[社説]トランプ氏は中東混乱の責任投げ出すな
世界にこれだけ混乱を広げておきながら、収束させる責任をきちんと果たそうとしないのは言語道断だ。トランプ米大統領は中東に安定を取り戻す役割を完遂しなければならない。
トランプ氏が1日午後(日本時間2日午前)、イラン情勢について国民向け演説に臨んだ。米国がイスラエルとともに攻撃に踏み切って以降、こうした形で話すのは初めてだ。石油価格の高騰などに不満を高める米国民に理解を求める狙いがあったとみられる。
内容は肩透かしだったと言わざるを得ない。軍事作戦によって、「核心的な戦略目標がほぼ達成されつつある」と成果を誇示した。しかし、あと2〜3週間は激しい攻撃を続けてイランを「石器時代に戻す」とも述べた。
これでは米国が「4〜6週間」と想定していた戦闘がいつ終わるのか判然としない。作戦目標も曖昧なままだ。地上戦を担える米軍の部隊を続々と中東入りさせているのはイランへの圧力のつもりだろうか。戦闘の泥沼化を招く地上戦に深入りしてはならない。
事態好転への期待が後退し、原油価格が演説後に急騰したのも当然だ。イランを破壊し尽くすかのような言い回しも、国家の指導者として不適切というほかない。
イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡に関し、石油を購入している国々が輸送路の安全を確保すべきだと主張したのも問題がある。世界のエネルギー市場を自ら混乱させておきながら、事態収拾の役回りを他国に押しつけるのは無責任だ。
トランプ氏は海峡が封鎖されたままでも軍事作戦を終える可能性を示唆してきた。イランにしてみれば、攻撃を二度と受けない保証がなければ海峡を支配下に置いたままにしようとするだろう。
トランプ氏が先頭に立って海峡が開放される環境を整える必要がある。そのためにはパキスタンを介したイランとの話し合いに真摯に向き合い、早く停戦につなげるべきだ。イラン打倒にはやるイスラエルにも自制を迫らなければいけない。
日本は欧州諸国とともにホルムズ海峡の安定に向けた共同声明をまとめ、賛同の輪は30カ国以上に広がっている。英国は海峡の通航再開に道を開く措置を検討する国際会議の開催を呼びかけている。どのような貢献ができるか、日本も真剣に考える必要がある。