステイナビリティー ともいう |
| Ⓑ |
サステ(イ)ナブル サステ(イ)ナビリティ(ー) | |
| Ⓒ |
サステイナブル =サステナブル |
|
| Ⓓ | サステナブル |
サステイナブル 〔なまって〕サスティナブル |
| サステナビリティ(ー) |
サステイナビリティ(ー) 〔なまって〕サスティナビリティ(ー) |
|
| Ⓔ |
サステナブル サステナビリティー |
サステイナビリティー サスティナビリティー |
| Ⓕ | サステナビリティー | サステイナビリティー とも |
| Ⓖ |
サステナブル サステナビリティー |
サステイナブル とも サステイナビリティー とも |
| Ⓗ | サステイナビリティー |
(5)【参考】「イ」の脱落に関する類例
(塩田雄大(2023)から抜粋して再掲)
(6)席上での意見
- 提案に賛成する。調査で近年の短期間の変化を調べた点がとてもよかった。こうした語は変化が早く、調査結果の傾向から今後はさらにイがない形が増えていきそうだということがわかり、自信を持っておすすめできる。
- 単語ごとにそれぞれの慣用があり、規則で語形を決めるのはなじまない。一語一語について調査をして決めていくしかないもので、ここではきちんとした調査がなされているので問題ない。
- 「サステナブル」はここ1~2年でイのない形になってきた感じがする。
- このことばを知らないという人が現状で2割程度いるという結果から、放送で用いる際には言い添えや言いかえを考えたほうがよい場合もあると感じた。
議題4
語形の変更
「する+まい」「来る+まい」(決定)
1.しまい(未然形+まい)
2.すまい・するまい
1.来まい[こまい](未然形+まい)
2.来るまい
※ここで「これまで」と示したものは放送用語委員会での正式な決定事項ではなく、放送現場から寄せられた質問に対して放送用語委員会(1970年)において回答した事例であるが、これが決定事項に準ずる位置づけとして、これまで『NHKことばのハンドブック 第2版』(2005年)ほかに掲載されてきている。
現行の 『NHKことばのハンドブック』 での記述と、今回変更する箇所
動詞との接続のしかたは次の表に従う。
| ①標準的 | ②許容される | ③認められない | |
|---|---|---|---|
| サ変 |
しまい |
すまい するまい |
せまい |
| カ変 |
来まい
|
来るまい | きまい くまい |
| 五段 |
書くまい | 書かまい | |
| 上一段 |
見まい | 見るまい | |
| 下一段 |
考えまい | 考えるまい |
言いかえとしては次のような例がある。
〈例〉 書くまいと思っても
→ 書かないようにしようと思っても
▼なお、下記は基本的にこれまでのとおりとする(『NHKことばのハンドブック 第2版』で示してきた内容に準ずる)。
例 〇書くまい(終止形+まい)
- 例
-
1.見まい(未然形+まい)
2.見るまい1.考えまい(未然形+まい)2.考えるまい1.書けまい(未然形+まい)2.書けるまい1.選ばれまい(未然形+まい)2.選ばれるまい
▼現行の 『NHKことばのハンドブック 第2版』 の下記の記述は、考え方としては基本的に引き継ぐ。
ただし、「まい」はやや文語的な表現なので乱用しない。言いかえとしては次のような例がある。
一方で、「ブームに遅れまいと」「書こうが書くまいが」や「忘れまい」などといった形で、現代語として「~まい」が普通に使われる場合があることにも、留意する必要がある。
(1)過去の放送用語委員会での質疑応答から
| ①標準的 | ②許容される | 認められない | |
|---|---|---|---|
| サ変(~する) | ~しまい | ~すまい・ ~するまい |
~せまい |
| カ変(来る) | こまい | くるまい | きまい・くまい |
| 5段(書く) | かくまい | かかまい | |
| 1段(見る) | みまい | みるまい | |
| (考える) | かんがえまい | *かんがえるまい |
