メニュー

デジタル庁GCASガイド

3. 概要

2023/09/22 公開

3.1 ガバメントクラウドとは

ガバメントクラウドとは、公共情報システムの効果的かつ効率的な整備及び運用を推進するため、公共情報システムの整備又は運用において国と公共情報システム整備運用者が共同して利用することができるものとされたクラウド・コンピューティング・サービスを利用することができるようにデジタル庁が整備したクラウド環境であり、選定するCSPがサービス機能やリファレンスアーキテクチャとして提供するセキュリティ対策に加え、ガバメントクラウドとして必要と考えられるセキュリティ対策やガバナンス機能が適用されるクラウド環境である。
ガバメントクラウドでは、選定するCSPが提供するクラウドサービスのメリットを最大限享受できるよう、必要最小限のガバナンスおよびセキュリティ設定の適用を除き、原則として独自に共通的な機能・サービスを実装し提供することは行わず、可能な限りクラウドサービスをネイティブに利用することが出来る。
なお、情報システムの構築や運用は、独自にクラウドを調達する場合と同様、利用機関のポリシーや利用システムの要件を踏まえ、利用システムの責任において行う必要がある。

令和8年度において、ガバメントクラウドとして利用できるクラウドサービスはアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社のAmazon Web Services(以下「AWS」という。)とグーグル・クラウド・ジャパン合同会社のGoogle Cloud、日本マイクロソフト株式会社のMicrosoft Azure(以下「Azure」という。)、日本オラクル株式会社のOracle Cloud Infrastructure(以下「OCI」という。)、さくらインターネット株式会社のさくらのクラウド(以下「さくらのクラウド」という。)となる。

3.2 対象システム

ガバメントクラウドの対象システムは、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」において対象とされている情報システム、「ガバメントクラウド利用検討の基本的な考え方について」において公共情報システムと定義されている情報システムである。

 
・「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」の「1.2 適用対象」より抜粋
本方針は、デジタル・ガバメント推進標準ガイドラインが適用されるサービス・業務改革並びにこれらに伴う政府情報システムの整備及び管理に関する事項に適用するものとする。
ただし、特定秘密(特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)第3条第1項に規定する特定秘密をいう。)及び行政文書の管理に関するガイドライン(内閣総理大臣決定。初版平成23年4月1日。)に掲げる秘密文書中極秘文書に該当する情報を扱う政府情報システムについては対象外とする。
また、安全保障、公共の安全・秩序の維持といった機微な情報及び当該情報になり得る情報を扱う政府情報システムについても対象外とする。

・「ガバメントクラウド利用検討の基本的な考え方について」の「3.1 公共情報システムの範囲」より抜粋

デジタル行政推進法第二十三条第一項において、「公共情報システム」は、「国又は地方公共団体の事務の実施に関連する情報システム」とされており、具体的には、以下の情報システムを想定している。
なお、公共情報システムといっても多種多様の情報システムが存在しており、①~⑤では分類できない類型であっても、国又は地方公共団体の事務の実施に関連するシステムに該当するものとして利用を希望する場合には、所管部局等からデジタル庁(ガバメントクラウド担当)に申請があれば、内容を確認の上、公共情報システムとして認める場合もある(⑥に該当)。

① 政府情報システム及び地方公共団体等の情報システム
② デジタル行政推進法に基づく行政手続等に係る独立行政法人等情報システム
③ 政府又は地方公共団体職員に利用されている独立行政法人等情報システム
④ 政府又は地方公共団体情報システムとデータ連携している独立行政法人等情報システム
⑤ 重点計画に記載の公共・準公共分野に該当し、制度官庁が標準仕様を定める情報システム(※)
⑥ ①~⑤に該当しないものであって、国又は地方公共団体の事務の実施に関連する情報システムに該当するものとして、所管部局等からの申出に基づきデジタル庁が公共情報システムと認めた情報システム(※)
※ 民間事業者が整備又は運用する場合を含む。

