オタクが鵜呑みにした陰謀論の一覧(一部)
オタクが鵜呑みにした陰謀論の一覧
— 新橋九段 (@kudanshinbashi) March 21, 2026
・暇アノン (女性支援団体が公金チューチュー)
・リベラル、共産党が表現規制
・フェミが企業にコンサルを送り込んで儲けようとしている
・ディズニーはポリコレに支配されている
・欧米がアニメで日本を出し抜いて儲けるためにポリコレ推進
あと何かある?
オタクは陰謀論に強い、という与太話がある。どうも、オタクはフィクションに慣れ親しんでいるから「現実と創作の区別」(手垢) ができるということになっているらしい。それに比べて○○ (任意の気に入らない人々) は……と続くのがこの言説の定番だ。
だが、事実は異なる。オタクほど陰謀論に弱い人々は滅多にいない。社会から目を背けて自分の好きな物語だけに耽溺していて、陰謀論に強くなるはずもない。
というわけで今回は、オタクが鵜呑みにした陰謀論を振り返りつつ、なぜオタクがこうも愚かなのかを解き明かしたい。なお、一覧と言いつつ (一部) なのは、オタクが鵜呑みにした陰謀論があまりにも多すぎて書き切れないからだ。
アンチ・フェミニズム系
暇アノン
オタクと陰謀論の結びつきを特に強く印象付けたのは、間違いなく暇アノンである。彼らの唯一の成果は、オタクは理知的で現実が見えているのだという彼ら自身の妄想を分かりやすく打ち破ったことだとすら言える。
暇アノン陰謀論には無数のデマが含まれるが、本質的には主要なひとつの事実認識とその背景の解釈からなる。つまり、女性支援団体が公金の支出に関して不正を行っていたという認識と、行政や政府がそれを支えていたという解釈である。
事実認識については、訴訟によって片が付いた。暇アノンの主導者たる暇空茜の主張は、裁判によってほとんど認められることがなかった。多くのオタク陰謀論者が支援団体の支出をつついた結果、出てきたのは東京都との手続きの齟齬によって処理できなくなった幾ばくかの費用だけで、団体はそれよりもはるかに多くの費用を支出していたので1円も返金する必要がなかった。(ColaboのHPに詳しい説明があるが、当事者の主張に耳を貸さないオタクのために文春の記事をリンクしておく。)
事実が存在しない以上、その背景の解釈も自動的に出鱈目だったことになる。ただ、オタクがたくましくしている妄想とは異なり、行政や政府はむしろ女性支援には一貫して冷淡であるというのが客観的な事実だ。例えば、新宿区は暇アノンによる暴虐から団体を守るどころかかえって追い出し、自ら設置した「きみまも」という施設で性暴力事件が起きるという醜態を晒している。もし本当に女性支援団体と行政に癒着があるなら、そもそも区は団体を追い出したりはしていないだろう。
フェミ・コンサルという妄想
>「言いがかりをつける方が悪い」とかじゃなくて、「言いがかりをつけられないためのリスク回避」をしたい
— しわすみ (@s_w_s_m) October 21, 2023
周りへの迷惑を鑑みなければ、フェミ運動家を広告アドバイザーとして雇ってコンサル料を毎月ウン百万払えば完全なリスク回避ができるんだよな。ヤクザに金払うようなもんだが。 https://t.co/zIsPQZdQN4
女性蔑視で企業が炎上するたびに一定数みられる妄想として、フェミニストがコンサルタントとして金儲けをするために炎上させているというものがある。要するに、因縁をつけてそれが嫌なら金を払えというヤクザと同じだという主張だ。
もちろん根拠はない。そもそも、批判されているのは彼らが実際に起こした事実に対してであって、フェミニストがヤクザの当たり屋のように事件を捏造しているわけではない。日経新聞が『月曜日のたわわ』を全面広告に載せたのも、松戸警察署が珍妙なVtuberを動画に使ったのも事実だ。これに対する批判を当たり屋的だと主張するのは、自らアクセルとブレーキを踏み間違えてコンビニに突っ込みながら逆ギレしているのに等しい。
加えて、フェミニストは批判のとき脅迫をしない。殺害予告で捕まるのは常に逆ギレをしたオタクの側である。ヤクザは自身の主張が難癖だと分かっているから脅迫をするが、フェミニストはそうする必要がない。
あと、そもそもフェミニストの批判は基本的な事ばかりなので、「フェミが炎上させた」とされる事例の9割は過去の批判をざっくりさらうだけで回避できる。コンサルを雇わなければ女性蔑視を回避できない宣伝部門に仕事を任せるのをやめればいいだけだから、フェミ・コンサルが仕事として成立する可能性は極めて低いだろう。フェミ・コンサルが成立するのは、会社に途方もないバカしかいないときだけだ。
多様性系
アサクリと弥助
『アサシン クリード シャドウズ』の主人公のひとりとして、戦国時代に黒人でありながら織田信長に仕えたことで著名な人物・弥助が選ばれたことでオタクがキレた。こう書くと意味不明だが、実際そうなのだから仕方がない。
陰謀論者オタクの主張では、アサシン クリードの制作会社であるUBIが、弥助が武士であるという「歴史的には間違った内容」をあたかも史実であるかのように扱っているとしている。だが、UBIがそのような主張をしたことはない。陰謀論者側の主張を長々と記載しているpixiv百科事典の『アサシンクリードシャドウズ炎上騒動』記事ですら、UBIの主張に対しては『ましてや「ゲームで描かれる内容は全て史実だ!」などと言っているわけではない』と書かざるを得なかったことは重い。
創作と現実の区別はオタクの得意分野だったはずだ。だが、オタクはここでゲームの内容が現実だと受け取られているという珍妙な思い込みを発動している。
ディズニーは多様性に乗っ取られている
