貴方は私のもの
作品へのいいね、コメント等々ありがとうございます。
新年前に何か書きたくてどうにかひねり出したものです。酔っぱらいながら無理して勢いつけて書いているので何かあっても許してください。記号を使うことを覚えました。気づいたらこんなことになってた。
ささやかながら皆様よいお年をお迎えください。
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「...そういえば、プロデューサーさんは年越しはおそばかおうどんどっち派ですか~?」
日が傾いてきたころ、いつものようにパソコンとにらめっこして作業していると横から名前を呼ばれる。横目で揺れる後ろ髪を確認して作業をしながら答える。
「う~ん、やっぱり蕎麦ですかね。別にすごく好きなわけでもないんですけど、なんとなく年越しそばに慣れてるので。」
「あ、分かります。なんだかそのイメージありますよね~」
「突然どうしてそんなこと聞いてきたんですか、はづきさん?」
「ただの雑談ですよ。それとも、私とはそんな雑談もしたくないってことですか~?」
「え、いやぁ、そういうわけじゃないんですけど...」
「ふふっ、冗談ですよ~本当は今日が大晦日だからです。」
そこで俺は改めて画面の右下を見て気づく。この業界にいると、年末年始の撮影が11月中旬から12月初めごろに行われるせいで、世間に比べて1,2か月ほど早く時間が過ぎているように感じてしまうのだ。それにこの事務所は新年も収録があるアイドルのために閉まることはない。だからこれといって仕事納めのようなことは行っておらず、それがより浮世離れした時間感覚の形成を助長した。
「そういえばそうでしたね。あ!じゃあ、はづきさんは今日早上がりですか?」
「いえ、にちかは友達の家に泊まるらしいので特にその予定はないですね。そういうプロデューサーさんはどうなんですか?こんな日まで仕事詰め、とはいかないんじゃないですか?」
はづきさんがからかうような言い方をしてくる。かといってお互い手を止めるわけではなくあくまでも仕事と切り離された雑談として会話が進む。
「いやいや、確かに直近でやらないといけないことはそこまでないですけど早く帰っても特にやることないですからね。今日もいつも通りかなとは思ってますよ。」
「えぇ~意外です~てっきりアイドルのどなたかと予定があるのかとばっかり。」
「ちょ...人のことなんだと思ってるんですか。アイドル達だってオフの日ぐらい自由に過ごしたいでしょう。なんだって俺の顔見なきゃならないんですか。さすがに今日は予定ないですよ。」
「へ~なら、今夜せっかくならどうですか?一杯。」
「お、いいですね!じゃあ、それまでお互い頑張りますか!」
そういって自然に会話が終わってまた部屋には作業音が響くだけになった。『たん、たん』と規則的なリズムが流れたかと思うと突然それが止まり、また突然再開する。二つの音が不規則に、けれど耳障りが悪いわけではない二重奏を奏でる。そのセッションが終わるころにはすっかり太陽は鳴りを潜め、澄んだ夜空が世界を包んでいた。
一足先に仕事を終わらせたはづきさんがお店を探してくれたが、どうにも見つからなかったようで急遽事務所で軽く飲み会をすることになった。お酒は社長にその許可をとるときに、社長の秘蔵の洋酒を飲む許可をもらったのでそれを楽しみ、つまみは事務所にあった来客用のお菓子から選んで机の上に並べる。
「なんだか申し訳ないです。私から誘ったのにこんなものしか用意できなくて...」
「いいじゃないですか!こういうのも。せっかくの大晦日なんですし、楽しみましょう!」
俺はその勢いで一気にウイスキーをあおる。決してがぶがぶ飲んだわけではないが、強いお酒だったこともあり二人の飲み会にしては思いのほか盛り上がった。気づくと一年の終わりを告げる鐘の音が遠くから響いてくるのをかすかに感じ、肩の力が抜ける。
「今年ももう終わりですね。」
「そうですね~」
はたとやり残したことを思い出して、居住まいを正して向かい合って座りなおす。それに酔っぱらっているのか顔を真っ赤にして驚きながらはづきさんが尋ねてくる。
「え!どうしたんですか、突然!」
「いや、こういうのはちゃんと言おうかなと思って。」
「え、えぇ!いきなり過ぎません⁉」
なぜだか異様に気にしているが、そんな変なことだろうか?まぁ酔ってるだけだろうけど一応聞いておくことにする。
「はづきさんはこういうの嫌、でしたか?」
「...い、嫌、じゃないですけど...」
消え入りそうな声で発せられた言葉と真っ赤な顔になんだか心配になってしまう。はづきさん、だいぶ酔いが回ってるな...いったん横になってもらった方がいいかもな。
「うーん。なんだか体調悪そうなので、いったん横になります?こんなの絶対やらないといけないわけでもないですし。」
「え!それは嫌です!」
膝同士が付きそうなくらいすぐ近くまではづきさんが迫ってくる。その時のはづきさんの顔は何だか今にも泣きだしてしまいそうで、そこまで言われてしまってはやらないわけにもいかなくなった。
「そこまで言うなら...あぁ!泣かないでください!」
改めて一つ深呼吸をしてはづきさんの瞳をしっかりと見据える。その瞳はものすごくきれいで宝石のようで、けれど何だかほっとする優しさをたたえたものだった。
「じゃぁ、行きますよ。」
そう言って背筋を伸ばすとはづきさんが生唾を飲む音が聞こえた気がした。なんだか俺自身ここまで期待されると少し恥ずかしくなってしまってつかの間の沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは鐘の音だった。それに背中を押されるように俺も口を開く。
「はづきさん、今年もいろ...むぐぅ!」
その口はすぐ塞がれてしまった。俺が口を開いたとほぼ同時に迫ってきたはづきさんに反応できず、後ろに倒れこむ。今の自分がどんな状況かわからないまま口内を蹂躙される。なんだかよくわからないまま驚きと困惑を享受し続ける。その時間は無限に続くのかと思わされた。今自分はキスされたんだと自覚できたのはすべてを堪能したはづきさんが口を離した後だった。
「ーーーぷはっ。どうでしたか?プロデューサーさん?」
「え、あ、えっと、」
プロデューサーさんはお魚みたいに口をパクパクさせるだけだった。きっと戸惑ってるのだろう。自分が何をされたのか、なんでこんなことになったのかがわからなくて。でもプロデューサーさんが悪いんですよ?せっかく二人きりになれてお酒まで飲んで、突然真剣な顔して言いたいことがあるだなんて言われたら...誰だって期待しちゃいます。戸惑うあなたを見つめて思わずよだれが出そうになる。
「夜はまだまだこれからですよ?」
外では最後の除夜の鐘が鳴る。どうやら私の煩悩は108個では収まり切らなかったようだ。
「今年もよろしくお願いしますね、プロデューサーさん♡」
新年最初に大切なあなたともう一度唇を重ねる。
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- クロモコJan 2nd