「東京がつまらない街になった」と言われる原因について
こんにちは!株式会社narrativeです!
株式会社narrativeは、奈良県を中心に古民家や歴史的建造物といった、いわゆる「古い建物」を利活用したまちづくり事業を展開している会社です。
先日、「マネー現代」で公開されたこの記事が話題になっていました。
この記事は「再開発によって渋谷がつまらなくなった」というのが主題ですが、Xでは「渋谷だけじゃなく六本木もそうだ」「むしろ東京全体がそうだ」「今おもしろいのは池袋や上野」などなど、東京全体の話として盛り上がっていました。
本日はこの、「東京はつまらなくなったのか?」を主題として書かせて頂きます。
Xを眺めていて「つまらなくなった」と言われている街は渋谷や六本木など再開発が進む場所が多く、「再開発が悪い」といった論調を一定数見かけます。
かと言って大井町トラックスや高輪ゲートウェイシティ、大阪梅田のグラングリーンなど、ポジティブな意味で話題になっている再開発もあるので、「再開発=悪」と一概に言うことは出来ないのではないでしょうか。
私は、「つまらなくなった」と言われる街の共通項は「極端な地価の高さ」ではないかと思っていて、突き詰めると「地価があがることで街がつまらなくなる」という相関があるのではないかと考えています。
〇「返答」を求められると街がつまならくなる
以前に書いた記事で指摘した事でもあるのですが、渋谷六本木など、元々地価が高いエリアで大規模な再開発をするとなると、かかる費用は莫大なものになります。
数千億円規模、下手をすると1兆円を超えるようなプロジェクトになるため、企業が独力で開発を行うことはもはや不可能です。
となると行政や金融機関、投資家その他、様々な企業・団体にプロジェクトへの参加を呼びかけ、資金を調達し、その資金をもって再開発を進めることとなるのですが、参加する団体が増えれば増えるほど様々な思惑が絡むことになります。この合意形成が至難の業です。
核となっている会社が再開発の設計図を、ステークホルダーとなる企業・団体に持っていくとしましょう。そこではこういう質問が飛び交います。
「なんでこの大きさなんですか?」
「なんでこのデザインなんですか?」
「なんでこの空間なんですか?」
こういった質問に対して、「その方がカッコいいからです」みたいな、ふわっとした返答は許されません。費用対効果その他、エビデンスとなるものをくっつけて説明する必要が出て来るため、そうなると結局、どこかに前例があるものしか作れなくなりますよね。
「あそこでこういうものを作った時にこれぐらいの効果がありました。だからこの建物にも適用するとこれぐらいの効果が出るはずです」
のように。
有名な建築家に仕事が集中するのも結局はこの理屈です。あちこちに実例があるので、「なぜこの人に頼むのか」という部分でステークホルダーの方々を説得しやすいんですよ。
つまり、地価の高いエリアの大規模な再開発となると前例主義におちいりやすくなります。もちろん、本当の意味で最初のチャレンジであれば冒険的な試みも通るのかもしれませんが、いったん成功事例が出来るとどんどんその事例をなぞったものばかりが量産される事になります。
六本木ヒルズは確かに革新的で新しい試みでしたが、その後六本木ヒルズをなぞったような開発がされてしまうのはこの前例主義が原因です。
大阪のグラングリーンも実にチャレンジングな成功事例だと思いますが、この成功を受け、これからは「グラングリーンみたいなもの」が量産されやすい土壌になってしまうのではないかと考えます。
結局、「なぜこれを作るのか」という質問に対して明確な回答が出せるのは前例があるものに限られてしまい、その結果「どこかで見たようなもの」「他にもあるようなもの」が出来上がってしまうから街がつまらなくなるという要因があるのではないかと考えています。
〇坪単価に窒息しかける街
そして、入るテナントも同じです。
地価の高いエリアでの再開発となると、そこに入居するテナントの家賃も高くなります。家賃が高いと当然初期費用も高くなります。
そこまで地価の高いエリアで無ければ、飲食店を開くのに1,000万円程度の資金でまかなえることもありますが、大規模再開発の中核ビルに入居するとなると初期費用で5,000万円~くらいの金額感になります。そうなると当然、その費用を払う体力のある企業しか入居できません。
つまり、再開発の新しいビルには「既にどこかで成功しているお店」しか入居することが出来ないんです。当然、「そこにしか無いもの」は生まれづらくなります。これもまた、ひとつの前例主義です。
