「三幕構成」解説②「バック・トゥ・ザ・フューチャー」分析
April 22nd, 2020 17:52・All users
前回はハリウッド脚本術である「三幕構成」を解説しました。
今回は実際に「バックトゥザフューチャー」を三幕構成に当てはめながら分析していこうと思います。バックトゥザフューチャーはその人気と面白さはもちろんですが、お手本のような三幕構成の脚本としてもよく知られていて、ストーリーを勉強し始める人にめちゃくちゃオススメです。
僕もそれに倣って改めて分析し直してみたいと思います。
出来るだけバックトゥザフューチャー を見てない人にも分かるように書こうとは思いますが、結構限界もあるのでできれば未視聴の方は一回見ておくのをオススメします。
★第1幕
○オープニング(開始0分〜)
オープニングの役割は映画の第一印象を決め、「これはこういう映画ですよ」ということを観客に伝えることです。具体的には作品のテーマ、ジャンル、スタイルなどです。
発明家ドクの家に主人公の青年マーティが遊びに来るシーンで、この映画の第一印象を決定しています。ドクの家に溢れる発明品、その中にある巨大アンプでギターを弾こうとしてマーティは吹っ飛ばされます。
主人公のキャラクター、ドクが発明家である伏線、ジャンルはコメディ・青春・SFであること、などを伝えています。ドクの実験で時計を早めていたせいでマーティは遅刻してしまい、スケボーで走り出すところで「ザ・アメリカ」なオープニングテーマ「パワーオブラブ」が流れます。全ての映像で「科学×青春」というコンセプトが一貫して描かれています。完璧・・・シビれるぜ・・・
○セットアップ(開始7分〜)
セットアップでは誰が(Who)どんな状況で(Where)何をする(What)物語なのか、事前知識を伝えます。さらにセントラル・クエスチョン(解決しなければいけない問題)を設定します。(これらはセットアップ中に全部やらなくても、第1幕終了までに示されれば大丈夫というのが僕の意見です。)
マーティが登校し教頭に遅刻を咎められます。マーティが優等生では無いということが示されています。教頭に「マクフライ家は代々落ちこぼれだ」と罵られ、「僕が変えてみます」と反論します。ここでこの作品のセントラルクエスチョン、「マーティはマクフライ家の歴史を変えられるか?」が設定されています。サラッとやられているので少し見逃しやすいですが・・・僕も見直して今更気づきましたw
【補足】この作品のセントラルクエスチョンはパッと見「過去にタイムスリップしたマーティは現代に帰ってこられるか?」に見えます。多分これも正解ですし、これだけで面白いのがこの映画の凄いとこだと思います。ただし、これだけでは物理的な問題だけになってしまい、「心理的葛藤」が描けません。この映画ではマーティの心理的成長を描くために「マクフライ家の歴史を変えたい」というセントラルクエスチョンが設定されています。作り手側からするとこちらの方が重要です。これが無いとこの後の両親やライバルとのドラマが弱くなってしまうからです。【補足終わり】
この後マーティはバンドオーディションに落ち、恋人のジェニファーに愚痴り、家に戻り、マクフライ一家の説明が入ります。ここら辺はもう伏線祭りですごいですねホント・・・。しかし、一貫してマーティの「こんなマクフライ家は嫌だ!」という気持ちに沿って状況説明が進むので、観客もすんなり受け入れることができます。
これでセットアップ終わりです。
○インサイティング・インシデント(開始17分〜)
インサイティング・インシデントは「冒険への召命」とも呼ばれ、いよいよ本題のストーリーに入るためにツカミとなる事件が起きます。
自分の部屋で寝ているマーティの元にドクから電話で呼び出しが入ります。駐車場に行くとアインシュタイン(犬)だけがおり、ドクはどこ?と問いかけるとトラックの荷台からデロリアンが登場します。ただひたすらかっこいい。
【補足】セントラルクエスチョンの話に戻りますが、ウィキペディアによるとセントラル・クエスチョンは「インサイティング・インシデントと対になっており、インサイティング・インシデントの事件によって示される」とあります。この映画はこれには従っていません。「歴史を変えてみせます」と教頭に言うシーンはドクから呼び出されるシーンよりかなり前に描写されています。僕はこれが「マクフライ家の歴史を変えられるか?」というセントラル・クエスチョンを見逃しやすい原因になっていると思います。ただ、この映画は「マーティは過去に戻れるか?」というもう1つのセントラル・クエスチョンが強力に働いているので違和感なく見ることができます。【補足終わり】
その後ドクによるタイムマシンの説明が行われますが、テロリストの登場によりドクは撃たれてしまいます。
○ファースト・ターニングポイント(開始30分〜)
マーティはドクの死を見届け、テロリストから逃げるためデロリアンに乗り込みます。マーティはどうしようもない状況に追い込まれ、時速140キロを思い出し決意し、過去へタイムスリップします。
ここで第1幕終了です。
★第2幕
第2幕は「非日常」、冒険のスタートです。この映画にとって「非日常」は「過去の世界」です。(正確には「過去に戻って歴史を変える瞬間まで」です。その後は帰るだけ)
第2幕前半では過去の世界に飛び込んだ主人公が様々な障害に立ち向かい手がかりや仲間を得て行きます。ここは「バトル」とも言われ、一見順調に話が進みます。
○ピンチ1(開始42分〜)
第2幕の中心となるイベントです。「危機」のピンチではなく「挟む」のピンチです。
僕の解釈ですが、この映画の場合第2幕前半で最も重要なイベントは若い母親との出会いだと思います。これが後々マーティの最大の危機「存在の消滅」の始まりだからです。
