お酒に酔ったマスターが、とっても素直になる話
人類史と異なる、獣蔓延る時間軸へとこれから飛び込むマスターに。最後の、楽しかった夢を。
* * *
にわか(FGOから始めた)がこんな小説書いてすみませんでしたああアアア!!
今さっき!!イベントのためと思い!!!人理を修復してきたんです!!!!もうやだ!!!!!好き!!!!!!
……ふう。
いろんなところをかじった知識で書いてるし、私めの好きな鯖(うちにはいません)ってかカプ書いてるし、キャラ崩壊と解釈違いがあるかもしれなくて怖いけど書いたから投稿します(SAN値0)。何が好きって鯖ぐだ♂が好きで、剣スロットにあのセリフ言わせたかっただけなんですごめんなさい。多分n番せんじぃ……。
フレンド様のアナスタシア様と、うちのマルタと式ちゃん、キャスギル様にカーミラさんのおかげです。それに応為ちゃん(葛飾北斎)、よくぞ耐えてくれた。……あれ、キャスギル様以外書いてない(汗)。
次は新宿!
……実はもうひとつFGOでネタが浮かんだなんて言えない!!
あ、あと読みやすいかと思って書き方変えました。行間あると見やすいかと思って(超個人的見解)……。ご批判があればすぐさま戻します故、お試し投稿です。m(_ _)m
[追記]誤字と、なんとなくおかしいと思ったところを修正しました。失礼しました。
これまでの作品へのいいね等も、本当にありがとうございます!FGO界でもいいねがもらえるとは……(汗)。恐れ多い。ありがとうございます!!
[追記の二乗]ひゃくゆーざーずいり???ほんとですかこんな私めの小説でですかほんとに、あれ、夢じゃないんですか!?100usersの方々のような天上人の領域になぞ私がいたら天変地異が人類悪が(中略)恐れ多すぎますでも嬉しすぎるのでありがたくタグ頂戴致します誠にありがとうございました!!!!!
……はわぁ。
いいね等がこんなにいただけているのだけでも嬉しいのに、ゆーざーずいり……(語彙力の死)。しょ、精進させて頂きます!!ありがとうございました!いいねやブクマ、さらにはフォローなど、ありがとうございます。相も変わらず、夜中でもベッドの上でバタバタしながら喜ばせていただいています。
[追記の三乗]微妙だなと思っていた言い回しを少し変更しました!
……っひええ、いいねが、こんなに、ひええ……(おい語彙力)。本当にありがとうございます!!!
セイレムまでクリア、次はキャスギルぐだ♂書くぞ!それはそうと今回のイベント鯖ぐだでよければ小説書いて売りた((おっと誰か来たようだ。イベントたーのしー!
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全ての始まりは、ランサークー・フーリンの立香へのこの一言からだった。
「ようマスター!お前さんもこっち来いよ!」
その日は、次の大きな特異点発見までの猶予があったおかげで、簡単に種火集めをして帰ってきた、状況に似合わない平和そうな日だった。
「み、皆何やってるの……?酒盛り?」
「おうさぁ!お前らぁ!マスター来たぜ!」
そこは食堂、酒盛りにはもってこいのスペースも酒もある。集まっているメンバーは、といつもなら一人ずつ挙げていくところだったが、珍しいことにほとんどすべてのサーヴァントたちがいた。
「まあ、ま・す・た・あ・さ・ま……♡あなた様の方から来てくださいましたのね、嬉しい……」
「きっ、清姫!落ち着こうね!」
新シンさんもガブガブ飲んでるし、なんだか見たこともない高そうな杯を傾けている古代王たちに絡まれるアルトリアと玉藻の前。かと思えばおつまみまで作ってくれてるエミヤに、アステリオスにもふもふしているジャックちゃんとナーサリーもいた。
「えっと、今日は皆どうしたの?」
「ああマスター、それに関しては私から説明しよう。まあ座ったらどうだ?」
