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アディオスベイビー/Novel by ひとせ

アディオスベイビー

2,937 character(s)5 mins

ねえ!!!!!!!!聞いてください!!!!!!!!Fateでえろ無しの文とか初めてなんですけど!!!!!!!!って友人に言ったらすごい顔された。

【現パロ】とある幼馴染みな二人の深夜の一幕。

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 祝い酒だと称して店を何件も梯子し、しこたま飲んで気付けば終電を逃していた。日付の境もとうに越えた宵の中を、ランサーはアーチャーの肩を借りて上機嫌で歩く。その足元は覚束ないが、ふわふわと浮遊する感覚がひどく心地よく、アルコールの回った頬は本来の白に薄く朱を指している。飲みすぎだぞ、と諭すようなアーチャーの声も少し上ずっていて、彼自身にも酔いが回っているのが分かった。
 酒にあまり強くないアーチャーは飲む量を抑えていたが、それでもランサーと共に飲んだ酒は彼の心を満たしたらしい。鼻歌まで歌いだしたランサーに呆れつつも、上気した頬は緩んでいて、普段不機嫌そうに吊り上げられた目元も心なしかとろん、と蕩けている。じゃれつくように、ランサーがその青い頭をアーチャーの首筋に擦り付けると、いつもは小言や苦言が飛ぶはずのアーチャーの口から、代わりにくすくす、と稚い苦笑が漏れた。アーチャーは完全に隔てを取り払っている。酌み交わした酒の効果は、如実に表れていた。

 街灯もまばらな道を、互いに支え合いながらふらふらと歩き、とある公園へとたどり着く。こじんまりした公園だ。遊具はブランコとシーソーのみ。それらは車止めの柵で囲っただけの、いっそ殺風景も極まる開けた敷地の隅に、ひっそりと据えられている。深夜の公園は当然のことながら人気がない。遊具の剥げた塗装と代わりにこびり付いた赤褐色の錆色も相俟って、一層荒廃感を醸し出している。夜風が街路樹の枝葉をざわざわと揺らす以外、そこには気配も音もなく、閑々たる静寂が二人を出迎えた。

「変わんねーなあ、ここ」

 この公園を訪れるのは、実に数年ぶりだった。遊具の劣化具合にいささかの時の流れを感じるものの、大まかな景色や肌に感じる雰囲気は変わらない。
 ランサーは懐かしさにおされてブランコの鎖を掴んだ。ぎい、と軋んだ音をたてた鎖に、ひんやりと掌の熱を奪われていくが、その感触は決して非情には感じられなかった。硬質なそれは拒絶ではなく、ただひたすらに受け入れる強靭さの表れだ。ランサーは今、その強靭さを最も欲していた。

 一本、ぽつんと立てられた電燈の明かりが二人の姿を照らし、砂の地面に長くぼやけた影を映している。住宅地から少し離れたその公園は誰にも邪魔されない穴場であり、かつて幼い頃、二人でよく日が暮れるまで転げまわるように遊んだ思い出の場所でもあった。アーチャーも久しぶりに訪れた公園が懐かしいのか、感慨深そうな表情を浮かべて辺りを見渡している。
 そんな、懐かしさだけを体中に巡らせて思い出を追走するアーチャーとは違って、ランサーは懐かしさにまた別の――煽るように飲んだ酒で払拭しようとしていた感情を呼び起こされそうになって、ほう、と小さく息を吐いた。
 幸いにして、その吐露はアーチャーに気づかれることはなかったが、代わりに握りしめていた鎖がそれを拾い取って再び軋む。思わず舌打ちをしかけたランサーだったが、ふと、アーチャーの偲ぶように細められた目を見た途端、

