サンレコ読者の皆様、初めまして! バンダイナムコスタジオから来ました、作曲家のShogo Nomuraです。Apple Arcadeにて配信開始されたゲーム『塊魂 Rolling LIVE』の楽曲制作、そしてその作業で欠かすことのできなかったBITWIG Bitwig Studioの活用法について、制作事例を交えつつ全4回で紹介していきます。
適したショートカット設定でステップ入力をスムーズに
Bitwig Studioはプラグインとオーディオ・エンジンが切り離されて動作する構造で、プラグインが落ちたとしてもBitwig Studio自体はクラッシュしないような設計になっています。これは生楽器/シンセ問わず多くのトラックやエフェクトが必要になる『塊魂 Rolling LIVE』プロジェクトにおいて、何よりも心強いポイントです。メイン・テーマ「塊オンザドリーム」はストリングスやブラスなど楽器収録を前提とした打ち込みをする必要がありましたが、Bitwig StudioのMIDI機能と高いカスタマイズ性のおかげでガシガシ打ち込んでいくことができました。
Bitwig Studioはショートカット機能も豊富にあり、自分でも設定可能です。筆者が特によく使うのが“〇〇%にスケール”。その名の通りMIDIやイベントの長さを倍にしたり半分にできる機能です。筆者はもともと、収録前提でのデモ制作作業ではリアルタイム打ち込みを主としていました。しかし、後で譜面化するためにグリッドやノートのかぶりを調整する作業が煩わしいこともあり、現在はステップ入力をしています。そこで効率的にステップ入力を行えるショートカットをキーボード左手側に集約することで、リアルタイムでMIDIを打ち込んでいくよりもスムーズな作業が可能になりました。特に「塊オンザドリーム」は複雑で速いパッセージやランを多く含む楽曲なので、なおさらですね!
打ち込んだMIDIを一望しながら編集できるエディットビューも、パネルマネージメントタブからショートカットを設定しています。任意のキーにアサインして、アレンジ画面とエディットビューを瞬時に行き来できるようにすると効率的です。
作曲時にテンプレートを使う方も多いでしょう。重い音源やエフェクトをテンプレートに組み込む際はトラックやデバイスをミュート(非アクティブ)にしておき、必要に応じてアクティブ化することでマシン・パワーを節約できます。もちろん、複数選択してまとめてミュートすることも可能。特にオーケストラ系の音源を多数扱う際は心強いです。
自由に配置できるデバイスで独自のアプローチが可能
オーケストラ音源で“ノートのアタックをもう少し前に持っていきたい!”というときによく使うトラック・ディレイ機能は、DAWによってはトラックに備わっているケースが多いです。しかし、Bitwig StudioではTime ShiftというデバイスでオーディオやMIDIノートを前後にずらすことができます。デバイスとして扱えるため、インストゥルメントやエフェクト・デバイスの前後を問わず自由に配置が可能。『塊魂 Rolling LIVE』ではヘンテコな音を作る機会がたくさんあり、常識の外からアイディアを得られるBitwig Studioの設計に幾度となく助けられました。
例えば、Time ShiftでMIDIノートのタイミングをずらした後、Strumでギターのストラミングっぽい動き、Ricochetで万華鏡のように音を乱反射させて……と、楽器の奏法ではありえないようなアプローチもイメージの赴くままに試せます。
Bitwig Studioの最新バージョンである5.3では、オーディオ・システムのセットアップがこれまで以上に簡単になりました。以前接続していた環境を記憶するので、自環境とスタジオを行き来するような制作スタイルでもスムーズにセットアップが完了し、クリエイティブに集中できます。こういったちょっとしたわずらわしさがクリアになるのは、クリエイターにとってうれしいことですね。
個人的には、Bitwig Studio/Studio One/Cubaseでサポートされている“DAWProject”というプロジェクトのファイル・フォーマットが熱いです。DAWProjectファイルにはMIDIやオーディオだけではなく、プロジェクトに挿しているプラグインやオートメーション設定の情報が含まれており、これらはDAWの垣根を越えて共有や編集できるようになっています。ファイルを共有するのに毎回トラックをバウンスする必要が無くなるので、例えば別のDAWで軽いスケッチを作ってからBitwig Studioでプロジェクトを開いてトラック・メイク色の強いエディットをするなど、DAWを分けて特定の作業だけしたい場合に非常に心強いと思います。
『塊魂 Rolling LIVE』制作時期にはまだバージョン5.3がリリースされていなかったのですが、今後のプロジェクトではこれらの新機能をぜひ使用したく、この場を借りて紹介しました!
次回は「塊オンザドリーム」のトラックを見ながら、Bitwig Studioでの音作りや新機能について紹介できればと思います。
Shogo Nomura
【Profile】2021年にバンダイナムコスタジオ入社。コンポーザー、時には鍵盤奏者として、『塊魂 Rolling LIVE』『鉄拳8』『電音部』などのタイトルに参加。幅広いジャンルにおいて強い作家性を持つ。
『塊魂 Rolling LIVE』 https://katamaridamacy-rolling-live.bn-ent.net/
※Apple Arcadeは、米国およびその他の国で登録されたApple Inc.の商標です。
【Recent work】
『塊魂 Rolling LIVE オリジナルサウンドトラック-ららまりだましい』
塊魂シリーズSOUND TEAM
(Bandai Namco Game Music)
BITWIG Bitwig Studio
LINE UP
Bitwig Studio
フル・バージョン:52,800円|エデュケーション版:35,200円|12カ月アップグレード版:22,000円
Bitwig Studio Producer:26,400円
Bitwig Studio Essentials:13,200円
Bitwig Studio 8-Track:無償、ダウンロードはこちら→https://www.bitwig.com/reg/
REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
Windows:Windows 10(64ビット)、Windows 11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
Linux:Ubuntu 22.04以降、64ビットDual-Core CPU以上の×86 CPU(SSE4.1対応)
共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インター ネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)