▼この1970年の放送用語委員会のあと、『NHK放送用語集』(1983年)⇒『NHK放送のことばハンドブック』(1987年)⇒『NHKことばのハンドブック』(1992年)⇒『NHKことばのハンドブック 第2版』(2005年)の「まい」の項において、ほぼ同内容の掲載を継承。
(2)国語辞典の記述
-
『精選版 日本国語大辞典』(2006年)
まい〘助動〙〔中略〕㋥現代語では、五段活用動詞には終止形に、上一段、下一段、カ変、サ変(「し」)の動詞・助動詞には未然形に付くほか、一段動詞の場合、終止形にも、カ変・サ変の場合、「くまい」「くるまい」「すまい」「するまい」のようにも接続する。 -
『明鏡国語辞典(第3版)』(2021年)
まい[助動 特活型〔中略〕五段動詞と助動詞「ます」の終止形に、上一段・下一段・カ変動詞と助動詞「(ら)れる」「(さ)せる」の未然形に付く。サ変動詞には「し」の形の未然形に付く(そんな説明では納得しまい)。上一段・下一段・サ変・カ変には、終止形にも付く(見るまい・納得するまい[納得すまい]・来るまい)。 -
『新明解国語辞典(第8版)』(2020年)
まい(助動・特殊型)〔中略〕動詞、助動詞「れる/られる・せる/させる・たがる・ます」の終止形に接続する。ただし、上一段・下一段・サ変・カ変動詞、助動詞「れる/られる・せる/させる」は終止形のほか未然形にも接続することがある(「見まい/しまい/侮られまい」など)。 -
『大辞林(第4版)』(2019年)
まい(助動)〔中略〕五(四)段活用の動詞および助動詞「ます」には終止形に接続し、上一段・下一段・カ行変格・サ行変格の動詞および助動詞「れる・られる」「せる・させる」には未然形に接続する(サ変では未然形のうち「し」の形に付く)。〔中略〕〔「まい」の接続のしかたは、時代によって、いろいろのゆれがみられる。近世までの接続は、四段活用とナ変の動詞には終止形に、ラ変には連体形に付くのが普通であるが、未然形に付いた例もみられる。一段活用・二段活用とカ変の動詞には未然形に付くのが一般であるが、終止形に付くこともある。サ変には未然形に付き、「せまい」が一般であるが、「しまい」の形もみられ、さらに「すまい」となることもある。現代語では、五段活用の動詞には終止形に、上一段・下一段・カ変・サ変の動詞およびこれらの動詞と同じ活用型の助動詞には未然形(サ変は「し」の形)に付くのが一般であるが、一段活用の動詞の場合は終止形にも付き、カ変・サ変の場合は「くまい」「くるまい」「すまい」「するまい」のようにも付く〕
(3)現行の学校教科書での掲載例
- まい
-
[主な接続] 終止形(五段以外は未然形にも接続)
[用例] 「あそこには行くまい。」
(中学校教科書『国語2』(2025年・光村図書)p.256) - まい
-
[主な接続] 終止形(五段以外は未然形にも接続)
[用例] 「約束は破るまい。」「帰る時間は六時は過ぎまい。」(中学校教科書『新編 新しい国語2』(2025年・東京書籍)p.241)
(4)先行研究での記述
-
鶴久(2002)「国語史研究における一つの試み(六)-助動詞マイの接続について-」
『久留米大学文学部紀要 国際文化学科編』 第19号
助動詞マイは四(五)段活用の活用語には未然形と終止形とに承接し、上下一段活用には未然形(連用形)・終止形に承接する。サ行変格活用では「セマイ」「シマイ」「スマイ(スルマイ)」と未然・連用・終止(連体形の終止用法)接続の三形が有り、カ行変格活用では「コマイ」「クマイ(クルマイ〈連体形の終止用法〉)」、そして「シマイ」の類推から「キマイ」と用ゐられることもある。このやうにマイの接続は複雑を極め錯綜しているのが現状である。かかるイビツともいふべき現象は語法の定石からすれば頗る異状と言はねばならない。(p.59) - 城田俊(1998)『日本語形態論』
スルにはスルマイとスマイ、シマイ、クルにはクルマイとキマイ(コマイ)がある。
注記 1.方言的にはシマイが関東・奥羽南部(新潟も)・東海東山・山陰・九州(南部を除く)、スルマイが九州地方、スマイが山陽・四国・九州東北部、その他、奥羽・北関東などは周辺部各地、に分布するという(松村、1969・240)。シヨオマイ、セマイは共通語としては認めがたい。(p.40) - 吉田金彦(1971)『現代語助動詞の史的研究』
