【インタビュー】映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」原作/プロデューサー:アンディ・ウィアー
映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」、
大ヒット上映中!!!!!!!!!!
公開前より、IMAX®上映劇場では座席予約開始直後からチケットが完売するなど高い注目を集め盛り上がりを見せていた映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」。
日本での初日の興行収入は1億6996万5100円、動員数は9万8291人を記録し、実写・アニメを含め2026年洋画No.1の大ヒットスタートを切り、公開後3日の時点では興行収入が4億円を突破!
さらに全米の興行収入は、約1億6430万ドル(約260億3534万円)を叩き出しランキング首位を譲らず、全世界でも約3億ドル(約476億1572万円)を突破しているなど、世界的な大ヒットを見せている。
そして今回は、なんと原作者であり映画のプロデューサーも務めるアンディ・ウィアーのインタビューを敢行! 映画の魅力だけでなく、『火星の人』の読みどころ、そして『アルテミス』関連の今後の展望までもが余すところなく語られます!
(聞き手・渡辺麻紀)
ハヤカワ文庫SF
アンディ・ウィアー
小野田和子 訳
刊行日:2026年1月22日
価格:各1,650円(税込)
――原作者として完成版を観てどう思いましたか? とても原作に忠実で驚きましたが。
ウィアー
今回はプロデューサーとして、すべてのカットや脚本の改訂プロセスも見てきました。これはひとえに脚本を書いてくれたドリュー・ゴダードのおかげです。彼は「オデッセイ」(『火星の人』の映画版の邦題)のときもそうでしたが、小説を映画へと忠実に移し替える見事な仕事をしてくれたと思っています。
――映画では、地球の美しい自然が何度もヘイル・メアリー号内部の壁面に映し出されます。また、原作以上に「ひとりでは何もできない。協力し合うことが不可欠だ」というテーマが打ち出されているように感じました。こういう変更についてはどう思いましたか。
ウィアー
僕はとても気に入ってます。地球の自然が映し出されるのはクルーのメンタルヘルスのためでもあるんですが、原作にはないんですよ(笑)。小説は全篇、直径4メートルほどの狭い部屋のシーンの連続のなかで進むんですが、それだけでは単調になる。映画として見せるならもっと視覚に訴える要素が必要だということで、あの自然を捉えた映像が使われたんです。また、「協力こそが重要」というのは原作の核心的な要素。映画ではそれをより明確に強調してくれました。素晴らしい変更だと思っています。
――ところで、あなたがライアン・ゴズリングに出版前の原稿を送って出演をオファーしたと聞いているのですが……。
ウィアー
それはまったく正確じゃないです(笑)。MGMスタジオが『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の映画化権を買った後、彼らが送ったんです。ライアンはとても気に入ってくれて、今回のコラボレーションが実現したんです。彼は僕たちのファーストチョイスだったので、本当にラッキーでした。MGMがまだAmazonに買収される前の話です。
――ファースト・コンタクトものであり、文化と言語の異なる異星人とのコミュニケーションの取り方という点ではテッド・チャンの「あなたの人生の物語」を思い出しました。こちらは言語学者が人類との架け橋となります。異星人と最初に会話するのは科学者と言語学者、どちらだと思いますか?
ウィアー
すみません、原作小説は読んでないんですが、その映画化の「メッセージ」(16)は観ました。異星人と近づくプロセスはとてもユニークだし、そこに時間との関係性を持ち込んでいるのが非常に面白かった。異星人の場合はだいたい、まったく違う言語になると思われますが、科学は宇宙共通です。円周率や数学的真理は、われわれと同じように異星人も発見しているはずです。数学という基盤があれば、お互い理解し合えるというのが僕の考え方。だから、その答えは、絶対に科学者です。
――『火星の人』も本作も、科学に対する絶対的な信頼を感じます。これはあなた自身の価値観が反映されているのですか? また、主人公たちが絶望的な状態であっても楽観的でいられるのは、科学の力を信じているからでしょうか?