振り向くと同時にコト、と食器の音がする。そもそも俺はここに夕飯を食べるべくやってきたのを思い出した。テーブルの上にあるのは、エミヤにリクエストしていたカレーライスだった。子供っぽいでもなんでも言いたきゃ言えーい。
「え、エミヤ、ありがとう。えっと……」
「ああ、この大惨事はだね……」
大惨事、というほどの事件は起こっていないが、今の食堂の状況はというと、簡単に言えば予想通り、酒盛りだった。
「レイシフト先で町に寄ったんだろう?そこで酒を調達してきたそうでな。ついでに宝物庫やら何やらの鍵が開いて、(大酒)飲み(大)会と言うわけだ」
あまりレイシフト先の物を持ってくるのは止めたほうがいいのではなかったか。
飲んでもいないのにふらふらする気がする。食堂はすっかり酒の匂いが充満していて、毒の耐性はあっても酒は飲んだこともない俺は、不思議な感覚に新鮮さを覚えるばかりだった。
「おうマスター、お前さんも飲むかぁ?」
いつの間にか隣に来ていたランサーは、ずい、と酒を進めてくる。アルコールの匂いが肺にまわって、なんとなく苦しい。
「い、いや、俺は飲めないから、遠慮しとく」
「なんだ、うちの坊主は酒飲めねえのか」
飲めない。飲んだことないし。それに。
「俺、ウイスキーボンボンとかでも頭痛くなるんだ。たまに記憶とぶし、親にも友達にも絶対飲むなって言われてて。多分、なんかやらかすんだよ、俺」
前科があるにも関わらず、自分からいって迷惑はかけられない。俺はマスターだし、サーヴァントの皆や職員の人たち、明日のレイシフトに影響を及ぼすわけにはいかないのだ。
「ほーう……?」
が、ランサーの目は輝いていく。やめて。千里眼無いのにわかっちゃうじゃん。
「……なあマスター、ここにカクテルっつー甘くてうまい飲み物があってだな」
「お酒だね!俺知ってる!」
「おー、うちのマスターは物知りだなー!」
「飲まないからね」
「ん?」
「せっかく作ったカクテルで何を遊んでいるんだランサー……?」
明らかに楽しんでいる。うう、ランサーが酔っぱらいに……。
「おい立香!立香はどこか!」
うわーん。王様、ご勘弁を。
「は、はい、ここですが」
「我自ら与えてやろう!宝物庫のなかでも一級品よ!飲め!」
「ひぇ……」
「英雄王!マスターは──」
食堂のざわめきが増していく。こんなときに酒天童子たちが黙っているはずもなくて、酒気は恐らく最高潮に達している。
拳がぶつかりあう音と気分のよさそうな高笑い、それに辛そうに呻く声がいっぱいに響いてきて。
ああ、マズイ、頭が痛くなってきた。
「お願いみんな、ちょっと、静かに──」
そして、俺の意識は途切れる。
次に目覚めたのは、マイルームのベッドの上。ナイチンゲールの監視下のもとだった。
ただでさえ酒に弱い立香はあのとき、食堂に香る酒の匂いで、既に酔っていた。
「英雄王!マスターは酒に弱い!ザルの貴様基準でやったら、大変なことになるぞ!」
「はっ!そんなこと我が知ったものか!今宵は宴だ、まして我からの酒だぞ?飲まぬ馬鹿がどこにいる!」
立香が気を、否、理性をとばしたその瞬間から、事件は始まる。この事件の最大の間違いは、このカルデアの理性とも言えるマシュたちが、こんな時に限ってこの場にいなかったことだろうさ。
最初の被害者が、食堂全体に響き渡る動揺の声をあげる。
「まっ、マスター!?おい、ちょっと!ち、近すぎだろマスター……!?」
まず一番最初は、立香のすぐ後方、潜むようにして立っていたロビンフットだった。ついでに言えば、その隣にいたビリーと、立香の対面にいた英雄王ギルガメッシュが二次被害者だったわけだが。
「ロビン~」
「はあうんロビンフットですけどさあ!オタク何やってんの!?」
続いて顔を向けた他のサーヴァントたちがピタリと動きを止める。先ほどまでの騒ぎは何だったのかというほど、食堂は一斉に静まりかえっていた。
それもそのはず。
「へへ、ろびんだあ。ロビン~」
ロビンフットに頬を擦り寄せる、自らのマスターがいたのだから!
