light
The Works "三神と三人" includes tags such as "Fate(腐)", "槍弓" and more.
三神と三人/Novel by 酒侍

三神と三人

10,614 character(s)21 mins

アニキ達が神様でエミヤ達は人間なパラレル。槍弓に術影弓に狂王黒弓の予定。
省略部分とか続きとかはその内溜まったらってことにしてください。

6月1日追記
本文の誤字・内容を発見したので修正しています。

そういえばエロ回入れる予定があるから最初からR18で投稿してますが今回は無いんです申し訳ない!次はあります!

別に濡れ場は無いんだから年齢指定不要だと気づいたので外しました。2と3についてはそのままにしていますが、読まなくても話の流れは通じるので問題ないということで。

5月31日 R-18デイリーランキング44位!読んでくださっている皆様に感謝!!
6月1日 R-18女子に人気ランキング13位…?13位?じゅうさんい?

8月22日追記

まっっっっって!!いつの間にか1000userタグついてる!!うわほんとうに嬉しい!本当にありがとうございます!!

1
white
horizontal

「なかなかにいい策だったぜ?まあここまでだな」
 その言葉に、ああ失敗したのだ、と理解するのは一瞬だった。


 この国には掃除屋と呼ばれる人間がいる。傭兵として戦陣を駆ける者、敵国の情報を盗む諜報員となる物、暗殺を請け負う者。単に人助けを生業とする者、求められた時のみ依頼を受ける者。要は、何でも屋だ。
 その掃除屋の中に兄弟で依頼を請け負う者が存在した。それがエミヤ達3兄弟だ。
 
 エミヤ達には名前が無い。掃除屋として幼い頃からあらゆる知識を叩き込まれた彼らには、師が育てた個体としてわかるようにとつけられた『エミヤ』という呼び名以外は与えられなかった。
師としてエミヤ達を育てた人物が、所詮お前たちは使い捨ての道具なのだ、だから個として認識する名前は不要なのだ、と言って名付けなかったからだ。
 呼ばれる時は『お前』『そこの』『おい』といったように、物として扱われていた。だから、名前はない。けれどそれではあまりに不便なので、3人でそれぞれ勝手に呼称を付けている。
 長男が『黒』次男が『赤』三男が『影』。けれどそれは3人でいるときのみの呼び名で、基本的に他人には呼ばせない。長男と次男はそれぞれ身に着けている防具の色を己の名とし、三男は次男と瓜二つの容姿から、まるで兄の影のようだ、ということでその名を名乗っている。

「それで、厄介な依頼というのは?」
「神殺しだ」
「引き受けたのか?」
 影の声に黒が首を横に振った。けれど依頼書と前金らしきものが机に置かれているところを見る限り、これは引き受けたのに等しいのでは…と疑問の目を向けた赤。
「前金は押し付けられた。明日になったら返す。使うなよ」
「しかし物凄い金額だな。というか、神殺しを依頼するような馬鹿がいることに驚きだ」
 依頼書に書かれた金額を見て呆れたような声を出した影に赤が静かに言う。
「…いや、この土地の神というと悪い噂しか聞かない。頼りたくなる気持ちも、わかる」
 テーブルにスープの入った鍋を置きつつ依頼書を読んだ赤の表情が曇る。

この世界には様々な神が存在する。その神は世界各地様々な場所を己の領土としており、人間はその神に対して捧げものをすることで様々な祝福を得る。ほとんどの神がその土地で育った作物や家畜といったもので満足するが、中には厄介な捧げものを要求する個体もいる。