3.3 全体像

ガバメントクラウドではデジタル庁がCSPと契約し、クラウド利用料を支払い、利用システムに対して、デジタル庁より利用環境の払い出しを行う。

3.3.1 環境の全体像

ガバメントクラウドではCSPごとに全体管理のための「共通領域(全体管理機能)」と「利用システム向け領域」が存在する。

各利用システムは、利用システム向け領域に払い出された分離された環境のなかにシステムを構成する。各環境は、独立した管理機能を保持しており、環境ごとの管理画面や管理機能を有し、利用システムが操作できる。また、許可しない限り他環境とネットワーク的に接続されることはない。

環境は本番と検証のリソース混在防止、課金単位の分離のため、本番環境と検証環境を分けて利用すること。

ガバメントクラウドでは原則として開発環境は提供しないが、CI/CDを実施する利用システムについてのみ開発環境の提供を行う。その場合、インフラ部分のCI/CDについては、ガバメントクラウドで指定するツールやテンプレート/IaCファイルを用いてCI/CD環境を構成すること。それ以外のCI/CD環境をインフラ部分に選択する場合は、その合理性がガバメントクラウド管理組織で認められる場合のみとする。アプリケーションのCI/CD環境については、インフラ部分と同じ構成でも、独自の構成でも構わないものとする。なお環境とは具体的には以下を指す。

  • AWS:アカウント
  • Google Cloud:プロジェクト
  • Azure:サブスクリプション
  • OCI:コンパートメント(一部テナント)
  • さくらのクラウド:プロジェクト

 
共通領域(全体管理機能)

  • システム共通の管理機能を保持。
  • 利用システムのシステム管理者の払い出しや監査ログの収集管理、セキュリティアラート情報の収集などを想定。
  • デジタル庁内にて構築・運用され、利用システムに必要機能が連携される。

 
利用システム向け領域

  • 利用システムの各環境が(本番環境・検証環境などの単位)テンプレートで払い出され、その環境内に利用組織側で利用システムを構築する。
  • 利用組織側でアプリケーションや関連サービス・実行環境を配置・構築が可能。その際、基本アーキテクチャのテンプレート/IaCファイルや利用ガイドはデジタル庁より提供される。
  • 利用システムの各環境用の、構成ルール、セキュリティ監視等の一部の基本的なセキュリティ機能は、環境払い出し時に基本設定済み。
  • システムごとの追加運用機能(アプリ監視やログ出力監視、アラート設定など)やシステムとして必要なセキュリティ対策機能は、ガイドを見ながら利用側で設定する。

利用システム向け領域A、利用システム向け領域B、全体管理の3つの枠組みで構成されたシステムアーキテクチャ図です。利用システム向け領域Aには、本番環境と検証環境の2つの環境が定義されており、各環境内には上から順にフロントアプリ、API、バック、個別運用、IaC管理のコンポーネントが配置されています。利用システム向け領域Bにも同様に本番環境と検証環境があり、各環境内にはAP、DB、個別セキュリティ、個別運用、IaC管理が配置されています。図の右側には三点リーダーが表示されており、同様の領域が他にも存在することを示唆しています。図の下部には全体管理の枠があり、ガバナンス、共通セキュリティ、ログ収集の3つの共通機能が横並びで配置されています。各領域の個別運用やIaC管理は、下部の全体管理機能によって統制される構造となっています。