更に、そういったお店は原価に「家賃」が乗ってしまうため、客側が支払う代金のうち、相当部分が家賃に吸収されてしまいます。そうすると、どうしても原価やサービスを削る必要が出て来るのです。「本店は素晴らしいのに、あそこの支店は微妙」といったケースが出て来るのはこういう理屈です。
この仕組みがある以上、家賃の高い場所で、本当に美味しいものを安価で提供することは難しくなるんですよね。つまり、テナントが坪単価に窒息しかけているんです。
〇美味しいカレーは間借りのカレー
以前、「本当に美味しいのは間借りのカレー屋」という発言を聞いて「なるほどな」と思ったことがあります。
間借りのカレー屋さん、つまり夜営業のBARの昼間の空き時間帯を借り、趣味半分でカレーを作って提供しているようなお店こそが本当に美味しいカレー屋さんである、と。そういう形態のお店、確かに増えてますよね。
間借りのカレー屋であれば初期費用が安く抑えられますし、またオーナーもカレー屋が本業ではないケースが多いため、費用対効果を考えず、思う存分に時間とコストをかけて自分が「本当に美味しい」と思うカレーを追求できるんです。
これが、どこかにテナントを借りて、本業としてカレー屋をすることになれば当然、家賃だの人件費だの食材費だのを計算し、利益が残るように妥協するべきところは妥協して、「ある程度美味しいカレー」を提供することになるわけですが、そういった、ある意味計算で作ったカレーは「素人が採算度外視でこだわりまくったカレー」に勝てない、ということなのかな、と思っています。
似たような話に、ゲーム会社カプコンの創業者である辻本氏が作ったワイナリー、「ケンゾーエステイト」があります。言うまでもなく、ゲームとワインには何の相関もありません。
辻本氏がカプコン創業によって得た莫大な資金を投下し(私財100億円以上とも言われています)、土から何から、あらゆるものにこだわって作り上げのがケンゾーエステイトなのですが、そのワイナリーで出来上がったワインは世界中のあらゆる賞をとり、まだ歴史の浅いケンゾーエステイトが一躍、世界的なワイナリーの仲間入りを果たしました。
これもまた、「採算が合うかどうか?」を考えながら事業を進めていたら実現出来ていなかった偉業ではないかと思います。
〇面白い街とは
街づくりも似たようなところがあるのかもしれません。
例えば、私が「面白い」と思っている街のひとつに徳島県の神山町があります。地域おこしの成功事例としてご存知の方も多いかと思いますが、徳島県の神山町という、言ってしまえば山間部の過疎の町が先進的な事例に果敢にアタックし、IT企業のサテライトオフィスが続々集まり、新しい高専も出来て全国的な注目を集めています。
この、神山町の躍進には名刺管理サービスであるSANSANが最初にサテライトオフィスを神山町に設置したことが大きな要因になっていると思っているのですが、SANSANの創業者である寺田氏はその後、私財まで投じて神山町に高専を作り、「面白い街、神山」を牽引しておられます。
恐らく、寺田氏は「これが儲かるだろう」という計算でお金を出しているのではなく、「面白いから」「必要だから」といった、ある意味採算を度外視した目線を持っているからこそこういった行動を取れるのではないでしょうか。その採算を顧みない個人の熱狂が、結果として面白い街を産みます。
つまり、突き詰めると「面白い街」「面白い店」というのはチームが計算しながら作るのものではなく、個人の熱狂に引きずられることによって生まれるものなのではないでしょうか。
そう考えると街づくりの仕事をしているひとりの人間として、「私はいま、目の前の仕事に熱狂出来ているだろうか?」は常に問い続けなければいけないと考えています。
ありがたいことに今はひとつひとつの事業が面白く、熱狂出来ている実感もあるのですが、いつか熱狂ではなく、計算で仕事をするようになってしまったら、その時が後進に道を譲るべき時なのかもしれません。
自分が熱狂出来ない限り、面白いものは出来ない。
これは町づくりに関わらず、小説家に漫画家、飲食店にアパレル、スポーツ選手などなど、あらゆる業種業態に共通するものだと確信していて、この「自分自身の熱狂をどうコントロールするか?」は経営者として永遠のテーマたりえるのかもしれません。
無理やりまとめますが、同じように目の前の仕事に熱中できるかた、募集中です!
【併せて読みたい】
「東京は富裕層の植民地になる」山本理顕氏森ビル批判に現場から思うこと
https://note.com/nara_narrative/n/ncbf70a143f59
株式会社narrative
https://narratives.co.jp/


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