 例えば、人間とか。

「この土地を治めているのは確か三神だったな。昼を管理するのと、夜を管理するのと…あとはなんだった」
「昼と夜の間を管理する神だ。本来1つの個体だったらしいが、いつの頃からか三体に分離したらしい」
 影の言葉に黒が答える。依頼書を見ながら赤が黒に訊ねる。
「まさか三神全てを殺せという依頼なのかこれは」
「そうだ」
「リスクが大き過ぎる!引き受けられるわけがない」
 ただでさえ神殺しは1神だけでも非常に危険だ。なにせ神を殺すのだ、単に人間を殺すのとは勝手が違う。何が起きるかもわからないし、そもそも無事でいられる保証すらない。
「だから諦めてもらうしかない。…とはいえ、実際俺たちは神殺しを何度かこなしてしまっているんでな」
 エミヤ達は何度か神殺しの依頼を引き受け、それを見事にこなした実績があった。とはいえ引き受けた依頼は全て最悪の状況まで追い込まれてしまって、残りの道は死しかない、といった状態になった場所のみだ。
 荒れた土地を管理し続ける神はいずれ狂い、その土地を侵していく。侵された土地は人が住めないどころか作物も何一つ育たない不毛の大地へと変化してしまう。そうなった土地を新たに治める神が現れるまで、永遠に。
「この神は何が問題なんだ?人間の生贄が必要なのはわかるが、かなり人口が多い場所だろう」
「噂程度しか耳にしたことがないが、生贄として捧げられた人間の家族が儀式を見届けなくてはならないらしい。生贄の心臓を神が槍で貫き、それを喰らってる姿を見届けるんだと」
「…食欲が失せる話だな。なんでそんな話を今したんだ」
「お前が聞いたからだろうが。こら肉を残すな」
 影が自分の前に置いていた皿を黒の前に押しやる。それを咎める赤だったが、黒がその皿を引き受けてしまったので仕方ないとでもいうようにため息をついた。
「それで、本当に断れるのか?」
「わからん。…お前達も明日依頼者に会うのに同行しろ。そのうえで、決める」


 結果、兄弟は依頼を引き受けることになった。

「さて、作戦を考えよう」
「引き受けてよかったのか」
「仕方あるまい」
 はぁ、と重苦しい息を吐いた黒に赤。それほどまでに、内容が酷かった。

 いわく、あの土地の神は土地を管理するつもりがないのだと。管理もしないのに、生贄だけは求める。そして生贄は若い娘に青年のみ。己の子供を差し出せないと拒否した家族は皆殺しにされ、見せしめのように朱槍で貫かれた死体が街の広場に飾られる。それを見て逃げ出そうとした者達もことごとく町の出入り口で斬殺され、バラバラになった手足がそこら中に散らばされている。
 今回決死の思いで依頼を持って来たその町の人間は、昨夜の内に殺されてしまっていた。全員心臓を抜き取られて、絶望の顔のまま。
 エミヤ達が訪ねた時には死体の埋葬が行われている最中で、仲介役としてエミヤ達と依頼人を引き合わせた人物が事情を説明してくれたのだ。
「前金は受け取っている。依頼を引き受けない理由は無い。…さて、問題は三神を一気に片付けなくてはならないという部分だ」

 黒が仕入れてきた情報をもとに作戦を立てていく。

「まず第一に、神はそれぞれの管理している時間帯が一番力が強くなる。そして昼と夜の神は戦闘能力が高い。つまり、消去法で昼と夜の間、狭間を管理する神から殺すのが妥当だろう」
「狭間の時間っていつだ」
「夜明け前から夜が明け、完全に陽が出るまでの時間と、日が沈み、完全な夜になるまでの時間だ。…となると、一度街に入ってからきちんと時間を計測する必要がある」
 そこは一番最後だな、という赤に影が頷いた。
「第二に、毎度悩む部分だが今回は何も考えなくていい。神の居住区域だが、誰でも入れるらしい」
「はっ?」
 地図を広げた黒が指を指す。
「ここが街。そしてこの森林の奥にある屋敷。これが神が住んでいる場所だ」
「ず、随分と人間染みた神だな…?屋敷?屋敷って、普通に建物に住んでいるのか?神が?」
 今まで殺してきた神も、他の街で見た神も、神域と呼ばれる空間に居住区域を構えていた。そこは人が入ることは出来ず、捧げ物を持っていくときも神官や巫女といった神に仕える者が同行していないとその空間に立ち入ることが出来ない。それが今回は全然違う。
「今までも何人か神殺しの依頼を受けて挑んだ掃除屋がいたらしい。…全滅したわけだが」
「…他に注意点は?」
「…本当は3人同時に1神を、と思っていたのだがな」
 黒が迷うように声を出す。
「1人1神、で当たるほうがいいかもしれん」
「何故」
「仮に1神だけ相手にしていたとして、途中から他の2神も集まってみろ。こちらに勝ち目はない。ならばいっそ、万全の装備に備えをした状態でそれぞれ1神にぶつかるのがいいかもしれない」
 だがそれは非常に危険だ。相手は神。万が一、敗れれば。
「…誰が、どの神を相手にするか…」