図 3‑1 環境の全体像

 
デジタル庁より提供されるテンプレート/IaCファイル

  • ガバメントクラウドテンプレートを構成する自動適用テンプレート、必須適用テンプレート、サンプルIaCファイル及び個別適用IaCファイル(国の行政機関向け)の概要は下表のとおり。
    自動適用テンプレート、必須適用テンプレートは、環境払い出し時にデジタル庁で自動的に適用させるもの(共通)と、利用システム側で必要なパラメータ等を入力して実行するもの(システム単位)の2種類に分かれる。
  • サンプルIaCファイルは、環境構築に必要な典型的な構成を定義したIaCファイルであり、利用システム側にて、環境構築時に適宜内容をカスタマイズし使用する。
  • 個別適用IaCファイル(国の行政機関向け)は、利用システム側で適宜判断して任意で適用するものであり、適用するCSP環境、あるいはガバメントクラウド全体の利便性やガバナンスの向上を目的としている。
  • 詳細については、GCASアカウントを取得の上、GCASガイド(メンバー専用ページ)で公開されているガバメントクラウドテンプレート(メンバー専用ページ→ガバメントクラウドテンプレート/ポリシー→ガバメントクラウドテンプレート/ポリシーのダウンロードページ)を参照すること。

 
表 3‑1 テンプレート/IaCファイル一覧

テンプレート/IaCファイル適用適用タイミングセキュリティ関連サービスの各種設定各種リソースの構築・設定
自動適用
テンプレート
デジタル庁にて適用済環境払い出し時・予防的統制に係るサービスの設定
・発見的統制に係るサービスの設定
環境に対する初期設定
必須適用
テンプレート
利用システム側にて適用(必須)
(初回適用後カスタマイズ可)
・環境払い出し時
・バージョンアップ時
・予防的統制に係るサービスの設定
・発見的統制に係るサービスの収集対象
 とすべき情報の設定
・発見的統制に係るサービスによる不正
 検出時の通知先の設定
サンプル
IaCファイル
利用システム側にて適用(任意)
(カスタマイズして適用)
環境構築時・VPC構築
・各種リソースの構築
 (サンプル構成を活用)
・監視通知設定
個別適用
IaCファイル
(国の行政
機関向け)
利用システム側にて適用(任意)環境払い出し後
に随時

3.3.2 ユーザーの全体像

ガバメントクラウドでは、ガバメントクラウド利用組織からの利用申請の情報に基づき、デジタル庁より必要な数のシステムを稼働させるクラウド環境が払い出される。また、その環境を管理する管理者権限ユーザーが提供される。管理者権限ユーザーはシステムの運用責任者、運用リーダーに向けたもので、環境に対してのほとんどの権限を持つ。なお、管理者権限以外の各ユーザーアカウントは令和6年度より展開される、GCASアカウントによる各CSP環境へシングルサインオン機能の利用前後で以下の対応とする。

  • シングルサインオン機能利用開始前
    • 管理者権限ユーザーが各CSP環境内でユーザーアカウントを作成する。
  • シングルサインオン機能利用開始後
    • GCASアカウントによる各CSP環境へのシングルサインオンが可能になるため、各CSP環境内でユーザーアカウント作成は不要であり禁止する。

管理者権限ユーザーに付与される権限については、技術マニュアル「ユーザー管理方法」を参照すること。管理者権限ユーザーが侵害される可能性を減らすため、本番環境の管理者権限ユーザーの人数は3名までを推奨する。通常の運用時は、必要最小限の権限を付与したユーザーで実施する。

ガバメントクラウド利用組織、デジタル庁ガバメントクラウド管理組織、開発運用委託業者の三者の関係性を示す構成図です。デジタル庁の管理組織内にあるGCASというシステムでは、利用申請を受けてアカウント発行を行う機能があります。ガバメントクラウド利用組織のGCAS責任者が利用申請を行い、GCASからアカウントが発行されます。発行されたAWSアカウントは、システムA、システムB、システムCの各管理者に割り当てられます。各システム内には、AWSアカウントの本番環境と検証環境が用意され、それぞれにVPCが配置されています。開発運用委託業者の開発担当者、テスト担当者、運用担当者は、割り当てられた各システムに対して作業を行います。また、GCASのアカウント発行機能から、各システムの管理者および委託業者の運用担当者へアカウント情報が提供される流れが矢印で示されています。

図 3‑2 ユーザーの全体像(国の行政機関)

