18歳の夏。
品川の天ぷら屋に最後に行った。その年の夏に父親が倒れて、それ以来2人で外食することがなくなった。
先月、用事で近くを通ったら看板が見えた。
まだあった。
吸い込まれるように入った。
カウンターに座ったら、70代くらいの店主が出てきた。
「いらっしゃい。」
注文した。
天ぷらが来た。
食べながら、父親のことを思い出してた。
父親はいつもエビを最後に食べてた。
好きだったから最後に取っておいてた。
会計の時、店主が言った。
「お父さんと一緒に来てた子ですよね。」
固まった。
「15年以上前ですが。」
「覚えてるんですか。」
「覚えてる。お父さん、いつもエビを最後に食べてた。」
声が出なかった。
「お父さん、お元気ですか。」
「3年前に◯くなりました。」
店主が少し目を細めた。
「そうですか。」
「ここに来たのは、なんとなくだったんです。理由もわからなくて。」
「呼ばれたんじゃないですか。お父さんに。」
帰り道、ずっと泣いてた。
父親が最後にエビを食べてたことを、15年間覚えてた人間がいた。
父親が私の知らないところでまだ生きていた気がした。