 そして話はまとまった。

「健闘を祈る」
「そちらも。お前もな」
「私だって掃除屋だ。…兄さん達も、気を付けて」
 それから数週間後、神殺しの装備を整え、3人が目的の屋敷の前へとやってきた。気配遮断の為の小細工もしてきた。後は、目的の神を見つけ次第、己の持つ武器で殺すのみ。

 屋敷に侵入した3人はそれぞれ3方向に別れた。町で収集した情報をもとに、ターゲットに定めた神がいるであろう部屋を目指す。

~赤視点(黒と影は省略)~

 赤は両手で握りしめた剣に神経を集中させ、周囲の気配を探る。森に入った時から感じていた奇妙な静けさは、屋敷の中にも広がっている。神には通常眷属と呼ばれる精霊のようなモノや使い魔のようなモノが近くにいるはずなのだが、その気配すらない。
「…ここだな…」
 その気配が無いからこそ、神の気配を濃く感じる。
 かなり屋敷の奥へと進んできたところで、とある部屋の前で立ち止まる。赤は扉の空いている部屋の中を覗きこむと、そこには絹の幕で覆われたベッドがあり、その上に誰かが横たわっているのが見える。幕のせいで少し見えにくいが、青い色が見えた。恐らく、昼の神だ。
 足音も立てずに部屋へと入り込み、ベッドへ近づく。ベッドの上で寝ている人物、神は、こちらの気配に気づく様子はない。今なら。
 素早く動き、持っていた剣を神の心臓へと突き立て―…