「マスター?頼む、いい子だから、一旦離れような、な?」
「やあだもん、ロビンにくっつくの!ロビンあったかくて、いいにおいだから、おちつくんだ~。ね、いいでしょ?……だめ?」
こてん、と首をかしげ、立香の頭がちょうどロビンフットの肩にのる。
「だ、だめだとは言わねえけど!マスター、オタクちょっと、待ちなさい!ま、っ~!?」
「ロビンフット」
耳元にその唇をよせ、ささやく。何よりも厄介だったのは、立香のその行動の全てに、嘘も偽りも誇張もなく、ただただ純粋な本心であるということだった。
「いつも、ありがとう。頼りにしてるよ、俺のロビン。戦ってるときもカッコいいし、俺の隣で笑っていてくれる。可愛い、俺の、ロビンフット……」
ふにふにと触り、ふにゃふにゃと笑う。そんな立香に骨抜きにされているサーヴァント。なんと形容すればいいのか。さしずめ、煉獄の楽園と言ったところだろうか(この場で思考が正常に動いているのは、名前を挙げればアンデルセンくらいのものだろう。そのアンデルセンにすらスタンがかかったが)。
その次に動き出したのは、意外にも円卓の騎士たちであった。古代王たちや立香ガチ勢が囲むことになるかと思いきや、立香とロビンフットを囲んだのはガウェインとランスロット、モードレッド。トリスタンに、ベディヴィエールまでもがいた。
「マスター、失礼を承知で申し上げます」
「ん~?あ、円卓のみんな!なあに?」
その声が食堂を支配する頃には、既にそそくさとロビンフットは出ていっていた。顔のない王で走り去った彼が、自室で一人悶えて()いたのは、秘密だ。
「我らもまたあなたのサーヴァント、あなたの剣だ。彼の御仁のみがあなたの寵愛を一身に受けているのを見ては、嫉妬もわくというもの」
「がぇいん」
「ぐっ、は、はいマスター、私に何か……?」
「ん!」
ん?
全員の頭に、全く同じ字が浮かんだであろう。いや、それぞれの言語で、と訂正しておく。ただし、疑問が浮かび並んだのは間違いないはずだ。
立香はガウェインに手を伸ばしている。両手を広げて、受け入れるように。
「うん、わかった!皆にも、いつも言いきれてなかったおれい、する!俺はみんなのますたーらもん!次はがうぇいんおいで~」
ん!ん!と、必死に手を差し出す立香。多少心もとない足元だったが、抱き締めろと暗に訴えてくる立香に、皆はそれどころではなかった。
それぞれに、いろんな、意味で。
「──ッ立香、失礼、します」
「うん!いらっしゃ~い」
ぎゅう、とその体いっぱいに受け止める。体格差のせいでどうしても上半身は反る形になっているが、立香に苦しそうな素振りはなく、いたって嬉しそうで、幸せそうだった。
もちろんガウェインは、立香の体の邪魔にならないよう、鎧は予め解いてある。他の騎士たちも珍しく、そして例外なく、一気に身軽になった瞬間であった。
「がうぇいんもあったかい!あ、そっか、太陽の騎士だもんね!えへへ、ぎゅ~」
「太陽と言えば余であろうが……」
「マスター、俺も……」
「私も……」
ジリジリと熱が上がっていく気がする。きっと気のせいではなく、物理的にも。
「マスター、円卓の騎士の中でもいの一番にご指名いただき、誇らしくも嬉しい限りです。光栄の至り……!これは必ずや、次なる戦いにおきましては、御前にて証明して──」
「んー、かたくーしいのは、や!」
立香は一転して両手でガウェインを押し返すと、目の前に来たその目を見つめ、言いはなったのだった。
「かたくるしーとむずかしいから、や!今はきんし!わかった?」
「かわいっ……、んんっ、わかりました、マスター。そのようにいたします」
「ん!ありがと!がうぇいんいい子いい子~」
頬を掴んでいた両手を離し、頭を撫でる。子供扱いと一瞬は思ったが、ガウェインにとっては立香に合法的に触れてもらえるとあって、すぐさま思考の外へ追いやった。
「ガウェイン、円卓の騎士。世界の中でもすっごい騎士。そんなガウェインが一緒に戦ってくれてるの、嬉しい。ありがとう」
「立香、なんともったいなきお言葉を……!ありがとうございます、私も、嬉しいです」
ぎゅう、といっそう力がこもる。こんなにも小さな子どもだったかと、なんだか不安になればなるほど、ガウェインの両腕は立香を捕らえて離そうとしなかった。
「ガウェイン、俺、頑張るからね。獅子王とか騎士王とか、ファラオみたいに俺は王様にはなれないけど、でも俺頑張るから」
「……立香」
「だから、側にいてね、ガウェイン。側で、俺の成長見ててね。やってみせるから。俺は、……今を、生きるんだ」
抱きかえされるその腕は、わずかに震えていた。さながら、戦場で剣を構える歴戦の騎士のように。
「我が剣をあなたに、立香。……その願い、その誓い、確かにこの胸に」
本当はあなたも、辛くて恐くて、そのはずなのに。それでもあなたは立ち、私たちに宣言し、笑ってくださるのですね。ああ、なれば、あなたのそんな、血にまみれるであろう、しかし真っ直ぐで強い願いのために。私が、このガウェインがあなたのお側へ。血の道を、あなたを抱え、未来のために歩きましょう。
誓いをたてるように、立香の前へひざまずく。円卓の騎士が彼の王以外の者の前にてひざまずく、など、本来ならば即座に首を落とされるというもの。だがこの場で、だれも咎める者はいなかった。
この、マスターとサーヴァントを。
「ん!ガウェインありがと!よーし次の子!」
そんな時でも、立香は笑って頭をなでてくれるわけで。
「はっ、では失礼します、立香。至福の一時をありがとうございました」
「ん!うん!じゃあね~、次はね~」
ガウェインに続けと、いつの間にか列ができている。並ぶ者たちの五人に一人くらいの間隔で、お猪口を持つ者がいるのに立香は気づけない。王たちでさえもその列に並んで(なんなら彼らは円卓の騎士に続いて並んだ。我先にと多少バチバチしたが)自分の番を待つ。
カルデア始まって以来の、と言っても過言ではないほどの、異様な風景だった。
さあ、話せばこの話しは長くなるからね。ここからはダイジェストでいこう。
まずはウズウズして待っていた、サー・ランスロット。
「らんす、ランスロット。湖の騎士。最強の、騎士。……えへへ、ぎゅー」
「とぅわ……!マスター、どうか御勘弁を……!!もう五分ほどそれを繰り返して──」
「らんす、ぎゅー、いや?」
「滅相もございません!!!」
お次は、先ほどまでの会話で不満が爆発しかけている、ファラオ、オジマンディアス。
「立香貴様不敬にも程があろう」
「うー?う、ファラオ?」
「聞いているのか立香!?」
「オジマンディアス」
「っな──」
ぎゅう。
「あったかい。オジマンディアス、優しい……。ありがと、大好き。いつも一緒に戦ってくれてありがとう」
「っこの、不敬者めが……!もうよい、特に許す!思う存分、この太陽たる余の玉体に触れることを許すぞ!」
「やったー!」
今怒らせたら絶対にマズイ、立香ガチ勢、清姫。
「ますたぁ、ますたぁさま?私にも、この清姫にもお言葉を……」
「きよひめー!おいで~」
「はい!ますたぁさま!」
「ん、いい子だね、清姫」
「あ、ますたぁ……♡はい、私、いい子で待っておりましたのよ、ますたぁ」
「ん、いい子いい子。ご褒美あげようね」
「へっ?」
「いつも痛くて大変な戦いでも、一緒に戦って頑張ってくれてありがとう、清姫。たくさんなでてあげる。……その間は」
「あ、間は……?」
「俺の側から離れるの、禁止、ね」
「はいっ、ますたぁさまぁ……♡」
なんの乙ゲーか、という声が聞こえた気もするが、次。
「ま、マスター。私にはいいから……」
「逃げちゃだぁめ!こっち来て!」
次なる被害者、母性が爆発しそうになっているエミヤ。
「エミヤ、俺、おれね」
「ん?どうしたマスター?」
「勉強、したよ。皆のこと。エミヤのことも。エミヤ、あのね、おれね」
「マスター、私は……」
「エミヤなりに、頑張れる場所を、……俺はつくれてる、かなぁ?」
静寂。それを破ったのは、どこまでも皮肉に聞こえるあの優しく低い声で。
「ふ、なんだマスター、そんなことか」
「そんなこととかいわないの!」
「ああ、いや、すまないね。……マスターのいるところが、オレの頑張る場所だよ」
「ほんと?おれ、でいいの?」
「何を当然のことを」
「おれね、不安もいっぱいなの。皆といてたのしいもいっぱいだけど、こわいのもいっぱい」
「……こわいことなんて、何もないさ。もしあったとしても、何も問題ない。私たちが、私が、側にいるから。君が私たちを気遣い、側にいてくれるようにね。……ほら、立香。何もこわくないだろう?」
「……ほんとだ。ありがと、エミヤ。……ぎゅー!」
「ぐ、ッ……!」
カルデアのママA、K.O.(ちなみにブーディカはカルデアのママBだったりする)
そんなことが続いて、もう二時間が経とうとしていた。さすがの立香も眠気が襲ってきたようで、残り一人となった英霊その人は苛立ちを隠さない。時刻はカルデアの時計で日付を跨ぎ、数名自室に戻った者を除いて、未だ多くの英霊が残っていた。
「立香、立香耐えよ。あとは我だけであろうが。まずは背筋をしゃんとせよ」
キャスター、ギルガメッシュ。その表情は確かに苛立ちが色濃かったが、頭痛を覚えたことのあるという立香を心配しているのもはっきりと感じ取れた。皆は、正直弓の方じゃなくてよかったと思うばかりであったが。
「……ん、おきる。おうさまと、おはなしするもん……。おうさま、……おうさま!?どうしたの、大丈夫!?」
「……よい、何も問題はない。続けよ」
明らかに大丈夫ではない(具体的に言うと、右手が足に食い込んで、血が出るほど力を入れている)ギルガメッシュを前にして、立香が次に取った行動は、本人からすれば当然のものだった。
「おうさま、痛い?大丈夫?……いたいのいたいの、とんでけ……」
「り、つか」
僅かな魔力を使っての、応急処置。愛のこもった優しく触れる手と流れ込む魔力。
だがねえ。問題はその譲渡方法。
「ん……」
「立香っ……!な、貴様、待て!」
傷口への直接の、口付けだった。粘膜接触と比べてどちらが効果的かも立香にはよくわからない。しかも理性がとんでいる状態で思いだしたのは、幼き日に母がしてくれた、傷口の手当てだったようで。記憶の中にもちろんキスはなかったが、そこでまさか魔術師かのように、魔力の事を思い出してしまったのが、言ってしまえば運のつきだった。
これがなければ、ナイチンゲールとマシュがあんな表情をするまでにはならなかっただろうにね。
「……あ、よかった!治った!おうさま、もう痛くない?」
「……、あ、ああ」
「よかった!痛いの、やだよ。痛いのは、辛くて恐くて、嫌だもん。ここでは、なし。ね?」
「ああ、立香。そう、そうだな。礼を言うぞ」
「いーえ!どういたしまして!お礼いうのは、俺のほうだから、いーの!」
その言葉を聞き終えると、ギルガメッシュは赤子を抱き上げるかの如く、立香をその金腕の中に抱き締めた。膝に座らせ、穏やかに頭を撫でてやる。緩く頭をもたげた立香をそっと受け入れ、背中をとんとんとたたいてやる。寝息が、静かな食堂に響いた。
「……立香、我への言葉は極端に少ないとは、不敬者が。その分、今宵我の側に侍るがいいわ。……まったく、気分よく眠りこけおって」
その声色はなんとも慈愛に満ちたもので。
「……お前一人に抜け駆けなんてさせっかよ」
それに答えた声は、殺気に満ちたものだった。
「……狗めが。『痛いのはいやだ』とは、他ならぬ立香の言葉だが?」
「おうさぁ、その通りだ。だからどうすれば穏便に済むか、若い金ぴかとは違ってアンタなら、……すぐにわかんだろ?」
「……さあて、なんのことやらなぁ」
バチバチと物理的にも火花を散らしながら、食堂は徐々にバトルフィールドへと姿を変えようとしていた。
さあて、それではこの人類史にも残されないような、密かな物語の終焉へ。
この殺気を察知したマシュとナイチンゲールが乗り込んで来るまであと。
「なぁんだよ、ボケたかてめえ」
「なに、立香から『直接』、その口付けでもって、魔力を貰えたからなあ。いたって健康、力に溢れておるわ、狗」
五。
「……あ?」
「マスターが起きてしまうでしょう!ここは私に立香を」
四。
「こればかりは、我が王と言えど譲れますまい。ああ、私は悲しい……。このようなことが起きるなどと……」
「おかあさん、眠いの?わたしたちが一緒に寝てあげる!」
三。
「みっ、皆してずるいのだわ!わた、私だって……!」
「ならば正々堂々、やりあえばいいだけの話でしょう……?」
二。
「へえ、いいね。望むところだ」
「今宵のマイルームとマスター独占権を賭けて──」
一。
「勝負ッ!」
「これは何事ですかッ!!」
「せ、先輩っ!?先輩ー!!だ、……誰ですか、先輩をこんな風にしたのは」
その場の全員に、戦慄と悪寒が走る。もはや駆け巡る。そして悟った。
ゲームオーバー、と。
これは余談であるが、立香独占権を勝ち取ったのは結果的にナイチンゲールとマシュになったので、またもやサーヴァント同士バチバチしだした。見かねたマスターが日毎のマイルーム当番表を作ったのは、カルデアとこの霊基に、しっかりと。
「記録を残しておいたよ!この天才が!!」