ガバメントクラウドの利用形態である単独利用方式と共同利用方式を比較した構成図です。左側の単独利用方式では、ガバメントクラウド利用組織の管理者が、開発運用委託業者の開発担当者、テスト担当者、運用担当者と共にシステムを管理します。システム内にはAWSアカウントの本番環境と検証環境があり、それぞれにVPCが構築されています。デジタル庁ガバメントクラウド管理組織が提供するGCASに対し、GCAS責任者や管理者が利用申請を行い、アカウント発行を受ける流れが示されています。右側の共同利用方式では、地方公共団体A、B、Cが個別のAWSアカウントとVPCを利用します。これらの運用は運用管理補助者が代行し、補助者内の管理者、テスト担当者、運用担当者、開発担当者がデジタル庁のGCASを通じて利用申請やアカウント発行の手続きを行います。単独利用は一つの組織が直接管理するのに対し、共同利用は複数の団体が運用管理補助者を介して利用する構造になっています。

図 3‑3 ユーザーの全体像(地方公共団体等)

3.3.3 ネットワークの全体像

ガバメントクラウドとして提供する複数のCSPと利用組織間のネットワークは国の行政機関と地方公共団体等で繋ぎ方が異なる。

国の行政機関においてはガバメントクラウドでの一般ユーザー・各府省拠点からの接続やシステム間連携の接続はセキュリティが十分担保された上でインターネット経由での接続を基本とし、同一CSP間のシステム連携は、CSPサービスの利用を検討すること。ただし、各府省拠点からの接続について、インターネット経由での接続を許容できない場合は、デジタル庁ガバメントソリューションサービス(以下GSSネットワークとする)経由での接続や専用線を用いた閉域網での接続を検討すること。利用組織共通で利用するサービスがガバメントクラウドで稼働する場合の拠点やデータセンタからの接続や、共通サービスへのガバメントクラウド上のシステムからの利用で使用する接続も提供される。

地方公共団体等においては「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に従い接続すること。詳細については、「地方公共団体情報システムガバメントクラウド移行に係る手順書」を参照すること。

接続に関する技術的な詳細や接続方法の選択フロー、システム間連携については、GCASアカウントを取得の上、GCASガイド(メンバー専用ページ)で公開されているドキュメントを参照すること。

3.4 体制

ガバメントクラウドの責任範囲に係る企画・立案、調達及びサービス提供は、デジタル庁が担当する。また、ガバメントクラウドに係る体制および連携は以下体制図の通りである。

デジタル庁、各府省、地方公共団体、およびクラウドサービスプロバイダー間のクラウドCoE(Center of Excellence)を中心とした連携体制を示す図です。図の右上にある凡例では、茶色の双方向矢印が連携、黄色の矢印が技術的問い合わせ、緑色の矢印がクラウド化支援、青色の矢印が体制不足時の支援を表しています。デジタル庁内には全体クラウドCoEが設置され、ガバメントクラウドチームの職員、民間専門人材、支援クラウドCoEとしての事業者が含まれます。全体クラウドCoEは、各府省クラウドCoEおよびAWS、Google Cloud、Azure、OCI、さくらのクラウドといったクラウドサービスプロバイダーと連携しています。また、全体クラウドCoEは各府省クラウドCoEに対して体制不足時の支援を行い、デジタル庁と各府省の共同プロジェクト型システムや政府情報システムのうち政策優先度の高いシステムに対してクラウド化支援を提供します。各府省内には各府省クラウドCoEがあり、府省PMOの職員や民間専門人材等で構成され、管轄する政府情報システム等にクラウド化支援を行います。デジタル庁内には地方業務システム基盤チーム(兼地方公共団体クラウドCoE)も存在し、全体クラウドCoEと連携しながら、地方公共団体の情報システムに対してクラウド化支援を行います。各システム(政府情報システムや地方公共団体情報システム)からは、AWS、Google Cloud、Azure、OCI、さくらのクラウドに対して技術的問い合わせが行われる構成となっています。各システム内にはPJMOの職員、工程管理支援事業者、開発・運用事業者が配置されています。