ウィアー
僕は科学を強く信じています。それが経験的に言っても真実であり、客観的に言っても証明されているからです。同時に僕は、人間に対してとても高い評価をしていて僕自身、根っからの楽観主義者なんです。人間は悪いところよりも善い部分のほうがずっと多いと思っているし、追い詰められたときこそ協力し助け合うものだと信じている。楽観性や希望は、人間という種に対する僕の高い評価から生まれたもの。僕たちは非常に優れた種であり、自分たちをもっと誇りに思うべきなんですよ。
それに、考えてみてください。文明や科学がスペースシップを造れるレベルに達するためには、思いやりや社会性、他者を気遣う気持ちが不可欠だと思いませんか? もし異星人と出会うことがあれば、その種族も同様の資質をもっているはずです。そうでなければ、スペースシップを建造するまで生き残ることはできないと思います。
――日本では、あなたのこの小説と、劉慈欣の『三体』がSFジャンルでは珍しくベストセラーとなりました。どちらもファースト・コンタクトものですが、異星人の描写は180度違います。『三体』は読みましたか? どんな感想を?
ウィアー
もちろん読みました。素晴らしい本で、とても面白かった。でも、確かに「社会を形成するための条件」という点では、僕の考えとは対象的です。僕は『三体』に登場する「暗黒森林理論」を信じていません。たとえば遠い昔、未知の部族同士が出会ったとき、何が起きたのか? 彼らは貿易を始めたんです。中国とローマ帝国がお互いの存在を詳しく知るまえから、シルクは東、金は西へと運ばれていました。人間は本質的に協力的なんです。『三体』のトリソラリアン(三体人)も社会を形成していましたが、そうやって社会をつくるには、人間と同じ特性が必要だと、僕は考えているんです。
――劉慈欣と対照的な考えなのは中国とアメリカ、育った国の違いがあると思いますか。
ウィアー
可能性はあるでしょうね。でも、今のアメリカには悲観的な人がたくさんいますし、その反対に、中国にも楽観的な人は大勢いるでしょう。僕はそもそも、文化は固定されたものではないと考えてますからね。
――あなたの科学への信頼はどうやって培ったんですか?
ウィアー
僕は、科学があふれた家庭で育ったんです。父が物理学者で母がエンジニア。生まれたときから「科学オタク」になる環境だった(笑)。5、6歳のときから科学に目覚めて、いろんなアイデアを考えるのが大好きでした。宇宙旅行に関しては10代の頃からいろいろ書いていて、12歳で初めて小説を書きました。月の基地で使用されたペンキが毒性だったため次々と人々が死んでゆくなか、どうにか生き延びようとする少年……というストーリーでした。
――それも月が舞台なんですね。いまのところ、宇宙SFだけを書いていますが、やはり宇宙が好き?
ウィアー
大好きです。子どもの頃から夢中でした。車やガーデニングが好きな人がいるように、僕は宇宙にワクワクする。だから、あらゆるアイデアを総動員して書くんです。『火星の人』のときは、いろんなサバイバルテクニックを考えるのが楽しかった。そのなかでもっとも大変だったのは「ポテト」です。決められたスペースで、ワトニーがサバイブできるだけのポテトを育て収穫できる方法を見つけるのに本当に苦労しました。でも、火星で、実際にこの方法を使ってポテト栽培を成功させる自信はあります!(笑)
――あなたの『火星の人』に続く長篇2作目、月が舞台の『アルテミス』も映画化企画があり、今回の監督コンビ、フィル・ロード&クリストファー・ミラーが手掛けるそうですね。
ウィアー
実は僕たち、深く静かに『アルテミス』の企画を進めていたんです(笑)。最大の課題は、地球の6分の1しかない月面の重力をどう映像として表現するのか? でした。膨大な予算をかけたり、俳優たちを不快なワイヤーに吊るしたりせずに、です。詳しくは言えませんが、ふたりはとても賢い解決法をみつけてくれました。この方法だと俳優たちがしっかり演技に集中できるはずです。
――長篇4作目も宇宙が舞台なんですか?
ウィアー
いま、新作を書いていますが、詳しいことはまだ明かせません。続篇とかシリーズではなく独立したSF小説です。楽しみにして下さい。
――では最後に、アンディ・ウィアー的、史上最高の宇宙SF小説と宇宙SF映画を教えてください。
ウィアー
小説ならアシモフの『鋼鉄都市』。舞台は地球がメインですが、宇宙も出てくるでしょ? 映画なら『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)と『スター・トレックII カーンの復讐』(82)。この2本で決まりです!(笑)
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ISBN:9784150125066
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