アラフォーぐだ男が聖杯を手にするまで【02】
カルデアを引退したアラフォーぐだ男が普通にサラリーマンをしていたら聖杯戦争が始まって令呪持ってないしマスター権限全くないけどサーヴァントたちを懐柔して聖杯を手に入れちゃう、って話。
色々捏造あり、時間軸が混ざって全然違う、二部とか気にしないでください。
なんでも許せる方向け。
遠坂さんは猫を被るタイミングを逃しました(笑)
1/14:デイリー3位、女子に人気2位、男子に人気3位入り!ありがとうございます!
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うーん、と俺はベンチに座りながら額を押さえる。
「なんとかなる、とは言ったものの」
なにをすればいいのやら……。
俺はどう行動するべきか考えながら、煙草に火をつけた。
すぅ、と一呼吸。
昔、キャスターのクー・フーリンに教えてもらったことを思い返す。
「“聖杯戦争とは”」
万能の願望機である第三魔法の聖杯を、七人のマスターと七騎のサーヴァントで奪い合う戦争のことである。
セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、がサーヴァントに与えられるクラスである。
マスターたちは他のサーヴァント、もしくはマスターを殺すか戦意を喪失させるかをして勝ち残り、最後の一人が聖杯に願いを託す権利を得ることができる。
まぁ、つまりは殺し合いだ。
俺が昔経験した聖杯戦争はこの手のものじゃなかった。
あー、いや、あれを聖杯戦争と言っていいものだろうか……。
聖杯戦争ってのは神秘の秘匿と言って、一般的に知られないように行われるものである……とは誰の言葉だったかな。
七人だけで殺し合っていればいいものを、とは言わないけれどここまで一般人を巻き込むこともないだろう。
とりあえず俺はキャスターを特定した。
聖杯戦争を止めろ、とも言わない。
既にマスターが選ばれて戦争が始まっている以上それを言う資格も権利もなければ、止められる手段も俺にはない。
ただ、こうも一般人に手をだしてほしくないのだ。
せっかくの英雄の手を、誇り高き彼らの手をそんなことで汚させるなと思う。
俺は彼らの手が好きなんだ。
大きくて、優しくて、温かい、あの手が。
メディアの手は俺に、魔術のことを色々教えてくれた。
結局、俺に才能がなくてたいして身に付くことはなかったけれど、なんだかんだ世話焼きの彼女の手が好きだ。
だからこれ以上汚させる前に、話の通じるマスターならば話合いでなんとかしたい。
「まぁ、無理だろうなぁ」
はは、と俺は苦笑しながら煙草を携帯灰皿に押し潰して上着のポケットにしまった。
カルデアを去る間際、魔術協会の査問団とか新所長が連れてきたっていう程度の魔術師しか知らないけれど正直いい印象はない。
そもそも気難しそうだな、ってのは前所長の時点でなんとなーく分かってたし。
そんな人たちに聖杯戦争を止めてくれませんか、って一般人のアラフォーのおっさんが言ったって取り繕ってくれないだろう。
というかサーヴァントたちが俺のこと覚えてなかったらその時点で死ぬかもしれないんだけどさ。
いや、でも覚えてないだろうなぁ……キャスターも言ってたもんな、英霊は一度座に還ると記憶を受け継がれることなく再召喚されるって。
まぁ、それは特異点で会ってきたやつらを召喚したとき、実際記憶のない彼らと再会してきたのだからそれは十分に実感している(あれ、でもサンソンは一部の記憶欠損だけで再召喚されてたな……)。
て考えると色々ムリゲーじゃね?
はぁ、と俺は溜め息を吐いて右手の手の甲を見た。
「なんで俺に宿らないんだよ……」
こう見えても経験者だぞぅ?人類を救ったマスターだぞぅ?エクストラクラスだって召喚できるぞぅ?