図 3‑4 クラウドCoEによる各府省・地方公共団体支援体制

 
デジタル庁では以下を行う。

  • デジタル庁(デジタル庁)から利用システムに対してクラウド利用料を調査した上で、クラウドサービスに係る予算要求及び調達を一括して行う。
  • 全体管理アカウントを管理し、利用システムに対し、環境利用のためのアカウントや管理者用のアカウントを払い出すとともに、各利用システムのクラウド利用料を一括して支払う。
  • 利用システムからのガバメントクラウド自体やそのテンプレート/IaCファイルに関する問合せ対応、FAQの整備、ガバメントクラウド利用に関するドキュメント、利用システムの円滑な運用のサポートを提供する。
  • クラウドCoE体制を通して、利用システムが行うクラウド環境移行作業(環境構築、ネットワーク接続、データ移行等)に関して支援を行う。
  • ガバメントクラウドが推進するモダンアプリケーション化に向けて、企画段階を含む各工程における助言等支援を行う。

3.5 責任分界点

ガバメントクラウドの責任分界点はクラウドサービス事業者、デジタル庁、利用システムに分けられる。

デジタル庁の責任範囲はインフラ層に限定され、各プロジェクトのアプリケーションを中心としたプロダクト管理は利用システムの責任となる。

ガバメントクラウドにおける責任共有モデルを示す図です。上から「各プロジェクトの責任範囲」、「ガバメントクラウドの責任範囲」、「CSPの責任範囲」の3つの階層で構成されています。各プロジェクトの責任範囲には、データ、アプリケーション、マネージドサービス構成、ミドルウェア/OS、ネットワーク構成(システム内/インターネット接続)、セキュリティ管理(認証、暗号、ファイアウォール他)、開発運用体制が含まれます。ガバメントクラウドの責任範囲には、ガードレール(全体利用ポリシー)、テンプレート/IaCファイル(リファレンス構成)、環境(払い出し)、ガバメントクラウドとしてのセキュリティ設定、アプリ推奨構成ガイド、コンサルテーション、トレーニング、ガバメントクラウド窓口(平日9:00-17:00)、ガバメントクラウド運用体制が含まれます。CSPの責任範囲には、マネージドサービス、クラウド基盤(コンピュート、ストレージ、ネットワーク、リージョン他)、クラウド基盤セキュリティ、CSPサポート(24/365)が含まれます。図の右側では、各プロジェクトの開発運用体制から、ガバメントクラウドの各種ガイドや窓口、およびCSPサポートへと矢印が伸びており、相互の連携や支援体制が示されています。

図 3‑5 責任分界点の全体像

3.5.1 情報資産の責任範囲

データ、アプリケーション、ソフトウェア、ハードウェアといった情報資産の観点から見た責任範囲のイメージは下図のとおり。各利用システムにて独自にクラウドサービスを調達する場合と同様に、CSPから提供されているIaaS、PaaS、SaaSを利用し、各CSPの責任共有モデルに応じて、利用システムの責任の下、システム稼働環境を設計・構築・運用する。ここで、ガバメントクラウドとしては、政府情報システムのモダンアプリケーション化推進の観点から、CSPが提供するマネージドサービス等の活用を積極的に推奨する。利用システムの要件により、やむを得ず持ち込みソフトウェア・ミドルウェアを利用する場合などは、クラウドサービスとの重複投資がないよう留意すること。

利用システムはクラウドサービスを直接利用できるため、クラウドサービス自体のサービスレベル(SL)は、各CSPが定めるSLAに準拠するものとする。クラウドサービス標準のSLAを参照しつつ、各システム自体の可用性や業務継続性の確保は、利用システムの責任において、十分に技術的対応策を検討する必要がある。ただし、止むを得ない場合については、大規模な天災等の不可抗力等と同様の扱いとすることを推奨する。