「ちょっと遊んでいこうぜ!」

 と言って、アーチャーの腕を掴んでいた。

 狼狽えた声を上げるアーチャーに構わず、ランサーはぐいぐいと腕を引っ張っていく。ブランコとは反対の公園の隅、両端の座席を子犬と子猫に模したシーソーへ近づくと、子猫の座席に半ば無理やりアーチャーを座らせた。その大柄な体躯に見合わない小さな子猫に跨り、酔いの回った頭では現状を図りかねているのか、アーチャーはきょとんとした表情を浮かべる。それでもすぐさまはっと我に返って、たまらず腰を浮かせようとするが、それよりも先に、ランサーが向かいの子犬へと陣取っていた。にやりと人の悪い笑みを浮かべると、ぐっと子犬に体重をかけて身を沈めるやいなや、勢いよくシーソーを漕ぎ出した。

 無邪気に跳ね上がった子犬と子猫が、二人の体を交互に宙へと攫う。

 なす術もなかったのだろう。大掛かりでもなんでもない子供用の小さな遊具だったが、ほろ酔いに思考と動きを鈍らせたアーチャーを捉えるには十分だったようだ。
 子供の少ない力でも軽やかに漕げるようにと設計された、支柱にバネが使われているシーソーは、成人男性が力を込めることでたいそう躍動的に二人の体を振り回す。公園の静謐な空間ががらりと変わる。深夜の公園というシチュエーションで、大の大人二人が躍起になって遊具で遊ぶ光景はきっとひどくシュールだろう、とランサーは自嘲した。
 ランサーが主導権を握ったシーソーはアーチャーの意志を無視して跳ね回り、結果、反応の遅れたアーチャーは手摺を掴んでやり過ごすしかなくなる。自分の思うまま、なすがまま、引き攣った表情で子猫にしがみつくアーチャーの姿に、ランサーは自分たちの幼い頃の、このシーソーで遊んだ記憶を思い出した。温かいセピア色が脳裏に広がる。あの時も、同じようにランサーが無茶な漕ぎ方をするものだから、アーチャーは振り落とされないように泣きべそをかいて、必死に子猫へとしがみついていた。

 あの頃、アーチャーはランサーのものであり、ランサーもまたアーチャーのものだった。喜びを分け合い、悩みを分け合い、思い出の大部分を二人で共有し成長してきた二人。何十という季節が、並び立った二人の前を等しく過ぎていった。互いにただの幼馴染には収まりきらない特別な存在だった。
 無論、子供の独占欲がいつまでも許されるわけがない。
 子犬が体を低く伏せた瞬間、ランサーは砂を巻き込んで地を蹴った。もはや八つ当たりだ。口からは楽しそうに笑い声を響かせて、顔には心底愉快そうな表情を張り付けて、唯一、正直になれる脚だけが苛立たしさを発散させる。

「アーチャー! 」

 子犬は狂ったように暴れ回っている。それに翻弄され舌を噛まないように注意を払いつつ、ランサーはアーチャーの名前を呼んだ。応えるようにアーチャーが顔を上げる。やはりあの時と同じだった。泣きそうになりながらも、必死にランサーの声を拾おうとしている、素直で幼い顔。
 酔いは疾うに醒めていた。体のように、心まで思い出に振り回されるわけにはいかなかった。シーソーを漕ぐ力は緩めることもないまま、アーチャーに不安な思いをさせまいと極上の笑顔を見せる。受け入れなければならない。自分が受け入れずに、誰が受け入れるというのか。ツン、と沁みる何かを思い出と共に仕舞い込んで、一際強く地面を蹴る。
 セピア色だった目の前が、本来の夜の色に引き戻された。ぐわんぐわんとぶれる景色を背に、子供の姿だったアーチャーがはっきりと今のそれにすり替わる。受け入れよう。自分たちは“何も”変わらないのだと、受け入れよう。淡い芽は、今ここで摘み取って、どうしようもない現実を、これからずっと、愛していこう。
 放り出されそうな感覚をようやく素直に受け入れて、努めて明るく声を張り上げた。

 自分の恋は、ここで終わる。







「結婚おめでとう!!」


 彼は、自分以外のものになるのだ。




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