見る目のない聖杯め、なんてふざけて八つ当たりをして立ち上がった。
とりあえず街を回ってみよう。
もしかしたらどこかにサーヴァントの気配が残っているかもしれない。
一般人に手をだすな、と叱ってやりたいとも思う。
けど、俺自身、久し振りにみんなを一目見たいとも思うんだよな。
もう二度と会うことはないと覚悟してただけ、余計に。
***
俺は一日かけてこの街を歩き回った。
新都を抜けて殺人があったという住宅街を回ったが、結局はなにも感じ取ることができなかった。
昔はもっとなにかしら感じ取ることができたと思うんだけど……。
本当に痕跡がなにもないのか、俺の力が劣化していっているのか……。
もう20年以上魔術に関わってないからなぁ……どっちだろ……。
はぁ、と俺は溜め息を吐く。
そして俺は今柳洞寺へ向かっている。
あの奥には特異点Fで見た巨大な魔術炉心があったはずだ。
まぁ、あれが魔術王の聖杯で造りだされたものじゃなかったら、の話だけど。
大分日も落ちてきた頃、柳洞寺へ向かって緩やかな坂道を上っているとなにか聞こえた気がした。
「悲鳴……?」
本当に僅かだったけれど、俺の直感が向こうへ進めと言っている。
俺は進路を変えて走った。
こっちの方には確か……穂群原学園があったな、と思い出す。
あー、この歳での坂道ダッシュきっつ……!
久し振りの全力疾走に、学園に辿り着き校門に手をついて上がる息を整える。
煙草、止めようかな……。
はぁ、はぁ、と息を上げながら一歩学園に踏み込んで、ドクリ、と心臓が脈打った。
これは、魔術の気配だ……。
なんで?なんだ?どういうことだ?
学校に魔術師、聖杯戦争に参加するマスターがいるのか?
「また人の多いところで……!」
思わず舌打ちをしそうになった。
すると物音が聞こえる。
周りに人の気配はないし、部活というわけでもないだろう。
というか、そんな生易しい物音じゃない。
「誰か戦ってるのか?」
そして俺は物音のする方へと走った。
学校の裏の林の方へいけば、少年が鎖で右腕を拘束され宙吊りにされていた。
その向かいには長いピンクの髪の女。
「…………!」
その懐かしい姿に俺は思わず目を見開いて立ち止まる。
メドゥーサ……。
動けずにいると少年が左手に持っていたパイプを振り上げるが、それは彼女に受け止められてグルリと背後へ回された。
あれは、マズい。
「っ!止めろ!」
俺が駆け寄れば、メドゥーサははっとして少年から離れる。
その拍子に拘束が緩んだのか、少年が地面に落ちそうになるので咄嗟に受け止めた。
頭を打たないように頭の方を支え、地面に膝をつく。
「ぐっ……!」
「大丈夫か!?」
「あ、あんたは……っ!」
右腕の出血が酷い……、ぎゅっ、と傷口を押さえれば少年が痛みに声を上げる。
俺はメドゥーサを見上げた。
目は眼帯で覆われていたが、驚きの表情なのは十分に分かった。
「何故あなたが……」
「っ!覚えて、る……のか……?」
覚えてる?俺のことを?
予想してなかったことに言葉を続けられないでいると、メドゥーサに向かって赤黒い魔術の弾がいくつも飛んできた。
ガンド!?
メドゥーサはその場から後退し、そして霊体化して姿を消した。
呆然と既に彼女のいなくなった空中を見ていると、一人の少女が駆け寄ってくる。
「衛宮くん無事!?って、あなたは……!」
「え?……あ」
夜に見かけたイシュタルにそっくりのJK。
彼女も俺のことを覚えていたのか、目を見開いている。
すると少年がぐぐっ、と身体を起こした。
「遠坂、知り合いなのか?」
「そ、そうだ、そんなことよりも衛宮くんの血止めをしないと……!」
「あ、あぁ、俺のハンカチも使って」
そう言ってポケットからハンカチをとりだして少女に渡すと、少しだけ警戒しながらもありがとうございます、と言われた。
チラリ、と少女と少年の手の甲に令呪が見える。
学生が二人も聖杯戦争に参加しているマスターなのか!?
