土木が専門の技術職である服部は、2022年4月に技術担当の副知事に就任。24年3月に発覚した文書問題は所管外だったが、告発者探しや懲戒処分を主導した斎藤最側近の片山安孝・元副知事が同年7月に引責辞任して以降、1年8カ月にわたり一人で副知事職を担い、長引く問題の対応に当たってきた。斎藤の失職・出直し選挙で知事不在となった約50日間は職務代理者を務め、斎藤の再選後も混乱が続く県政を支えた。斎藤に厳しく進言することもあったといい、庁内の信望は厚かった。

 文書問題の県の対応については、こう語っている。

「結果論になるが、第三者委員会の報告書にある通り、一定冷静な対応が望ましかったのではないか。一部の人間だけで事に当たっていた問題も指摘された。私自身も含めて組織全体が公益通報者保護法、特に外部通報に対する理解が低かった。その反省も踏まえて県の要綱を改正した」

 斎藤が決して非を認めず、今も強弁し続ける「県の対応は適正・適切・適法だった」というテンプレ回答を明確に否定している。こうした斎藤の姿勢をめぐって県民が分断されていると記者から指摘されると、SNS上の対立激化や県職員への誹謗中傷を憂慮し、やめるよう呼びかけた。

知事に厳しく進言することもあったという服部副知事の退任会見

 この退任会見を私も最後列で見ていた。知事定例会見と同じく1時間余りの質疑だったが、まともに答える気が見られない斎藤よりもよほど事実と法を踏まえた良識ある言葉が語られ、兵庫県庁という組織の考えが伝わる内容だった。

トランプ同様、「迂回されるジャーナリズム」を実践

 言論や報道の自由が保障された民主主義体制の国でも、SNSの普及と反マスコミ感情やポピュリズムの台頭が相まって、政治家が報道機関による権力監視を回避する動きが広がっている。メディア研究では「迂回されるジャーナリズム(Bypassing Journalism)」と呼ばれているという。

 自身に批判的な報道機関を「フェイクニュース」と罵倒し、記者を会見から締め出し、自分専用のSNSで好き放題に発言するトランプ米大統領が典型だが、そんな攻撃的な形だけではない。インドのモディ首相は就任以来、記者会見をほぼ開かず、SNSや自身のアプリ、あるいは人気俳優による非政治的なインタビューで自らの人物像を演出し、「ワンマンショー」政治を確立したという。

 日本でも高市早苗首相が記者会見になかなか応じないと批判されているが、首長に権力が集中する地方自治体でも「迂回」は起こりやすく、斎藤はその代表例だろう。