「掃除屋か」

 穏やかな声が響いた。と思ったら、剣を突き立てた先に目的の姿は無く、内心で失敗を舌打ちしながらも振り返る。今入ってきた出入り口から聞こえてきたその声の主を睨みつければ、そこには朱槍を片手にこちらを見つめる、青い髪、赤い目の神が立っていた。
「…神、クー・フーリン…」
「屋敷まで入って来て寝込みを襲ってくるなんてなぁ。おまけに神殺しの武器か。なかなかにいい策だったぜ?まあこれまでだな。…そいつはいい武器だ。気配に気づけなかったら死んでたな」
 にこやかな笑みを見せる神に、赤は持っている双剣を構える。今の時間帯はまだ彼の時間ではない。これでも神殺しをこなしてきた身だ、最悪他の兄弟が神を仕留める時間までは耐えきれるだろう。
「けどなぁ…惜しいよなぁ」
「…」
「なあ、お前名前はなんて言うんだ」
 あっという間に青い鎧が神の体を包む。その立ち姿はまるで戦神のようで、持っている朱槍にも神の気が纏わりついているのかギラギラと異様な輝きを放ち始める。昼の神、ランサー。その槍は、心臓を確実に貫く。
「生憎と、神に名乗れるほどの名は無いものでね」
「そうか?あー… エ ミ ヤ か」
 その名を呼ばれ、ゾワリと体が震える。嫌な感覚に、そして何故か一瞬痛んだ心臓に思わず苦悶の表情を浮かべた。それを見て神が首を傾げる。まるで人間のように。
「ん?…別に名があるのか。そっちを知りたいな。なあ?」
 何もいない右隣にそう言った神。すると、その場所に闇が集まり、中からずるりと異形の姿を持った、今目の前にいる神と同じ顔を持つ、別の神が姿を現した。
 黒い鎧装備に長い尾。目の前の神と同じような朱槍を右手に持っており、反対側には…。
「!」
「ってお前すげぇ傷だな!なんだなんだ、その人間の持ってた武器にやられたのか」
「…神殺しの弾だ。まだ体内に残ってやがる」
 小脇に抱えられた兄である黒は意識が無いのかピクリとも動かない。それどころか、生きているのか怪しいぐらいの出血をしている。おまけに、呪いか何かを受けたらしく、体の至る所から黄金色の亀裂のようなものが覗いている。だが黒を抱えている神も相当の傷を負っている。…エミヤ達の中では一番の実力を持つ彼があそこまで外傷を負わせたというのに、それでも仕留めきれなかったのだ。
「そっちのはどうだったキャスター?」
 今度は左側に声をかけた神。するとそこに霧が集まり、霧が散ったその場所にはまた1人の神が立っていた。薄青のローブを身に纏った神は両腕で大切に抱えた人間を愛しそうに見つめる。
「一撃喰らわされたがなんとか踏ん張れた俺にご褒美なんだろうな。可愛いぞこいつ。兄弟の中で自分が一番劣ってるって思い込んで、だからこそ自分が死んででも兄の役に立てればっていう健気な思いが伝わってきてなぁ。可愛いなぁ、飼っていいよな、うん。飼おう」
 こちらも何か呪いでも受けてしまったのか、影の顔や腕を侵食するように黒い筋が身体に入っている。確実に何かされている。だがそれが何かわからない。こちらは黒と違って外傷らしきものはないが、それでも目覚めないところをみると何かされてしまったのだろう。
 3対1。明らかに不利だ。

「なあエミヤ、提案だ」
 大人しくしてくれるのであれば、お前を傷つけない。それに、兄弟の手当てもしてやろう。
「どうだ?」
「そんな言葉、信用できるものか。それに」
 どうせ殺されるならば、せめて一撃。一撃でも攻撃が入れば、この剣ならば。そう思いながらも今の状況でどの神に対して狙いを定めればいいのかがわからない。時間帯を考えるならば己の目の前で槍を構えている昼の神か、それか手傷を負っている夜の神か。だが万が一にでも黒を盾にされては攻撃すら出来ない。
「うっ…ん」
「お?ごめんな、もう少し眠っててくれ」
 いい子だなー、と言いつつ狭間の神が影の額に口づけを落とす。それを抵抗もなく受け入れた影は開きかけた目を閉じてしまった。けれど、一瞬。本当にわずかな一瞬。影と赤の視線が交差した。
「…武器を、置けば」
「ん?」
「武器を置けば、兄弟を助けてくれるんだな」
「ああ勿論」
 昼の神の言葉に、赤が双剣から手を放した。重たい音を立てて落ちた剣。それを見て神が告げる。
「不意を突かれてそれで襲い掛かってこられても困るんでな、こっちに蹴りだしてくれ」
「…」
 無言のまま言われた通りに双剣を足で少し勢いをつけて蹴る。それはスルリと床を滑り、神々の前まで緩やかに移動していった。それをしゃがんで拾い上げようとしたランサー。感心しながら武器を見つめる。
「ここまで神殺しに特化した武器っていうのも初めて見たな。これなら一撃だけでも俺たちにとっては致命傷になりかねん」
「そうかね。…ならば安心だ!!」
 そう言うやいなや、赤は己と武器を繋いでいる魔力で編まれた透明な鎖を掴み、それを自身の前で勢いよく交差させた。振り上げた勢いのまま鎖の先についていた剣は両隣に立っていた神のそれぞれ片腕に突き刺さり、その攻撃によって2神が持っていた人間を思わず落とした。
 部屋の出口、つまり3神の背後に向かって走り出し、落としかけた2人を素早く回収しつつ両肩に担ぐと、そのまま走り抜ける。廊下に出て屋敷の窓へと一直線に進めば、わずかに意識が戻ったらしい黒が銃で窓ガラスを撃ち抜き、脱出のための道を作った。迷わずそこへと飛び込み、そのまま屋敷の外へと逃げ出す。そしてそのまま森の中へと姿を消した。