こんな危険な戦いに……。
やるせない気持ちでいると、少年があの、と声をかけてくる。
「あなたは一体……」
「え?」
「確か、私とは一度新都でお会いしましたよね?」
「あー、あのときはごめんね。俺は藤丸立香、二人は?」
「衛宮士郎です。助けてくれてありがとうございます。あと、ハンカチも」
「エミヤ……?」
「遠坂凛、です。あの、なんで大人のあなたが学校にいるんですか?生徒の保護者、じゃないですよね?」
俺を見てくる二人を見て俺はふっ、と笑った。
イシュタルだけじゃなくて、村正のおじいちゃんまでいるなんてなぁ。
しかもエミヤ、か。
「俺は叫び声と物音が聞こえたから、走ってきただけ。二人は聖杯戦争に参加しているマスター、かな?」
「っ!知っているの!?」
「あれっ」
「ちょっ!おい!待て遠坂!」
遠坂さんはばっ、と俺に左腕を構えた。
これガンドの構えだ、と察した俺は両手を顔の高さまで上げる。
衛宮くんは慌てて止めてくれたが、構えの手を降ろしてはくれない。
「まさか、あなたもマスターなんて言わないわよね?」
「言わない言わない。俺は聖杯に選ばれなかった、今は一般人のおっさんだよ」
「“今は”?」
「それより、衛宮くんを病院に連れていこう。ちゃんと治療しないとね」
よっこいしょ、と俺は立ち上がる。
「……それなら、私の家に。そこならちゃんとした手当ができるわ」
「遠坂の家!?」
「じゃぁ送っていこう。タクシー、呼ぼうか?」
「いや、歩けるんで大丈夫です。だから、歩きながら色々説明してください」
立ち上がった衛宮くんの射抜かれるような眼差しに面食らってから、もちろん、と俺は笑顔を返した。
そして二人を遠坂さんの家に送る道中、歩きながら二人に色々聞かれる。
「なんで聖杯のことを知っているんですか?今は、ってことは、元は魔術師だったとか?」
「そう、もう20年以上も前の話だけどね。二年間だけ、俺は魔術師でありマスターをしていたんだ。あ、今は違うよ」
ほら、と俺は両手の甲を見せて、令呪がないことを確かめさせようとするが二人はそれどころではないらしい。
「20年以上前!?」
「マスター!?」
「20年以上前ってことは、前回の聖杯戦争の参加者じゃないってこと?」
「その前回の聖杯戦争がどんなものかは分からないけど、7騎で争う通常の聖杯戦争、って意味なら、そうだね」
「どういう、ことですか?」
「んー、言っちゃいけないことだからあまり詳しくは言えないけど、俺は昔200騎近い英霊のマスターだったんだ」
「「にひゃ……っ!?」」
俺のその言葉で衛宮くんは目を見開き、遠坂さんは身を仰け反らせるほどに驚いていた。
そのリアクションに俺は苦笑する。
「う、嘘よ!そんなことありえないわ!でたらめ言わないで!」
「嘘じゃないよー」
俺がへらりと笑って言えば、衛宮くんはなにか考えるように数秒黙り、そしてはっとしたように顔を上げた。
「だからライダーと顔見知りっぽかったのか」
「うん、彼女も彼が召喚した英霊の一騎だった」
「とか言って、本当はライダーのマスターで私たちを油断させようとしてるんじゃないでしょうね……?」
「本当に一般人だから、その手を降ろそう?」
この喧嘩っ早さ、あぁイシュタルだなぁ、と思う。
懐かしさと高校生の微笑ましさに口元が綻ぶ。
傍から見たら俺、JKを見てニヤニヤするおっさんに見えるのかな。
不審者扱いされて警察沙汰とか笑えない。
「じゃぁ、私を見て言ったイシュタル、ってのも英霊?」
「うん」
「200騎のサーヴァントを召喚して、なにをしてたんですか?」
「それは言えないんだ。色々魔術協会に口止めされてるからね」