「ディズニーがポリコレ勢力に汚染されている」は陰謀論でも何でもなくて。
— 熊ノ翁 (@V7NnRqa0uZbvFqZ) February 9, 2026
2023年にもCEOのボブ・アイガー自らが「やり過ぎてたわ」と声明出してるっていう。
そもそも実写版リトルマーメイドや白雪姫、ストレンジワールドとポリコレよくばりセットな作品乱発してて「僕違います」は通らんでしょ。 https://t.co/HryHIEzVX4 pic.twitter.com/RHcPQjbBif
ディズニーが「ポリコレ」をごり押している、売り上げや作品のクオリティを放置するほどにポリコレに乗っ取られているという主張は毎年耳にする。もはや蝉と同じだ。
こうした主張の主な原因は、過去の作品を現代版にリメイク・実写化した際の大きな変更だろう。実写版の『リトル・マーメード』のアリエル役に黒人のハリー・ベイリーが選ばれたときのオタクたちの大騒ぎは滑稽ですらあった。肌云々の前に下半身魚だぞ。
ディズニーは多様性において、むしろ保守的な態度を取り続けてきている。2022年にはディズニーが同性愛表現を内部で検閲し辞めさせていたことなどが内部告発すらされている。
一方でディズニーリゾートを中心にフロリダ州で巨大ビジネスを展開し、経済的に大きな影響力を持つウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・チャペックは、LGBTQ+コミュニティーを支持する旨を述べたが企業として公に非難することを拒んだ。加えて「ゲイと言ってはいけない法」を推進していた共和党議員にディズニー社が多額の寄付を行なっていた事実が明らかになったことも相まって、同社はかつてないほどの批判にさらされる事態となった。
その後ボブ・チャペックは態度を一変させ、企業として明確な立場を表明しなかったことを謝罪し、今後同法案に反対する行動を取ることや、政治献金先を見直すことを表明した。だがその一連の騒動の余波は大きく、ディズニーがこれまでピクサーに対し「同性間の愛情表現描写があるシーンを一方的な検閲で削除してきた」という事実がピクサー内部の有志によって暴露されてしまったのだ(*1)。
具体的な作品としては、『バズ・ライトイヤー』の同性愛表現が一旦削除され、公開前に復活したという報道も記憶に新しい。事実関係は、ディズニーがポリコレごり押し企業でも何でもないことを示している。
引用したツイートが指摘するように、確かに2023年にボブ・アイガーは近年の作品を偏っていたと主張している。しかし、実態は同時期に同性愛表現すら自己検閲していたわけで、精々が白人ではない人種を主役にしただけで「偏った」と思う程度にはディズニーが保守的だったという証拠にしかなっていない。
欧米は日本のアニメが売れないようにするためにポリコレをごり押している
何言ってるのかマジでわからないと思うが (2度目)、そう言ってるんだから仕方がない。もちろん根拠はない。正直これ以上書くべきこともない。
そもそも人権尊重は世界的な潮流であって、欧米に限った話ではない。欧米が進めているというより日本だけなんか取り残されているというイメージのほうが実態に近い。もちろん、「ポリコレ」とやらを推進する人たちの頭の中にアニメ漫画の売り上げなど一切ないだろう。
反共系
「オタクによる反戦デモ」は共産党のオルグ
2026年3月28日、「オタクによる反戦デモ」と称する運動が行われた。私は残念ながら参加できなかったが、様々なエンタメ関係者も駆けつけ盛況だったと聞いている。
この運動は個人が立ち上げ、賛同する人々がいい意味で勝手気ままに集まったものだった。ただ、デモといえば共産党が率いていると思っているオタクは未だに多い。もちろん無関係だが。
どうも、オタクは自分が気に入らない人間を全員共産党員にする癖がある。だが、デモは共産党以外の人にも企画する権利があるのだ。
共産党は表現規制をしている
もちろんしていない。オタクはネガティブな反応を1から100まですべて「燃やした」と表現するため、単なる批判と法的な強制力を有する規制の区別ができない。そこに上述の「嫌いな人間は全て共産党」が悪魔合体するとこうなる。
共産党は常に少数野党であるため、規制を押し進める権力を持たない。過去に規制をしたこともないし、すると主張したこともない。過去・現在・未来のすべての要素が、共産党が表現規制をしているという主張を否定している。
この主張がどれほど的外れであるかと言うと、彼らが「共産党が規制を従ってる証拠だ!」と得意げに持ち出す「共産党の公約」とやらに規制すると書いていないレベルだ。何を言ってるかわからないと思うが (3回目)、実際にそうなんだから仕方がない。このデマはコミケの英雄こと山田太郎が積極的に流布したものであり、オタクはそれを鵜呑みにしていると思われる。
英雄を名乗る人物が実はデマカセ野郎だったって、ちょっと捻った異世界転生ものみたいだよね。
オタクはなぜ陰謀論にハマってしまうのか
正直、ここに書いた陰謀論はごく一部に過ぎない。全部書いていたら2028年になってしまう。27年にすら収まらない。
では、なぜオタクは陰謀論にハマってしまうのだろうか。ここからは推測するほかないし、原因は無数にあるからここで挙げるのは一部に過ぎない。
ここでは、オタクが陰謀論にハマる一因として、オタク文化と人権主義、とりわけ「政治的正しさ」と表現される要素との絶望的な相性の悪さを挙げたい。
オタク文化は紋切型の文化
この記事は『九段新報+α』の連載記事です。メンバーシップに加入すると月300円で連載が全て読めます。
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