「まい」は、動詞および一部の助動詞に付く。五段活用動詞や助動詞「ます」にはその終止形、上一・下一・カ変・サ変動詞や助動詞「せる」「させる」「しめる」「れる」「られる」などにはその未然形から接続することがある。ことにサ変には「しまい」「せまい」「すまい」「するまい」の四つの形を取り、接続形が不安定である。(p.305) - 奥村三雄(1969)「まい〈現代語〉」『古典語現代語 助詞助動詞詳説』
口語文典では、ふつう、五段活用および丁寧法「ます」の終止形、五段以外の動詞およびそれに準ずる助動詞の未然形につくのを原則としているが、現代語の実態は、もう少し複雑である。[改行] 現代、右のごとき原則がだいたい守られているのは、いわゆる標準語をもって任ずる書きことばの世界であろうか。学校教科書の用語は当然のこととして、その他、国語研究所編 『現代語の助詞助動詞』 所収の用例-昭和24、25年あたりの新聞雑誌類の用語-などを見ても、だいたい、原則どおりである。(p.239)※傍点は原文のとおり - 文部省・国語調査委員会(1917)『口語法別記』
カ行変格活用の「こまい」を、「くまい」又わ「くるまい」きまい」などゝも云い、サ行変格活用の「しまい」を「すまい」又わ「するまい」せまい」しょまい」などゝも云つて、全国、各地の混用わ、実に甚しく、区別することが出来ぬ、すべて用いぬがよい。(p.254)※原文のとおり
(5)調査結果
なお、年代差は全般的に明瞭ではないが、地域差がある程度見られる。「終止形+まい」の形を支持する人は、おおむね、西日本よりも東日本のほうが多い(図16)。
(東日本西日本別)
【参考①】過去の調査結果(アンケート)
「来る+まい」については、1980年代前半の時点で、どの層においても「クルマイ」が最も多く支持されていた(表3)。
| % | コマイ | クルマイ | キマイ | クマイ |
|---|---|---|---|---|
| 有識者 (100人) |
16 | 67 | 8 | 9 |
| 大学生 (100人) |
22 | 54 | 17 | 6 |
| 高校生 (100人) |
22 | 49 | 27 | 2 |
| アナウンサー (520人) |
17 | 71 | 8 | 3 |
【参考②】日本語コーパスから
BCCWJは書きことばがデータの中心であることもあり、「するまい」(終止形+まい)が首位であるという様相にはなっていない(なお、「来る+まい」「見る+まい」「考える+まい」については全体の件数がそれほど多くないため参考値として扱う)(表4)。
| するまい | しまい | すまい | 計 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 36 (18.1%) |
6913) (34.7%) |
9414) (47.2%) |
199 | |||
| 来るまい・くるまい | 来まい[読み不明] | 計 | ||||
|
615) (46.2%) |
716) (53.8%) |
13 | ||||
| 見るまい・みるまい | 見まい・みまい | 計 | ||||
|
417) (26.7%) |
1118) (73.3%) |
15 | ||||
| 考えるまい | 考えまい | 計 | ||||
| 0 | 30 (100%) |
30 | ||||
(6)席上での意見
- 提案に賛成する。「まい」は動詞の活用の種類によって接続のしかたが違うという珍しい助動詞である。こうしたものは、一般的に文法変化では統一されていくというのが変化の法則であると断言できる。
- 古い言い方であり現代語ではあまり使われないが、調査結果からいえば今回の提案が妥当である。
- 最近の傾向に合わせるということで、「するまい」「来るまい」を優先するという今回の提案でよい。
- これまで自分では「しまい」「くまい」と書いたことがない。
- ゆれも認めるという形なので問題ない。
- 「書くまいと思っても」のことでいうと、「まい」のほうが強い決意のニュアンスを感じるので、単純に「書かないようにしようと思っても」と言いかえればよいということでもないと思う。
藤井まどか(ふじい まどか)/ 中島沙織(なかじま さおり)/ 塩田雄大(しおだ たけひろ)