俺はカルデアを去るとき、魔術協会と契約を交わした。
二度とカルデアに関わらないことと、外で無暗に言及しないことと、空白の一年の秘匿など。
俺が貰ったお金はなにも人類史を救った功績からの報酬だけじゃない。
「口止めされてるって、相当ヤバいことだったんじゃないの……?」
「さぁ、協会のお偉いさん方の考えはよく分からないけど。でも、俺にとっては充実した二年間だったよ」
死ぬ思いなんて死ぬほどしてきたけど、それでも今思い返せば楽しかったと言える。
多くの仲間たちと駆け抜けた特異点、ツラいこともあったけど、それ以上に学ぶことも多かった。
生きようとする人間の儚さを知った、命を懸けて時代を築く先駆者たちの美しさを知った、俺を守ろうとしてくれた多くの愛を知った。
世界や人類のために、間違った方向ではあったけれど悪になった深い愛を理解した。
楽しかった、凄く。
「それじゃぁ、今度は俺から質問。キミたちのどちらかのサーヴァントはキャスターだったりする?」
「え?」
「……何故そんなことを?」
「最近新都でガス漏れ事故が多発してるだろ?昨日、俺の会社も被害にあってね」
そう言えば、二人は驚きに目を見開く。
俺はたまたま会社にいなかったから被害はなかったけど、と付け足した。
「どうにもおかしいと思って今日会社にいって確認してきたんだ。そうしたら魔術の痕跡が残ってた。あんなことができるのは、」
「キャスター、ってことね」
「キャスターの真名の目星はついてる。目的も、察しはついてる。俺の同僚や後輩も被害を受けた」
「もし、私たちのどちらかがキャスターのマスターだって言ったら、あなたはどうするのかしら?」
挑発するように、俺を試すように遠坂さんが見つめてくる。
思わず俺たちは足を止めていた。
「もしそうなら、彼女のためにも止めてほしい」
「えっ……?」
「これがマスターの意思なのか彼女の意思なのかは分からないけれど、彼女にこんなことをさせないでほしい……っていう俺のわがままなんだけどね」
「どうして、そんなことを思うんですか?」
「キャスターだけに限らないんだけど……俺にとったら善だろうが悪だろうが、あの頃を一緒に戦ったサーヴァントたちはみんな、俺の大好きな英雄なんだ」
衛宮くんの問いかけに、俺は少し気恥しくなり頬を掻きながら苦笑して答えた。
それに対し、衛宮くんは呆気にとられたあとふっと笑う。
「いい人ですね、藤丸さん」
「そうかな。普通だと思うけど」
「いや、いい人ですよ。な、遠坂」
「……そうね、確かに見た感じ魔力も一般人と大差ないし、マスターじゃないってのも嘘じゃないでしょうね。ちょっと能天気なところとか、なんだか衛宮くんに似てるし」
「今どきのJKって辛辣だな……」
アラフォーのおっさんの心にぐさぐさ刺さってくることを平気で言うもんなぁ……。
遠坂さんの言葉に苦笑した衛宮くんは改めて俺を見てくる。
「俺たちのサーヴァントはキャスターじゃないですよ。俺のサーヴァントはセイバー」
「私のサーヴァントはアーチャーよ」
「二人ともサーヴァントの真名は知ってる?」
俺の問いかけに二人はバツが悪そうに目を逸らした。
あぁ、これは知らないんだな、と察する。
できればどんな英霊がこの戦争に参加してるのかを把握しておきたい。
話の通じるタイプならいいんだけど。
「じゃぁ、特徴だけでも教えてくれないかな。多分、俺の知ってるサーヴァントに当てはまるだろうし」
「えと、セイバーは金の髪で緑の目をしています。青い服に銀の鎧を着てて……」
「女の子?」
「はい」
「うん、把握」
そっか、セイバーにはアルトリアが呼ばれているのか……。
即答した俺に衛宮くんはえっ、と驚いていた。