 
ガバメントクラウドにおける責任分界点を示す図です。責任範囲は上から「各プロジェクトの責任範囲」、「ガバメントクラウドの責任範囲」、「CSPの責任範囲」の3つの階層で構成されています。最上段の「各プロジェクトの責任範囲」には、データ、アプリケーション、持ち込みソフトウェア、API連携、クライアント環境、エンドポイント対策およびデータ保護、ネットワークセキュリティおよびトラフィック保護、IDおよびアクセス管理、IaaS、PaaS、SaaS利用が含まれます。中段の「ガバメントクラウドの責任範囲」には、ガバメントクラウドテンプレートが含まれます。最下段の「CSPの責任範囲」は、SaaSおよびPaaSとIaaSの2つの領域に分かれています。SaaSおよびPaaS領域には、マネージドサービス、データベースサービス、仮想サーバーサービス等が含まれます。IaaS領域には、コンピュート、ストレージ、ネットワーキングの各リソースと、ハードウェアおよびグローバルインフラストラクチャーを構成するリージョン、アベイラビリティゾーン、エッジロケーションが含まれます。

図 3‑6 情報資産の責任範囲

 
クラウドの責任共有モデルを説明する図です。水平線で上下に分かれており、上半分は各プロジェクトの責任範囲、下半分はCSP(クラウドサービスプロバイダー)の責任範囲を示しています。各プロジェクトの責任範囲では、可用性や業務継続性の確保のために各システムの責任で技術的対応策を検討することが求められ、その対象としてデータ、アプリケーション、マネージドサービス構成、ミドルウェア/OS、ネットワーク構成(システム内/インターネット接続)の5つのレイヤーが定義されています。CSPの責任範囲では、サービスレベル目標(SLA)は各クラウドサービスが定めるSLAに準拠するとされており、その対象としてマネージドサービス、クラウド基盤(コンピュート、ストレージ、ネットワーク、リージョン他)の2つのレイヤーが定義されています。

図 3‑7 可用性確保の責任範囲

3.5.2 セキュリティの責任範囲

各プロジェクトは、利用システムが必要とするセキュリティ水準の確保に向けて、必要なリスク分析やセキュリティ対策を設計し、クラウドのマネージドサービスを活用しながら実装する。ガバメントクラウドから提供する自動適用テンプレート、必須適用テンプレートは、クラウド設定に関するセキュリティ監視機能を提供するためこの実装に利用できる。

セキュリティインシデントのアラート監視や対応は利用システムの状況を把握する利用システムの運用組織が責任を持つ。デジタル庁では、共通的なリアルタイムでのセキュリティ監視は行わない。ただし、ガバメントクラウド全体としてセキュリティ状況を把握し、全体としてのセキュリティレベルの低下を防ぐため、各システムのセキュリティアラートは統計的に処理し利用する。

なお、セキュリティ水準を確保する上で基礎となる利用するクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)自体の保護は、前述のとおり、責任共有モデルの下、管理主体であるクラウドサービス事業者の責任範囲となる。

 
ガバメントクラウドにおけるセキュリティの責任共有モデルを3つの階層で説明する図です。最上段の「利用システムで確保する水準」には、システム要件に応じた独自のセキュリティ機能実装、PaaSおよびSaaSレイヤでのセキュリティサービスの有効活用、セキュリティアラート監視が含まれます。補足として、セキュリティサービスのみで要件を満たせない場合は独自に機能を実装すること、利用システムの責任においてセキュリティ対策を実施することが記載されています。中段の「ガバメントクラウドで確保する水準」には、ガバメントクラウド管理組織におけるPaaSおよびSaaSレイヤのセキュリティ対策支援が含まれます。補足として、各種セキュリティサービス活用のためのテンプレート提供や技術支援、ドキュメント提供を行い、過剰な水準とならない範囲で利用システムを支援することが記載されています。最下段の「クラウドサービス事業者で確保する水準」には、IaaS、PaaS、SaaSレイヤにおけるクラウドサービスの保護が含まれます。補足として、クラウドサービス事業者が責任を持つ範囲についてはSLAに準拠し、クラウドサービス側に任せることが記載されています。

図 3‑8 セキュリティの責任範囲

 
前の章へ | 次の章へ