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本日、塩野義製薬が米政府から最大763億円の契約を獲得したというニュースが出ました。 金額の大きさに目が行きがちですが、中身を読むと話はずっと深い。 対象薬品は「フェトロージャ(セフィデロコル)」。 世界で初めて承認されたシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬です。 塩野義が自社で創製し、多剤耐性グラム陰性菌に対して有効な、いわば「最後の切り札」の一角です。 そもそも「抗菌薬」がなぜこれほど重要なのか。 虫垂炎の手術後、がん化学療法中の感染対策、出産時のリスク管理。 ICUに入っている患者の命をつなぐ管理。 これらすべての医療行為の安全は、「有効な抗菌薬が存在する」ことを前提に成立しています。 その前提が、今静かに崩れつつあります。 薬剤耐性菌(AMR)による感染症で、2019年には世界で年間127万人が命を落としています。 このまま対策が進まなければ、2050年には年間1000万人に達するという推計があります。 交通事故死者の世界合計が年間約135万人。それと同規模の死者がすでに出ています。 なぜ対策が進まないのか。 理由は至ってシンプルで、採算が合わないからです。 抗菌薬は「使えば使うほど耐性菌を生む」という性質があります。 だから承認されても、なるべく温存して使わない。 売れなければ利益は出ない。利益が出なければ開発に投資する理由がない。 このジレンマによって、大手製薬企業の多くがこの領域から撤退し続けてきました。 米国政府が選んだ解決策が、政府資金による長期購入契約です。 今回の契約内容は4本柱です。 ①米国内にフェトロージャの製造拠点を新設すること。 ②国家備蓄として調達すること。 ③ペスト菌(Yersinia pestis)や類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)といったバイオテロ脅威への適応拡大研究。 ④小児の院内肺炎・人工呼吸器関連肺炎への適応拡大のためのFDA申請。 つまりこれは、民間市場の論理では育てられない「安全保障上の必須薬」を税金で守る仕組みです。 プロジェクト名は「BioShield」。化学・生物・放射線・核の脅威への対策として整備された枠組みです。 そしてその相手として選ばれたのが、大阪に本社を置く塩野義製薬です。 なぜ日本企業が選ばれたのか。 塩野義は創業以来70年以上にわたり抗菌薬の研究開発を継続してきた、世界でも数少ない製薬企業のひとつです。 フェトロージャを含む新規抗菌薬を複数創製し、2023年には米国の抗菌薬開発企業Qpex Biopharmaを買収。 2025年にはサンディエゴに専用研究施設を開設するなど、米国での展開を着実に深めていました。 AMR対策に特化した国際ベンチマーク「AMR Benchmark 2026」でも大手製薬企業中2位に位置づけられています。 契約は初年度の確定分が約1,880億円規模の$119百万ドル、オプション行使で最大$482百万ドル(約763億円)に達します。 興味深いのは、米政府がこれほどの資金を日本企業に投じる一方で、フェトロージャを生んだ日本国内では薬価制度の下で市場環境が限定的な点です。 世界が「安全保障の要」と評価する薬が、開発した国の市場では育ちにくい。 次のパンデミックが「細菌」によるものだった場合、日本の医療体制はどこまで耐えられると思いますか? すべて繋がりましたね。😳
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日本経済新聞 電子版(日経電子版)
@nikkei
塩野義製薬、米政府から最大763億円の助成金 抗菌薬の製造や開発で nikkei.com/article/DGXZQO