○ミッドポイント(開始54分〜)
ミッドポイントは映画の中間地点あたりで、それまで順調に進んでいた話が一転し主人公に最大の危機が訪れます。主人公の今まで持っていた目標が壊されストーリーが正反対に進む、という機能があります。
バックトゥザフューチャー のミッドポイントは「写真の中のマーティ兄が消え始める」ところです。マーティに「存在が消えかかっている」という今までと異なった、かつ最大の危機が訪れます。
バックトゥザフューチャー では、第2幕前半のマーティの目的は「未来に戻るため手がかりを集める」でした。その結果「ドクと出会い、時計台に落ちる雷を使いデロリアンを動かす方法を思いつく」に至ります。ここまでは順調です。
ミッドポイント以降、第2幕後半でのマーティの目的は一転し、「両親をくっつける」という別のストーリーが始まります。
【補足】と、ここまで説明しといてなんなんですが、ミッドポイントの原理いまだによくわかってないんですよね・・・。「中盤で物語が一変すると面白い」ってのは感覚的には分かるんですが、「何でそれが必要なのか」についてはまだ研究中です。仮説ですが、「最大の危機」を演出するには今までと違う種類の危機を描く必要があるんじゃないかと思います。同じ種類だといくらスケールだけ大きくしても今までの戦いの延長線上になってしまうので、前半とのメリハリがつかない、みたいな【補足終わり】
○ピンチ2(開始82分〜)
第2幕後半の中心になるエピソードです。
第2幕後半を「両親をくっつける」ストーリーと捉えると、82分ごろから始まる「父親ジョージが母親ロレインを襲うビフと対決する」イベントがピンチ2になります。
面白い脚本をよく見ていくと、三幕構成を「重ねがけ」している場合がよくあります。サブストーリーにも三幕構成が見られるということです。高等テクです。
この映画のサブストーリーは「マーティの若い両親のラブストーリー」です。ピンチ1でサブストーリーが始まりピンチ2で終わるというパターンもよくあります。この映画でもピンチ1で両親のラブストーリーが息子登場でおかしくなり、ピンチ2でその決着が着くという構造になっています。その点でもバックトゥザフューチャー は秀逸だと感じます。
○セカンド・ターニングポイント(開始90分〜)
主人公が大きな決断をし、第3幕へと向かう分かれ目となるシーンです。
バックトゥザフューチャーのセカンド・ターニングポイントは主人公が過去の両親に別れを告げるシーンです。「存在の消滅」という最大の危機を克服し、「未来へ帰る」という最後の戦いに挑む覚悟を決める重要なシーンです。
実際に未来に帰るのはこの後ですが、主人公の「心理的成長」という観点から見るとマクフライ家の未来を祝福するこのシーンがピークであると考えるのが妥当じゃないかな〜と思います。
【補足】「物語全体の構造」に着目するか「主人公の感情の変化」に着目するかでターニングポイントの解釈は変わってきます。どちらが正解という訳でもないのですが、僕はキャラクターの心情に着目した方が漫画などの大衆娯楽には得だと思ってるのでそっちを採用しています【補足終わり】
★第3幕
第3幕では困難を乗り越えた主人公が最後の戦いに挑みます。
この映画での最後の戦いはもちろん「デロリアンを使い未来に帰ること」です。これでもかってくらいアクションをぶち込んでハラハラドキドキを演出してます。すげ〜
実はここにも小さいターニングポイントが仕込まれていて、「ドクを救うために次元転移を10分早く設定する」というところです。ここが主人公の最後の成長描写でしょうか。
【補足】シドフィールドによるとこういったポイントとなるシーンはたくさんあっても良いそうです。ただ、たくさんあると観客はどこを見ていいのか分からなくなるので、強弱をつける必要はあると思います【補足終わり】
未来に戻ると撃たれたはずのドクは防弾チョッキを仕込んでおり、実は手紙を捨てていなかったことがネタばらしされます。
無事家に帰ったマーティは、翌朝家の様子が一変していることに気づきます。そして映画はエンディングへと向かいます。
「未来へ帰る」「両親をくっつける」「マクフライ家の歴史を変える」「ドクの命を救う」と、これだけの量のテーマが同時進行ししかもそれぞれが深く影響し合っているのは本当にヤバいです。
○エンディング(開始106分〜)
はっきりここからとは言いづらいですが、エンディングを「後日談」という意味で考えるとやはり一晩開けた朝のシーンからがエンディングかなと思います。
「マクフライ家の歴史を変えられるか?」「未来へ帰れるか?」というセントラルクエスチョンへの解答は最終決戦ですでに示されているんですが、この映画は「すっかり変わったマクフライ家」を見せることでもう一回ダメ押しで解答を提示しています。
最後に続編の導入をやって終了です。最高〜〜〜〜
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という感じで、いかがでしたでしょうか。三幕構成を初めて知る方にも分かりやすく解説できていればいいなと思います。
自信がなかったり憶測でやっちゃってるところも多いのでご意見ご指摘大募集です。
次回なんですが、実は今回までは前フリというか、このシリーズ始めたのは僕の三幕構成に対する疑問と意見をまとめたい、というのが本当の目的なんですよね。
共有できる形にしていつでも人に見せれるようにしておいて、一緒に考えてくれる人を探そう!みたいな感じです。あわよくば誰かこれを読んだ人がまんま答えを教えてくれるのを期待してます。虫が良すぎるか・・・
では次回
つづく
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