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ホルムズ海峡の通過、独自に動き出す各国 一部の「友好国」は優遇

ロンドン=荒ちひろ バンコク=武石英史郎 ニューデリー=鈴木暁子 北京=小早川遥平 イスタンブール=根本晃

 米国・イスラエルのイラン攻撃を機に事実上の封鎖となった原油輸送の要衝ホルムズ海峡。米国による航路の安全確保は、当面は見込めそうにない。そうしたなか、通航再開にむけて各国が動き出している。

 「世界経済を人質にしようとしている」

 欧州やペルシャ湾岸、日本を含む40カ国以上の外相らが2日に開いたオンライン協議で、議長を務めた英国のクーパー外相は、こうイランを批判して、通航再開に向けた国際社会の連携を訴えた。

 協議には欧州連合(EU)や国際海事機関(IMO)などの国際機関も参加。議長声明では「この協議は航行の自由を確保し、ホルムズ海峡を再び開くという国際社会の決意を明確に示している」と強調した。AP通信によると、米国は参加しなかった。

 これに先立つ1日にはトランプ米大統領が演説で、ホルムズ海峡から石油を調達している世界中の国が自前で「航路を確保しなければいけない」と述べていた。これに呼応したわけではないにせよ、協議に参加した四十数カ国はイランに圧力もかけて事態打開を目指す形だ。海峡封鎖が続く場合、イランに対する制裁措置も検討するという。

 外務省によると、参加した茂木敏充外相は事態の早期沈静化の重要性を改めて強調し、日本が提案する安全な海上回廊の設置について説明。各国の協力を呼びかけた。

通行に成功した国は

 一方、イランと個別に交渉して海峡通過に成功した国もある。

 パキスタンは3月28日、イランとの間で、パキスタン船籍の船20隻のホルムズ海峡通過で合意したと発表。一部のタンカーが海峡を通過し、カラチ港に到着済みだ。

 タイでは、ホルムズ海峡を通ろうとしたタイ船籍船が3月11日にイラン側の攻撃を受けて船員3人が行方不明となり、タイ外務省がイラン側に抗議して関係が一時は悪化。だが、政府間交渉を経て、3月下旬にタイのタンカー1隻が海峡を通過したという。

 イランも一部の国を「友好国」と位置づけて「優遇」している。

 その一つがインドだ。在インドのイラン大使館は今月2日、「インドの友人たちは安全な場所にいます、心配は無用です」とX(旧ツイッター)に投稿。ロイター通信は3月31日、インド船6隻がホルムズ海峡を抜けたと報じた。ロイターはまた、インド船籍のLPGタンカーが3月23日にイランから航行許可を得た後、機雷のない安全な航路だとの指示を受けて、ホルムズ海峡の通常とは別の航路を通過したとも報じた。

 マレーシアのベルナマ通信によると、同国のローク運輸相は「イラン大使から、マレーシアは強い外交関係を持つ友好国と認識されており、マレーシアの船舶に(ホルムズ海峡通過の)料金が課されることはない、と知らされている」と3月31日に記者団に語った。

 同じく「友好国」の中国は、パキスタンとともに即時停戦などを求める5項目の提言をしている。中国外務省によると、王毅(ワンイー)共産党政治局員兼外相は今月2日、バーレーンやサウジアラビア、ドイツ、欧州連合(EU)と電話による外相協議を相次ぎ実施。提言への賛同を呼びかけた。

イランの思惑、通航料徴収を恒常化?