遠坂さんも驚いた表情で俺を見てる。
「ほ、本当に今ので分かったの?」
「昔俺が召喚したサーヴァントの中にも彼女がいたからね。アーチャーは?」
「私のアーチャーは赤い外套を着て背高くて色黒で……」
「あ、うん、把握」
「早っ!」
「赤い外套のアーチャーはあいつしかいないから。緑だったら二、三人いるし、色黒だけだったもう二人いるけど」
「英霊博士みたいね、なんだか」
遠坂さんの例えに俺はあははっ、と声をだして笑う。
「確かに、普通に聖杯戦争に参加したマスターよりサーヴァントには詳しいからね。そう言われるとちょっと嬉しいな」
そしてそっか、と俺はまた目を伏せた。
聖杯戦争という殺し合いに参加している、このまだ若い少年少女を振り返る。
不遇だろう、という同情はきっと失礼だ。
「でも、そっか……二人はいい英霊を相棒にもってるよ。きっと彼も、彼女も、二人の最大限の力になってくれるはずだ」
俺のときもそうだったんだから、保障する。
どれだけ二人に助けられただろう……精神面でも、戦力面でも。
「私のアーチャーはだいぶ扱いヅラいけど」
「そうかな?確かにちょっとお母さんみたいに口煩いときもあったけど、基本は面倒見のいいお兄さん、って感じだったよ」
魔術や戦略を教えてもらったことだってある。
頼りになる、色んな意味で先輩だったけどな。
そう言えば遠坂さんはえー、という表情をした。
「……本当に私のアーチャーと同一人物を思い浮かべてる?」
「多分……。紅茶美味しい?」
「……美味しい」
「じゃぁ同一人物だ」
俺はまた笑った。
まぁ、俺も最初アーチャーはちょっととっつきにくいな、と思っていたし。
きっとまだ信頼関係を築いている途中なんだろう。
あいつは情が移ってくれば、なんだかんだ色々世話をしてくれるようなやつだった。
「ちなみに、他のサーヴァントとは会ったかな?」
「俺たちが見たことあるのはあと、ランサーとバーサーカー……だな」
「特徴は?」
「ランサーは青い髪と赤い瞳、青い服に赤い槍を持っていた」
「っ!……そっか、ランサーはあいつか。緑じゃない、ってことは若くない方かな……」
どっちにしろ同一人物だからいいか。
どっちだろうが話は通じるだろう。
「バーサーカーは、なんて表現したらいいのかしら……」
「なぁ藤丸さん、死なないバーサーカーに心当たりはありますか?」
「死なない?」
「あ、いや、死なないっていうか、死んでも蘇る、が正しいかな……」
「あぁ、そういうバーサーカーなら心当たりはあるよ。けど、そうか……バーサーカーはあいつかぁ……」
死なない英霊……死んでも蘇る英霊……12の試練を乗り越えた大英雄、ヘラクレス。
ぶわっ、と冷や汗がでてくる。
バーサーカーあいつかぁ……。
「え、なに、どうしたの?」
「んー、味方なら心強いんだけど、敵ってなるとぶっちゃけめっちゃ怖い」
「やっぱり、あのバーサーカー相当ヤバいやつなのね……」
はぁ、と遠坂さんが額に手を当てて溜め息を吐いた。
そして遠坂さんは俺をじっと見てくる。
ん?と首を傾げた。
「これはただの興味本位な質問なんだけど、いいかしら?」
「どうぞ」
「もし、あなたが聖杯戦争に参加することになったとして、一騎だけしか召喚できないとしたらどんな英霊を召喚するの?」
「また唐突な疑問だね」
「200騎も英霊を従えていた人なら、どんな英霊を選ぶのかな、って少し思ったの」
「一騎……一騎だけか……」
俺は顎に手を当てて考える。
その英霊も強いし、頼りになるし、それぞれの活かし方も違う。
でもそうだよな、普通は一騎なんだ。
もし俺が聖杯戦争に参加してマスターになったとして、俺なら誰を召喚する?