「逃げちまった」
「いてて…。こりゃ治すのに時間がかかりそうだ。オルタ、お前まだ体内に弾残ってんだったよな。よく動けたな。っておい、何処行くんだ」
 窓から森を眺めている2神を無視して、オルタと呼ばれた神が窓枠に足をかける。
「追いかける」
「確かにこれから夜だが、流石に無謀じゃないか?」
「…3人とも連れて帰って来てやる」
 だから俺の傷を治せ、と視線だけで告げて来る神に、他の2神が頷いた。
「そうだな、夜は危ないから早く連れて戻らないとな」
「じゃあ俺は部屋の準備でもしておくか。疲れてるだろうからすぐ寝たいだろうしな」


「すまない、失敗した」
「…俺もだ…」
「全員失敗だ。やはり、無理があった。…走れるか?とにかく、町から離れよう。町から出てしまえば神の治める土地ではなくなる」
 このままここにいるのは得策ではない、という赤に頷いた黒と影だったが、立ち上がろうとしてそのままペタリと地面に座り込んでしまった。驚きの表情になった2人に、赤はどうしたんだと声をかける。
「…立てない。というより、力が入らない…?」
「この傷が原因か…?駄目だ、体がいう事を聞かない」
 どうしよう、と不安そうな目を向けてきた影。その顔を見て、赤が息をのむ。左の瞳が赤と同じ鋼色、ではなく、黄金に輝いていた。それを見て黒も唸る。
「えっ、ど、どうしたんだ2人とも…」
「鏡が無いのが残念だ。お前も俺も、ろくでも無い呪いを貰ったようだな。…赤。どうせ俺たちはこの有様で動けん。お前だけでも逃げろ」
「そんなわけにいくか!」
 怒りの声を上げた赤だったが、不意に感じた気配に口を閉ざした。同様の気配を感じたのか、黒と影も周囲に警戒の目を向ける。しかしこちらは武器もなければ戦えるのは1人のみ。そして近づいてきているのは、あの場にいた1神。夜を管理する、あの異形の者だろう。
「…置いていくことは出来ない。死ぬなら、せめて」
 3人共に。


「お、お帰り。お前にしては早かったな」
「…自害するつもりだったぞこいつら」
 ぎりぎり間に合った、と言ってベッドに担いでいた3人を降ろしたオルタ。気絶しているらしく3人とも目を覚まさないが、オルタの言葉を聞いてランサーとキャスターが目を点にした。
「おいおいおい、なんでそうなるんだよ」
「知るか」
「間に合ったんならよかったけどよ…あーあ、薄っすら全員首に傷ついてるわ。本当にぎりぎりだったんだな」
 キャスターが首筋を順になぞっていき、ついていた傷口を消してしまう。ついでのように自害防止用の紋様を描いてやり、これでもう安心だ、というように微笑んだ。
「目が覚めるまでここに寝かしておけばいいよな。どうせ逃げられないし」
「丁度いい、俺もさっさと繋いでやろう」
 ランサーは右手に朱槍を掴むと、それを眠っている赤の心臓目がけて突き刺した。出血もなく、痛みもなく、その槍は心臓に突き刺さり、ズブリと沈んでいく。
 槍の先が完全に埋まったところで引き抜き、服をめくりあげて突き刺した箇所を眺める。するとそこに太陽を模したような赤い紋様が浮かび上がった。それを見て満足そうな顔をしたランサーがオルタとキャスターに視線を向ける。
「それじゃ、目が覚めるまで寝かせておいてやろうぜ。3人とも起きたら、これからの話をしようや」

