海外識者、高市政権の積極財政に注文 諮問会議で「PB黒字視野」提言
高市早苗政権が「責任ある積極財政」を慎重に進めようとしている。26日に開いた経済財政諮問会議には海外から2人の経済学者を招き、今後の政権の財政運営に関して意見を交わした。2人からは積極財政への注文があった。
意見を聞いたのは、米マサチューセッツ工科大学のオリヴィエ・ブランシャール名誉教授と米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授の2人。ともにマクロ経済が専門で、国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めた経験がある。
ブランシャール氏は日本の現在の債務水準が高いとして「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字を視野に入れるべきだ」と提言した。日本の政府債務残高の国内総生産(GDP)比は直近で240%に上り、主要7カ国(G7)で突出する。「名目債務の伸びを名目GDPの伸びと同程度に抑えることを最低限の目標とすべきだ」と付け加えた。
ロゴフ氏は足元で金利が上昇局面にあることから、PBの赤字をゼロに近い水準に保つべきだと主張した。2008年のリーマン・ショック以降の低金利環境は例外だったとして、債務残高のGDP比を下げる余地を確保すべきだと訴えた。
高市政権は財政健全化の指標として、この債務残高のGDP比を重視する。これまでの政権がかかげてきた単年度でのPB黒字化という健全化目標は、数年単位での黒字をめざす方向に見直す。
これに関連し、ブランシャール氏は「明確な最終目標を置き、計画期間の末には少なくとも債務残高GDP比を安定化すべきだ」と提起した。
高市首相は毎年度の予算編成について、年度途中で補正予算を組むことを前提とするのをやめ「必要な予算は可能な限り当初予算で措置する」との考えを示してきた。ロゴフ氏は「予見可能性を高め、官民双方の投資を支えることにつながる」と同意した。
人工知能(AI)や半導体といった17分野に重点投資する政権の成長戦略を巡っても議論した。高市首相は「日本は国内投資が圧倒的に不足し、潜在成長率が低迷している」と投資拡大の必要性を強調した。
ブランシャール氏は「国債を財源とした実行が自動的に正当化されるわけではない」とクギを刺した。防衛や危機管理への投資は将来の歳入を十分には生まないとし、透明性確保のため「投資を別枠で管理し、歳出と将来見込まれる歳入を明示すべきだ」とした。
高市首相は今夏に初めての経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の策定を控える。政府の方針づくりに際し、公の場で海外の有識者と意見交換する手法は、第2次安倍晋三政権と似ている。
安倍政権は16年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏を政府の会議に招き、当時予定していた消費税の10%への引き上げに関し、先送りの提言を受け取った。17年には諮問会議に出席してもらい、教育予算の拡大をにらんで布石を打とうとした経緯がある。
高市首相がかかげる積極財政は、財政悪化の懸念から市場関係者の間での警戒感は強い。円相場は1ドル=159円台まで下がっており、長期金利も上昇傾向にある。有識者からの注文にも耳を傾けながら財政運営を丁寧に進めているという姿勢を表に示すことで、こうした懸念を払拭する狙いがあるとみられる。
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(更新)- 仲田泰祐東京大学大学院経済学研究科 准教授ひとこと解説
ブランシャール氏とロゴフ氏は優れた研究業績だけでなく、実務経験も有する類い稀なマクロ経済学者です。 二人とも長年アメリカ・EUの財政政策・金融政策の議論にリアルタイムに貢献し続けており、その知的体力には頭が下がります。
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