押し入れや棚に置いた絵画や書、写真などに茶褐色の丸いシミができていることがあります。また、古本を開いた際にも茶褐色の斑点を目にします。これらはフォクシング(Foxing)と呼ばれます。きつね色をした斑点が語源です。
フォクシングの原因は、鉄化合物や樹脂などいくつか知られていますが、主に好乾性カビがつくりだす酸です。コウジカビやカワキコウジカビの仲間であるアスペルギルス・ペニシロイデスやユーロチウム・ハーバリオラムのほか、近縁の数種が知られています。
絵画や書籍には、空気中に浮遊している微細なほこりやカビの胞子が落下して付着し、貯留します。そこに適度な温度と湿気が加わると、原因となるカビの胞子が発芽して、ほこりに含まれる養分を利用して直径5ミリくらいのコロニー(固まり)を形成します。
増殖する過程で菌糸の周辺にL-リンゴ酸などの有機酸が生成されて、紙のセルロース繊維の間に蓄積。そのうち紙が酸分解して、セロオリゴ糖やブドウ糖が生成されます。また、カビが増殖する際にアミノ酸もできます。この結果、有機酸とブドウ糖の間に褐変反応が誘起されてフォクシングとなるのです。
フォクシングの原因カビは、他のカビよりも乾燥を好み、湿度70%前後、温度20~35度から成長することができます。美術館などでも、展示中に空気を通じて付着したカビ胞子が収蔵中にも成長することがあります。