 こうしたなか、イランのガリブアバディ外務次官はロシア国営通信社「スプートニク」の取材に対し、イランとオマーンがホルムズ海峡における船舶の航行を共同で監視し、規制するための議定書の作成に取り組んでいると明かした。イランメディアが2日報じた。

 次官は、この議定書が「船舶の安全な航行を促進し、より良いサービスを提供するためのものだ」と主張。ホルムズ海峡を通過する全ての船舶が両国の当局と事前に調整し、許可を得なければならない仕組みにするとしている。オマーン側は反応を示していない。

 米ブルームバーグ通信は1日、イランはホルムズ海峡を通過する船舶から積載する原油1バレルにつき1ドル程度の通航料を要求していると報道。支払いは人民元か暗号通貨で行われているという。イラン側としては、議定書を通じて通航料徴収を恒常化させたい考えとみられるが、米国を含む国際社会は通航料の設定に反対しており、実現するかは定かでない。

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この記事を書いた人
荒ちひろ
ロンドン支局長
専門・関心分野
国際政治、中東、パレスチナ問題
武石英史郎
アジア総局長|東南アジア・南アジア・太平洋担当
専門・関心分野
アジア、グローバルサウス
  • commentatorHeader
    馬渕磨理子
    (日本金融経済研究所 代表理事)
    2026年4月3日23時29分 投稿
    【視点】

    ホルムズ海峡の通航料をめぐり、イランが人民元などドル以外の決済手段を実務的に受け入れる動きは、単なる決済多様化にとどまらず、国際金融秩序の変化の「兆候」として注視すべき事象です。 従来、世界のエネルギー取引はドル建てを基軸とする「ペトロダラー体制」によって支えられてきました。しかし、この動きは人民元が実需を伴う形での「部分的な脱ドル化」が進行していることを示唆しています。 地政学的緊張の高まりの中で、ドル決済網から相対的に距離を置く国々による取引の多様化が進めば、国際経済における通貨の役割は徐々に分散化していく可能性があります。もっとも、現時点ではドルの支配的地位が直ちに揺らぐ状況にはなく、この動きはあくまで限定的かつ段階的なものにとどまっています。トランプ大統領の行動は、皮肉にも「脱ドル化」を加速させ、ドル基軸の弱体化を招くリスクを内包しています。

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  • commentatorHeader
    川上泰徳
    (中東ジャーナリスト)
    2026年4月4日18時46分 投稿
    【視点】

    記事後半に出てくるイランの外務次官が「イランとオマーンがホルムズ海峡における船舶の航行を共同で監視し、規制するための議定書の作成に取り組んでいる」という話は、この記事で扱う「各国がホルムズ海峡の通過、独自に動き出す」ということと相まって、今後の湾岸の安全保障の行方を示唆する動きである。 トランプ大統領が世界中の国が自前でホルムズ海峡の「航路を確保しなければいけない」と述べたことは、米国が軍事力ではイランを圧倒しても、海峡の安全を脅かすイランの非対称戦術の前では、米国単独で海峡の安全を保証できないという現実を言い換えただけである。 イランの非対称戦略が有効なのは、安価なドローンが相手国や地域の安全を攪乱する武器として出てきたという戦争のあり方の変化がある。ドローンによる一斉攻撃で、高価なミサイル防空システムも対応できない飽和攻撃が可能になった。 トランプ大統領が「2、3週間、イラン攻撃を激化させる」と演説で述べただけで、原油価格は上昇し、株価は下落した。今回のイラン攻撃で、米国が攻撃を激化させれば、イランは湾岸やホルムズ海峡への攻撃を継続し、米国は対応できないということを、世界は学習したということである。 これは湾岸戦争後、つまり冷戦後、米国がペルシャ湾に軍隊を置いて安全保障を担っていた時代が終わり、各国が新たな安全通行のルールを模索し始めたことになるだろう。 もはや米国・イスラエルの攻撃を止めさせるだけではイランに事実上”支配”されているホルムズ海峡の安全は回復出来ず、国際社会は今後の海峡通航の安全確保のための新たなルールづくりに取り組まねばならない。欧州や湾岸諸国の外相協議のように従来型思考で、イランに制裁圧力をかけるだけでは、安全は確保できない。 欧米や湾岸諸国に加えて、イランと個別交渉を始めている中国、インドなどを含め、イランとの間で国際的なルールづくりをつくるしかないだろう。イランと独自の関係をつくってきた日本の外交が役割を果たす場面でもあるだろう。

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