~(起きてから現状把握まで)略~

「さて、話をしようや。いろいろ誤解している部分もありそうだしな」
 そう言って案内された一室はテーブルと椅子が置かれた部屋だった。何の部屋だろうか、と疑問に思った赤に「他の領土の神が来た時に相手する部屋だ」と言ったランサー。つまりは応接室なのだろう。
 ランサーが座ったのとテーブルを挟んで反対側の椅子に腰かけた赤。それに続いて黒と影も赤の座っている側に腰かける。が、それを見てなぜか黒の隣にオルタ、影の隣にキャスターが椅子を引っ張って来て座った。
「えっ」
「ん?どうした?」
 にっこり微笑んだキャスターに目を白黒させながら若干体を引いた影。だが引いた距離だけ相手が詰めて来る。
「な、んで近寄って…」
「椅子じゃなくて俺の上に座らないか?なあ、ほらこっちおいで」
「ヒッ、え、遠慮する!」
 助けて、といわんばかりに赤の腕にしがみついた影。かなり怯えている。

 …影は美形が苦手だ。とにかく美しい物に対して苦手意識がある。それは幼少の頃、美しい物を愛でることはお前のような物に相応しくないと教え込まれたのが原因である。お前は醜いのだから美しい物に触れたところで、それを穢れさせるだけだ。そう師から躾けられたせいで、今でもこうなのだ。
 だからこそこの美しい神とは非常に相性が悪いだろう。

「遠慮なんかしなくていいんだぞ?おいで」
 両手を広げて誘ってくる神にどうすることも出来ずに硬直する弟。助けを求められているのはわかるのだが、その反対側でも無言の攻防が繰り広げられていた。
「…」
「…」
 その両腕の中に閉じ込めようと黒に手を伸ばすオルタに、その腕の中に誰が入るかと言わんばかりに両腕を掴んで全力で拒否している黒。視線だけで訴えて来る己の兄を手助けしようにも、影が腕を掴んでいるので動くことすら出来ない。
「お前ら少しは我慢できないのかよ。俺だってそっち行きたいっての…」
「…話とは。誤解とは何のことだろうか」
 ランサーが呆れたように2神にそういうが、両者は聞き流している。現状把握のためにも話が進まなくてはどうにもならないと判断した赤がランサーに訊ねれば、逆にこちらに質問をされた。
「そうだ、お前さん達そもそもどういう経緯で神殺しの依頼を受けたんだ。掃除屋っていうのは狂った神のみ殺すのを引き受けると聞いたんだが」
「引き受けたのは兄だ。私たちは依頼人に会ってない」
 隣に視線を移せば、力比べに敗北したらしい黒がオルタの腕の中に閉じ込められていた。そういえば腕を引っ張る感覚が無くなったな、と嫌な予感がして反対側を見れば、キャスターの膝に乗せられて魂が抜けたように放心している影の姿が視界に入った。大丈夫なのだろうか。
「…依頼人から聞いていたのは、貴様達が土地の管理をしないくせに生贄だけは要求し、挙句生贄の心臓を喰らっている姿を最後まで見せられ、逃げようとすれば斬殺されるということだけだ。流石に鵜呑みにするわけにはいかないのでね、街での調査もしたが」
 住民に聞けば答えは同じ。神は狂ってしまったのだ、もう耐え切れない。そんな言葉だけだった。
「それでこちらも神殺しを決行した」
「ふぅん。じゃあ人間達が勝手に怒ってただけか」
 なんてことない、と言わんばかりに呟いたキャスターの言葉に意識を取り戻したらしい影が言う。
「勝手にって」
「この辺りを治めている神は俺達以外にもいるんだが、全員が全員太陽の加護が強い神ばかりでな」
「知ってる」
「そうかそうか。それで、この周辺は夜が無かったんだ。どっかの神が活動してる間は昼だったからな」
 それでも特に何の問題もなかった。けれどある時、この周辺に住み着いた人間がこちらに言ってきたのだ。このままでは作物が育たない。これではいつか飢えてしまう。どうか夜を作ってほしい。
「とはいえ夜を作ることに力を注げば昼が疎かになる。下手すりゃ日光量の調整がうまくいかなくてあっという間に砂漠地帯の出来上がりだ。それじゃあ自然が育たん。ついでに言うと、昼と夜を切り替えるための存在も必要になる」
 そういう理由で3神になったのだ、と告げた神。以来この領地にだけはきちんと昼と夜が訪れるのだ。ちなみに、この領地を出てしまうと夜は完全に陽が落ちない白夜状態になっている。
「その時にちゃんと人間達には言ってある。3神になるから今まで以上に生贄が必要になる。かつ、力を安定させるため若い男女でなくてはならなくなる、ってな」
「生贄の心臓を喰らうのを見届けさせるのは」
「それだって人間側からの願いだ」
 今度はランサーが言う。いわく、己の子供を贄として差し出すのだ、その最期をこの目で見届けなくてはならない。だから、立ち会わせてほしい。そう願ったのだという。
「こっちはその願いを守り続けているだけだ。それなのにそれを今更残虐だなんだと言われても、お前達が望んだことだろうとしか言えないじゃねぇか」
「なら、何故街から出た依頼者を殺害したんだ」
「依頼者?」
 赤の言葉に首を傾げたランサー。それに若干苛つきながらも説明をする。
「兄に依頼を持って来た人間だ。私たちは翌日会う予定だったが心臓を奪われて死んでいた。お前たちの仕業だろう。何故あんなことを」
「誓約だ」
 オルタが静かに言い、視線が集まる。
「この街で生まれ育った者は全員神に全てを捧げる。そう誓約している。この領土から出る時にはその命を返すと」
「だから殺したと?」
「ああ」
「それはいつ願われたんだ」
「俺達が3神になった時だ」
 つまり全てそこなのだ。その話を知らないからこうして全てがおかしなことになってしまっている。人間は神に怯え、逃げることも出来ずに、ただこの地で死ぬのを待つだけ。そんなことになっている。
「何故それを教えてやらないんだ!君たちはこの土地を管理しているのだろう。ならば」