「そう……だな……、アーチャーのロビンフッドか、アヴェンジャーの巌窟王か、キャスターのクー・フーリン、とか……」
「セイバーじゃないの!?」
「セイバーならラーマかガウェイン、かなぁ」
「アヴェンジャー?それは遠坂の説明にもなかったよな?」
「アヴェンジャーはエクストラクラスで、通常じゃ召喚されないようなクラス……だったはず」
そんなのも召喚してたなんて滅茶苦茶ね、と遠坂さんが呟いた。
「ロビンはサポート面でも優秀だったから色んな方向から俺を支えてくれるし、アヴェンジャーはなにがあっても俺の隣に立っててくれる。キャスターは俺を教え導いてくれる。あ、でも使い難さとか諸々考慮しないで確実に勝ちにいくなら、ファラオか王様か頼光さんかカルナ辺りもいいかな」
「え、誰って?」
「まぁでも、どんなサーヴァントを召喚したとして、生かすも殺すも結局はマスター次第じゃないか」
ふっ、と笑いながら言えば、遠坂さんは何故かむっ、とした。
なにか怒らせること言っただろうか……。
JKの機嫌を損ねちゃったかなとビクビクすれば、遠坂さんは息を吐いて俯く。
「そうよね、結局はマスター次第、か……」
「あの子なにかあったの?」
「さ、さぁ?」
そして話している内に遠坂さんの家についたようだ。
大きい家だな、と感嘆の息を漏らす。
ギィ、と彼女は門を開いて俺と衛宮くんを振り返った。
「どうぞ、衛宮くんも藤丸さんもあがって」
「あ、あぁ」
「いや、俺は遠慮しておくよ。JKのお家にアラフォーのおっさんがお邪魔するとかもう通報沙汰だからね」
ご両親とかいたらホントなんと弁明をしたらいいのか……。
とりあえず俺は財布の中から二枚の名刺を取りだして、それを二人に渡した。
「戦力的にはなにも役に立たないけど、なにかあったらいつでも連絡して。相談くらいなら乗れるから」
二人はなにか言いたそうだったけど、口を噤んでいた。
俺が、全く関係のない人間だからだろう。
二人の良心が、一般人の俺を巻き込まんとしている。
優しい子たちだ。
「二人とも、相棒と仲良くな」
じゃぁ、と俺は片手を上げて踵を返した。
期待はしていなかったけれど、今日は色々収穫があったな。
アサシン以外のサーヴァントが特定できたのは大きい。
でも、やっぱり俺の第一目的はとりあえずキャスターに会うことなんだよなぁ。
本当にこれ以上被害を広げないために。
「あー、煙草が吸いたい……」
そうボソリと呟いた俺の前方に、青い粒子が集まってくる。
思わず足を止めて見入れば、赤い外套のアーチャーが姿を現した。
彼がいる、と知っていても、やはりこう姿を目にすると言葉が出てこない。
赤い外套のアーチャー……エミヤは険しい顔をしているかと思えば、俺を見てふっ、と笑った。
「久し振りだな、リツカ。随分と見違えた」
……あぁ、クソッ、なんでみんなこう……覚えてるんだよ……。
落ち着いて欲しい王様やらファラオで確実に勝てるのはお前か余程相性がいい人間じゃないと殺されるかやる気出さないで負けるんや……