由来はメイフェア地区の郵便番号
そのクルマは、見る者をハッと振り向かせるような美しさを備えていた。
アストンマーティンDB11 'W1'は、日本市場のために10台のみが作られる特別なラグジュアリークーペ。もともと美しいDB11のスタイリングをさらに際立たせるカスタマイズを担当したのは、アストンマーティンのビスポーク部門である「Q by アストンマーティン」だ。
なぜ、DB11 'W1'は生まれたのか? そもそも'W1'とはなにを意味するのか? それらを順にひもといていくことにしよう。
その出発点となったのは、日本の顧客の好みに合った、そして日本の風景に馴染むDB11を生み出したいというアストンマーティン ジャパンの思いだった。その希望を受け止めたのがQ by アストンマーティンで、彼らはロンドン屈指の高級住宅地であると同時に商業地区としても発展を続けるメイフェアのラグジュアリーなライフスタイルがこのコンセプトにぴったりマッチすると判断。高級ホテルやレストランにくわえて、ジョージア様式のタウンハウスが建ち並ぶ街並みをイメージしながら、このスペシャルモデルの仕様を具体化していったという。
なお、メイフェア地区には、ハイブランドが軒を連ねるボンド・ストリート、それにビスポークを得意とする名門高級紳士服店が立ち並ぶサヴィル・ロウといった有名な通りが含まれている。
ちなみに'W1'はメイフェア地区の郵便番号という。この辺も、なんともイギリス人らしい粋なセンスだ。
深みあるアリゾナ・ブロンズ
続いて、2台のDB11 'W1'をご紹介することにしよう。
まずは、メイフェアの典型的な建物の色を彷彿とさせるアリゾナ・ブロンズにペイントされた1台から。この、深みがあって美しいメタリックカラーは、DB11の姿態に浮き上がる陰陽を見事に際立たせてくれる。
最近はメタリックペイントに含まれるフレーク(光を反射する細かな金属粉)が大きくて、ギラリと派手に光を反射するメタリックカラーが少なくないが、それよりも輝き方が控えめで、洗練された佇まいを見せるアリゾナ・ブロンズをチョイスしたQ by アストンマーティンのセンスはさすが。そしてなによりも、DB11の彫刻的で筋肉質なプロポーションに、このカラーがよくマッチしている。
DB11 'W1'は、フロントスプリッター、リアディフューザー、サイドシル、サイドストレーキなどのエッジ部分にアリゾナ・ブロンズとよく似たブロンズ・カラーのピンストライプが施されているが、敢えてボディカラーとアクセントカラーを近い色相とすることで、ぜいたくで、しかも品のいい仕上がりを見せている。
インテリアの美しさにも目を奪われる。
アイスモカと呼ばれるコントラストステッチが施されたレザーシートのカラーはバイソンブラウンで、これもエクステリアカラーのアリゾナ・ブラウン同様、深みのある色で落ち着いた雰囲気を醸し出している。
ダークタモアッシュ・オープンポアと呼ばれる、まるで大理石のように複雑な模様を見せるトリムインレイも、この落ち着いたインテリアにほどよいアクセントを加えているかのようだ。
貴重なモデルを買うなら今しかない
もう1台のボディカラーはDB11 'W1'にオプション設定されているプラチナム・ホワイトと呼ばれる。
極めて純粋で、それゆえに前衛的なDB11のスタイリングによくマッチするこのホワイト、日陰で最初に見たときはてっきりソリッドカラーだと思い込んでいたが、陽の光の下に持ってくると、アリゾナ・ブロンズ同様の細かなフレークを含んだメタリックペイントであるのに気づく。
もともと白は、ボディパネルの抑揚を強調するのに有利なカラーだが、そこにこのメタリックカラーのパール効果がくわわると、その深みのある光の反射によってさらに立体感が増すように見えるから不思議だ。アリゾナ・ブロンズとはまったく世界観の異なるペイントであるが、それゆえにそれぞれの個性が際立って、どちらを選ぶべきかで大いに頭を悩ませることになりそうだ。
こちらのインテリアもバイソンブラウンのレザー、アイスモカのコントラストステッチ、ダークタモアッシュ・オープンポアのトリムインレイが組み合わされていたが、DB11 'W1'にはグレイシャル・ホワイトとバイソン・ブラウンのデュオトーン・レザーシートがオプション設定されているという。こちらは現物を見ることができなかったが、おそらくはバイソン・ブラウンの落ち着いた雰囲気に華やかさが加わり、DB11の魅力的なキャビンを一層引き立ててくれることだろう。
ここでDB11について振り返っておくと、基本的には4.0リッターのV型8気筒ガソリンツインターボ・エンジンをフロントに搭載して後輪を駆動するエレガントなラグジュアリークーペで、ワインディングロードでは軽快な走りを披露するいっぽう、ハイウェイではスーパースポーツカーとはひと味異なる快適性をもたらせてくれることが特徴のひとつ。
また、ここまでご説明してきたエクステリアデザインやインテリアデザインの美しさ、色合いの見事さ、そして素材の上質さなどの点でも、他のスーパースポーツカーブランドとは一線を画している。
ちなみに、DB11 'W1'のボディに掲げられたアストンマーティン・ロゴはユニオンジャック・カラーのエナメル仕上げとされているが、これはQ by アストンマーティンが手がけたモデルだけに与えられる特別な紋章だそうだ。
DB11 'W1'の詳細については、お近くのアストンマーティン正規ディーラーにお問い合わせいただきたい。

文・大谷達也 写真・アストンマーティン ジャパン