「うんうん、お前さんの言う通り俺たちはこの『土地』を管理しているんだよ。人間の管理はしてない。むしろ邪魔なだけだ」

 キャスターは赤を見つめて淡々と告げる。
「勝手に土地に住み着いて、好きなように言って居座って。生贄?そんなの当然の対価だ。むしろそれがあるからこの土地で生活出来ているんだ。生贄を持ってくるから願いを聞いてやっているだけに過ぎん」
 残虐?だからなんだ。自由になりたい?おかしなことを。
「全て人間が望んだことだ。そうであれと奴らが願ったことだ。それを今更神を殺して無かったことにしてしまおうだと?」
 馬鹿にするにも程がある。
「そもそも生贄のことだって誰かが伝えていけばいいだけの話だ。その役目すらこちらに押し付けるのか。どこまで偉いんだ人間っていうのは」
 なあそうじゃないか?と見つめて来るその目は冷たく、赤は口を閉じた。正論だ。そして言い返す権利はこちらにない。これは、この土地で生活する人間の問題だ。…迂闊に手出ししていいことではなかったのだ。

 しばし無言の時間が続き、赤が口を開く。
「それで、君たちは私達をどうしたいんだ」
 殺すでもなく、こちらがした行為は無意味なことだとご丁寧にも教えてくれた神々。彼らがしたいことが全く理解できずにそう言えば、ランサーが笑顔で言った。

「どうしたいも何も、ここで一緒に暮らすんだぞ」

 無言の数秒。そして響き渡る拒否の声。果たしてそれは、誰から出たものだったのだろうか。それはその場にいた者にしかわからないことである。

 


Series
#2 -----

Comments

  • うかり
    January 20, 2019
  • 紗那
    May 18, 2018
  • 御藤(成人済)
    June 4, 2017
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags