赤羽業がもし拒食症だったら。
昨日に引き続き、連続投稿失礼します。
かなり前から書いていた作品で、カルマ君が拒食症という設定です。
ひたすらカルマ君が可哀想です。
途中で力つきました…。
◇追記
ブックマークが80を超えていてとても驚いています。
いつもブックマーク、評価、タグ、コメントありがとうございます!
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赤羽業がもし拒食症だったら。
カルマ目線。
「俺さ、カルマがまともにごはん食べてるとこ、みたことねーや。」
昼休み。俺の友達の一人である杉野友人が、何気なく口を開いた。
「ごはん」という言葉に恐怖心を覚える。でもそれを悟られぬよう、表情にも『波長』にも出さないように冷静を装う。波長というのはなんと言えばいいのだろうか、手練れの暗殺者しか見えない人の意識の隙間がオシロスコープのように見えるもので、俺は誰にも言っていないがそれが見える。俺の他に見えるのは俺の親友の潮田渚と、掴み所のない俺等の教師でありターゲットである殺せんせー。以前茅野ちゃんのことで色々あったときに、殺せんせーは元は暗殺者で、しかもとても優秀な暗殺者だったと聞いた。それからまた色々あって今に至る。今までずっと隠してきた。波長に出さないように、ボロが出ないように。笑って、誰にもバレないようにただただ飄々と笑っていれば。
誰も俺が拒食症だということに気付かないんだから。
「あー、確かに。そーいえば、僕も見たことないや、あんまり…。」
渚が食べていたメロンパンを机の上に置いた。そして口元に手を添え、二度頷き「うん、ない。」とまた言った。
二人の瞳が俺をとらえる。間違えないように満点の回答を言わないと、杉野はともかく、渚はそうそう騙せない。
「気のせいじゃない?俺だって人間なんだからちゃんと食べてるよー。あ、でもいつも昼飯は食べてないわ。」
我ながら上出来な回答だと思う。二人はそれを聞いて、「えー、絶対お腹空くだろー。/でしょー。」と口を揃えていい、大したことではないと思ったのか、二人はまた違う話をし始めた。なんとか誤魔化せたみたいで、少し安心した。二人の波長も安定してるから俺を疑ってることもない。
「おかーさん、何処行くの?」
無駄に広い家。無駄に大きいドアや窓。無駄に広い庭。長い廊下。長い階段。俺の家は無駄に大きかった。金持ちだったから、生活に困ったことはなかった。それは小学一年生のころまでの話だったけど。
お父さんが経営していた会社が失敗して、潰れてしまい、まぁ金持ちだったのが一気に貧乏になった。ある日お母さんに手を引っ張られ小学一年生が持つにしては大きな荷物を持たされ、今まで住んでいた家を出されて何も言われず無言で無駄に大きかった家を出た。
「…ごめんね、カルマ。もうあのお家には住まないの。ちょっと小さな家だけど、我慢できる?」
そう言われ、俺はこくりと頷いた。その後お母さんは偉い偉いと俺の頭を撫でた。
着いたのはボロボロのアパート。なんだこれ、建物かと最初思った。
「ここが新しいお家よ。」
にこりと笑うお母さんの顔は笑ってても少し寂しそうだった。
その家に住むようになって1年が経った頃、中々お父さんは職が見つからなくてお母さんもアルバイトを朝早くから夜遅くまで何個も何個もしていた。
「お父さん、いい加減働いてよ。お母さんがしんどそうだよ。」
そう言ってしまったことがあった。そしたらお父さんは怒って、怒鳴って、何も悪くないお母さんも俺も殴られても、お母さんは笑っていた。「ごめんね、カルマ。お母さんは大丈夫だよ。」って、また俺の頭を撫でた。
「ただいま。」
その家に住むようになって二年経った頃、学校から帰ってきた。その日はお母さんは帰りが早いと聞いていたのでそわそわしていた。
「ただいまー。」
お母さんの声。俺は嬉しくなってドアまで走った。そしてお母さんを抱き締める。去年よりも痩せてしまったその体は幼い俺も心配した。
「お母さんは大丈夫。」
それがいつの間にかお母さんの口癖になっていた。
お父さんはまだ職が見つからなくて、お母さんのアルバイトだけではまともにごはんが食べれなくなっていた。お腹が空いて空いて堪らなかったけど、多分俺よりもお母さんのほうが空いてると思ったらまだ気が持てた。
その家に住むようになって四年経った頃、急にお母さんが家に帰らなくなった。一日、二日、一週間、一か月…。なんとか冷蔵庫にあった数少ないおかずで、飢え死にを免れていた。段々不安になって町に出た。商店街を歩いていると電気屋さんの前を通り、テレビが置かれていた。それを見れば
『35歳の女性 遺体発見。』
という見出し。そして、その報道をアナウンサーが読んでいた。嫌な予感がした。
『今日、午後2時ごろ。東京都○○町の路地裏に一部白骨化した遺体が発見されました。身元を確認したところ、△区に住む、35歳の女性、赤羽柚葉さんだと判明しました。』
お母さんの名前。お母さんが死んだ?
オカアサンガシンダ?
涙が溢れて来た道を戻った。何日も何日もごはんを食べずただただ泣いて、気絶して隣人に警察を呼ばれて保護されるまで何も食べていなかった。起きたら病院で点滴を打たれていた。
かなり回復してごはんを食べようと思ってものどに通らなくて通っても全部吐いちゃって。どんどん痩せ細っていった。
精神科医に見てもらって、拒食症だって言われた。母が死んだというショックのせいだとのこと。もうその時には俺の体はボロボロだった。当時小学5年生で166㎝あった身長に対して体重は28kg。医者に言われた。このままじゃ死んじゃうよって。でもいいよ、死んでも。だって死んだらお母さんに会えるんだから。
「君は生きたいかい?」
医者に言われた。ふるふると首を横にふる。死にたい。生きたくない。お母さんのところへ行きたいよ…!
「もうちょっと、頑張ってみよう。お母さんは望んでないと思うんだ。君がこんなに若くして死ぬことなんて。」
お母さんが望んでない?それなら意味がない。俺はお母さんが悲しむのは見たくない。だったら…
「が、んばる…」
掠れた声が出た。自分の声を聞いたのなんて何日ぶりだろう。医者も目を見開いて、そして嬉しそうに目に涙をためて何度も頷いた。「僕も頑張るね」って何度も何度も言って。
それからとても苦痛だった。拒食症を治すために、まずは離乳食のような、どろどろの雑炊みたいなものを食べる練習から始まった。最初は何度も口から吐き出したものの、一ヶ月するとなんとか飲み込めるようにまでなった。それからさらに一ヶ月すると、普通に飲み込めるようになった。
次はゼリーだった。イチゴ味の甘い甘いゼリー。これも難なくクリアした。俺の進歩に医者はまた泣いて喜んだ。俺もその姿を見るのが嬉しくて、いつの間にか自然に笑えていた。その医者にとても心を許していた。
その次はさらにレベルを上げて思い切って汁物に挑戦した。薄味の味噌汁。豆腐とわかめが入っている。まず汁を飲んだ。そして、震える手で豆腐を小さくくずし、口に含んだ。舌で転がしゆっくり飲み込んだ。その様子を医者は食い入るように見つめ、しばらくしても吐き出さない俺を見て、ほっと息を吐いた。問題はわかめだ。ゆっくりと口のなかに含み、噛む。ぐっと吐き気が来たのを堪えて、ごくりと唾と一緒に飲み込んだ。身体中から汗が吹き出て、肩で息をする。でもこれで汁物もクリアだ。ちらりと医者を見ればまた嬉しそうに笑っていた。
それから一年たって俺はみるみるうちに成長した。それでもまだ肉や魚は食べれなくておかゆとかスープとか汁物くらいしか食べれなかったけど。それでもガリガリではなくなったし、少しずつ鍛えて、かなり筋力もついた。医者も泣いて喜んで、これなら退院しても大丈夫だねと、泣きながら喜んでいた。俺は嬉しい反面なんだか寂しくて、素っ気なくなってしまったけど。
とうとう退院の日が来てしまった。
医者は号泣して、顔をぐっしゃぐしゃにして、俺をぎゅぅっと抱き締めた。久し振りに感じた人の温もりに俺は堪えていた涙が止まらなくて、わんわん二人で泣いた。彼には本当に感謝してる。
「医者、ありがとね。」
「最後まで先生って呼んでくれないんだね。」
ふふふと笑いながら嬉しそうに言う医者の顔は目が腫れている。そう言えば、俺は一度もこの人を先生と呼んだことが無かった。お世話になったのに失礼だなって思って、俺は笑顔で言った。
「先生、大好きだよ」
彼は目を見開いて、また泣いていた。
「僕もだよ。」
その言葉を聞いて俺は病院を出た。
家へ帰ると、父が座りながら寝ていた。くまが酷い。それに痩せ干そって、目の下に涙のあともあった。泣いていたのだろうか、なんだか久し振りだな。と思ってじいっと見つめていると彼は目を開け、俺を見るなり彼は驚いた顔で俺を見た。
「今まで何処に行ってたんだ…。」
絞り出したような声だ。
「病院…」
掠れた声で答える。
「そうか。そうか。。無事だったのか、よかった。よかった。。」
父は泣いていた。
俺もつられて泣いた。
よく泣く日だとか思いながら。
父の話を聞けば、ようやく仕事が見つかり、家に戻れば誰もいなく、揚げ句のはてには妻は死んでいて、もう生きる希望もなくしていたと。自殺を考えた時に俺が帰ってきたと。生きた心地がしなかった、今まで悪かったと、謝られた。また泣いた。涙が止まらなかった。
それから中学に入学した。その姿を見せたくて、医者に会いに行った。
父と二人で、病院に行き、ナースステーションで先生の名前を言い、用件を伝える。すると看護師の一人がとても気間づそうにし、そして言った。
「彼なら二ヵ月前に…」
ベンチの上に腰かける俺たちの表情は暗かった。隣の父は重苦しい表情で地面を睨み付けている。あの人が、死んだなんて…、この世にいないなんて。現実を受け止めれなかった。
彼は二か月前にガンでなくなったらしい。それも俺がずっと治療中の時から患っていたのこと。なんで、なんで俺に教えてくれなかったんだ。なんで、なんで…。
帰ってもなにも食べれなくて、せっかく治療したのに全て水の泡だった。また拒食症をぶり返してしまった。
そして今に至る。なんとかバレないように必死に隠している。
だってこんなんバレたらみんな何とかしようとする。あの人みたいに。。。
だから黙っておこう。
大丈夫、俺の演技は完璧なんだから。
今まで乗り越えてきたんだから。
だから今日も笑顔で。
力尽きた。。。